風の精霊シルフとエルフの姫(後編)
「このエルフの里の近くにいると言われている女神ファレス様に会いに行くのはどうかな?」
「え、女神ファレス様に会えるの?」
エアルの提案に驚いて、私は思わず聞き返してしまった。
ファレス様は、この世界を創ったと女神の一人と言われている。
私はあまり神々には関心がなかったが、確か両親も女神ファレス様を信仰していたはず。
「普通は会うことができないんだけどね。女神の塔の試験を通過すると、ファレス様に会うことができるんだ」
「そんな塔があるのね」
私の故郷では女神ファレス様を信仰している者が多いため、多くの研究がなされているが、そんな話は聞いたことがなかった。
「うん。グランデルの話を聞く限り、ブラグラが変わってしまった原因は、おそらく魔族の魔術によるもの。だから、ファレス様から知恵をもらえれば、解決策も見つかると思う」
「やはり、ブラグラが豹変したのは魔族の魔術が原因だったんだな。確かに、ファレス様の知恵があれば、弟を救えるかもしれない」
絶望して暗くなっていたグランデルの目に、少し希望の光が宿った。
「それなら、失った荷物の補充が終わり次第、女神の塔に行きましょうか」
「そうだな」
「なっ、お前達まで行く気か? これは俺と弟の問題だ。お前達まで危険を冒す必要はない」
ルランドと私が行く気満々になっていると、グランデルが慌てて私達を制止した。
「え、どうしてですか? 私達は仲間ですよね」
「言われるまで、行くことに何の疑いもなかったのだが」
「お、お前ら……」
予想していなかった返答だったのか、グランデルが戸惑っている。
「乗りかかった船じゃ。ワシも行くぞ」
「この辺りの土地は私が一番詳しいです。私にも行かせてください」
「ワグリナとエスカーネまで……。この恩は一生忘れない、ありがとう」
グランデルはそう言って頭を下げた。
「グ、グランデル様!? どうか頭を下げないでください。私はグランデル様のお力に ななりたいだけですので」
「エスカーネ?」
「あ、えーと、間違えました。困っている時はお互い様ですよ、グランデル様」
ふふ、エスカーネは感情を隠すのが苦手なのね。
気持ちが強過ぎて、表に出てしまっている。
エスカーネの純粋な想いに、私は思わず微笑した。
ダークエルフとエルフという相容れない立場での恋模様なんて、まるで物語の本でも読んでいるようだ。
グランデルはエスカーネの気持ちに気がついていないみたいだけど。
いつか、その想いが実を結びますように。
私は、心の中でそう願った。
「この借りは必ず返させてもらう。だから、今回はみんなの力を貸してほしい」
「もちろんです!」
私と同じように、みんなも声を出して同意した。
次回、『女神ファレス』




