仲間
仲間ってすごいね。
こんな科白を恥ずかしがりながらも口に出せるのは、それだけそんな大切で簡単なことを再確認できたからなんだな。
ぼくは結構色んな人と出会ってきたんだし、本当に寂しかったとき、つまり一人ぼっちになって、もとい、一人ぼっちだって自覚したときなんて滅多になかったんだけど、反面仲間ってのが何なのかもよくわかっていなかったんだ。
仲間ってのは、ずっと一緒にいる人たち?
仲間ってのは、自分のことをいっぱい心配してくれる人たち?
仲間ってのは・・・、色んな仲間と出会ったけど、本当の意味での仲間ってやつは、やっぱり結構すごいんだなって実感しているんだよ。
だからぼくは、結構自分なりに士気高揚なんかしちゃって、重い荷物なんか屁でもないってちょっと笑いながら霧の山道を登ったんだ。
「あれか?」
だもんだから、いきなり立ち止まったジェラールの背中に勢いよくぶつかってしまったんだよ。
「仲間を連れてきたか・・・」
なんていったのは、ひどく立派なひげを蓄えた兵士だった。
クーベルタンは兵士を認めると、ぼくらには何にも言わずに一人胡坐を掻いて、持ってきた奇妙な袋の中をまさぐり始めた。
「なんだ、ただのつり橋じゃないか・・・・!」
ぼくはそんなことを言った後、自分の目を疑ってみた。
目じりをごしごし磨いて、それに向かって首を伸ばした。
目を細めたりして。
橋なんかを見ていたんじゃないんだ。
ぼくが見ていたのは、その先にあるボンヤリとした、それでいて懐かしいものだった。
「光だ!」
ぼくはそういって駆け出した。
でもすぐにクーベルタンの腕に足を掛けてしまったんだ。
光は厚い霧に覆われていたんだけれど、きっとぼくが長い間捜し求めていたものなんだって思えるくらいのものだったんだ。
「みんな、これをつけてくれ」
そういったクーベルタンから差し出されたのは、白と黒の紐だった。
「なんに使う?」
ユダは文句も言わずそれを手に取りながら、つり橋の方と兵士の方をしきりに伺っていた。
つり橋はやはり崖の間に吊るされていた。
崖から吹き上げる風が、霧をある程度晴らしているようだった。
つり橋は麻縄製で、下には木製の板が敷かれていた。
「それはくじだ」
兵士はそういった。
フルフェイスの兜から、髭だけがわさわさはみ出していた。
鎧はぼろぼろで、特に篭手や胴を結ぶ紐がひどく痛んでいた。
それはつり橋も一緒だった。
ここは常に霧が立ち込めているのか、そうでなくても高湿度を保っているように思えた。
「くじ?」
ジェラールはクーベルタンにそう訊ねたが、何の答えも返って来なかった。
「どっちがあたりだ?」
ユダが笑っているのか怒っているのかわからないしかめっ面で兵士に尋ねた。
手には真っ黒の紐があった。
それはぼくの手のひらにもあって、早速それを腕に結ぼうとして、うまく結べず躍起になっていた。
「簡単なことだ、これはお遊びだ」
兵士は釣り橋の入り口を通せんぼしていたが、クーベルタンが彼の前に立つと、案外あっさりとそこを退いた。
「気休めってことだよ」
兵士は笑ったが、ユダが、
「変装趣味が」
なんて意味不明なことをいったもんだから、彼は黙って、ぼく達の動向なんかを見守るようになった。
ツェッペリンはわざわざ白黒ペアを選んで、白いほうをラバに渡した。
それでツェッペリンは、何を思ったのか、ラバに自分の持っていた彼の荷物を渡して、ひざまずき、彼の手をとり、甲へ口付けなんかをして見せた。




