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第7話 究極の選択肢と秘められた悩み!? 10メートルの乙女心

「滋賀県警、および近畿方面隊……全滅だと……!?」

琵琶湖での「入浴&熱風ドライヤー」という前代未聞の被害報告を受け、陸上自衛隊幕僚長は通信機を握りしめたまま膝から崩れ落ちた。


 一方、濡れた髪(排熱ダクト)を綺麗に乾かして大満足のハルカ(全高10メートル、重量2000トン)は、伸一を肩に乗せたまま、ドスン、ドスンと優雅な足取りで琵琶湖畔を散歩していた。


 そこへ、生き残った自衛隊の精鋭部隊――10式戦車隊と、上空のAH-64Dアパッチ攻撃ヘリ部隊が、最後の包囲網を展開して退路を塞ぐ。


「諦めろ怪獣! これ以上の暴走は許さ——」


 そんな隊長の決死の警告を遮り、ハルカは「あ、見て見て伸一くん!」と目を輝かせて二つの部隊を指差した。


「ねえ伸一くん、どっちがいいと思う?」


「……は? どっちって何が?」

伸一の背中に嫌な汗が吹き出す。

女子の「どれを選んでも詰む、正解の存在しない罠の選択肢」だ。


「あっちのヘリコプターと、こっちの車(ジープ)! どっちがカワイイと思う?」


「(き、来たぁぁぁぁ!!)え……えっと、車……かな? 丸っこくて……」


「え〜? でもヘリコプターの方がトンボさんみたいで可愛くない?」


【ドカッ!!】

ハルカが「ヘリの方がカワイイ」と言いながら、足元のジープ隊を嫌そうにフンッと足先で蹴り飛ばした。

吹っ飛んだジープ隊が10式戦車隊に激突し、陸上部隊がまとめてペシャンコに潰れる。


「じゃあ最初から聞くなよ!! あと可愛さで自衛隊の車両を蹴り飛ばすな!!」

伸一の魂のツッコミが響き渡る中、自衛隊の地上部隊は全滅。残されたヘリ部隊が「ひ、ひえぇぇ……!」と怯えて後退しかけた、その時だった。


 ハルカが突然、その場にぺたんと女の子座り込み、巨大な頬をポッと赤く染めてモジモジし始めたのだ。


「あ、あのね……伸一くん……。実は私……最近ずっと悩みがあって……」


「な、なんだよ急にモジモジしだして……。また新しいメイクの悩みか?」


 ハルカは両手の指先をつんつん(※重機が衝突するような金属音)させながら、蚊の鳴くような声で打ち明けた。


「あのね……実は私……ここ数日……『出』が悪くて……(便秘)」


「ロボットの便秘って何だよ!? オイルフィルター詰まってんのか!?」


「やだぁ! 乙女に向かって『詰まり』なんて言わないでよ! お腹(メインエンジン)が張って重いんだもん……!」


 10メートルの超巨大ロボット少女が、顔を真っ赤にして「出ないの……」と悶絶している。


 そこへ、ヤケクソになった上空のアパッチヘリ部隊が、全弾叩き込む勢いで空対地ミサイルをハルカの背中に発射した。


【ドカァァァァンッ!!!】

背中に強烈な砲撃の衝撃を受けた瞬間、ハルカの目がカッと見開かれた。


「あっ……! あ、あ、あ……」


【プシューーーーーーーーーーーッ!!!!!】


【ふわぁ〜♡】※演出上の都合により、お花畑の演出をお楽しみください。


 直後──、ハルカの下部排気口(メインスラスターノズル)から、溜まりに溜まっていた数千度の高圧不純排気が一気に噴出!

猛烈な爆風が自衛隊の包囲網を吹っ飛ばしし――琵琶湖周辺に地獄の惨劇が訪れた。


【ブワッ…………!!!】

長期間スラスター内で焦げ付いていた焦熱重油と高密度の不純排気、そしてハルカの『乙女の溜め込みストレス』が凝縮された、目と鼻を刺すような凶悪な悪臭スチームが琵琶湖畔一帯を埋め尽くしたのだ。


「く、臭い……! 生臭い重油と激辛硫化水素を足して100倍濃縮したような悪臭だーーーっ!!」

「防毒マスクを装着……だめだ、マスクを貫通してくる臭気ガスだーーーっ!!」

「ぐはっ……!? 目が、目がぁぁぁぁっ!?」

「ママ〜!!」

「パパにも殴られたことないのに〜!」

「いや、殴られては無いだろ……」


 包囲していたヘリ部隊はパイロットたちが悪臭で意識を失いかけ、次々とバイザーを押さえて撃墜寸前。


 琵琶湖畔の自衛隊隊員たちは涙と鼻水を流してその場に転がり回る。


 伸一もハルカの肩の上で、服の襟を鼻に押し当てながら叫んだ。


「お前……! 乙女とか言う前に環境破壊レベルの臭害出してるぞーーーっ!! 鼻がもげる!!」


「や、やだぁぁぁ! 見ないで! 匂わないでぇぇぇっ!!」

顔を真っ赤にして恥ずかしがるハルカだったが、排気孔がすっかり通った本人は至極晴れやかな表情だ。


「……ハァ、ハァ……でも、す、すっきりしたぁぁぁ……っ!」

うっとりと頬を緩め、晴れ晴れとした笑顔を浮かべるハルカ。


 一方、悪臭の爆風の真っ只中で防毒マスクを抱えて泣き叫んでいたヘリ部隊の隊長は、白目をむいて通信機に叫んだ。


『総監……だめです……我が隊の全力砲撃が……怪獣の便秘解消のツボに入り……周辺海域がバイオハザード状態です……!』


『バカな……国家の誇りをかけた攻撃が、乙女の排泄と激臭スチームのトリガーにされたというのか……!?』


 自衛隊、そして内閣府はついに悟った。

この10メートル・2000トンの乙女を力で押さえつけることは不可能であり、下手に刺激すればその『生理現象』によって地球環境が破壊されるということを。


 数時間後――防衛省および政府官邸にて、緊急閣議決定が下された。


『本日より、ヒロイン(ハルカ)の全行動領域を【ハルカ特別保護区】に制定する。自衛隊および警察は、彼女の『日常のワガママ』と『生理現象』を国家最優先警戒事項として生温かく見守ること……!』


 こうして、自衛隊の敗北と降伏によって、ハルカと伸一の平和(?)な日常が守られたのであった。

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