第6話 乙女のメイクは3時間!? 琵琶湖は巨大女子の洗面台
「第11ヘリ隊に続き、冷却照射車も大破……!? バカな、我が隊の最新兵器が前髪と乾燥肌の理由だけで撃沈されただと……!」
爆破された冷却器から上空へ舞い上がり、校庭にキラキラと降り注ぐダイヤモンドダスト。
その美しさにうっとりしていたハルカ(全高10メートル、重量2000トン)だったが、ふと自分の腕(超合金プレート)を見つめると、ガビーンと顔を青ざめさせた。
「あ……やだ! 兵隊さんたちと遊んでる(自衛隊と戦ってる)間に、メイクが取れちゃってるー!」
「そっちかよ!! ていうかロボットがメイクすなーーーっ!!」
校舎の屋上から叫ぶ伸一のツッコミを無視し、ハルカはどこからか取り出した建築塗装用の巨大ペンキローラーを握りしめると、校舎の窓ガラスを鏡代わりにチークを塗りたくり始めた。
「ちょっと待っててね伸一くん! チークのピンクが落ちちゃったから塗り直すの! 女子の身支度を急かさないでよね!」
「お前の肌はチタン合金だろ! ていうかそれホームセンターのペンキだろ!!」
さらに、自衛隊との激闘の熱によって内部冷却水が限界を突破し、全身の関節からポススススッ……!と猛烈な排熱蒸気が吹き出す。
「あ〜……身体が熱いし、体臭(ペンキの匂い)と汗(排熱)でべたべたする……。伸一くん、ちょっと一緒にお風呂いこ!」
「は!? お前が入れるお風呂なんて——うわああああっ!?」
ハルカは屋上にいた伸一を巨大な手でひょいと摘み上げると、自分の肩(※特注の安全グリップ付き)に乗せた。
「すぐそこの大きいお風呂にするから! しゅっぱーつ!」
【ドゴォォォォォンッ!!!】
ハルカの超合金の脚力が校庭の地面を爆砕。10メートルの巨体が音速を超えて大空へと跳び上がった。
指揮車でその光景を目撃した警視総監は、持っていたメガホンを落として泡を吹いた。
「ひ、西方へ向かって超高速飛行中……!? 行き先は……滋賀県・琵琶湖か!! おい、今すぐ琵琶湖付近の管轄部隊――滋賀県警および陸上自衛隊近畿方面隊に至急打電! 超巨大ヒロインが『入浴目的』で侵入する! 至急、迎撃・警戒態勢をとれぇぇぇ!!」
無線越しに警察と自衛隊の怒号が飛び交う中、琵琶湖上空へ一瞬で到達したハルカは、伸一を湖畔の安全な草むらにそっと降ろした。
「きゃ〜っ! お風呂お風呂〜っ!」
【ザッパーーーーーーン!!!】
ハルカが琵琶湖に豪快にダイブした瞬間、日本最大の湖から巨大な津波が発生。対岸の自衛隊監視拠点に怒涛の水しぶきが襲いかかる。
「あ〜冷たくて気持ちいい〜っ!」
琵琶湖の水面を鏡代わりにして顔(装甲)の映り込みをチェックし、「あ〜すっきりしたぁ!」と湖から上がってきたハルカ。
だが、全身の超合金プレートはビショ濡れだ。
そこへ、警視総監の悲鳴のような要請を受けて駆けつけた現地部隊の最新兵器――超高熱熱風照射車(アフターバーナー部隊)がヤケクソで迫る!
「全車、怪獣を囲め! 水で冷却系統が乱れている隙に、数千度の超高熱風で内部回路を焼き切れぇぇぇ!!」
【ゴオオオオオオオッ!!】
ハルカに向かって放たれる、鉄をも溶かす超極熱の風。
だが、ハルカは嫌がるどころか、気持ち良さそうに目を細めて頭部排熱ダクト(髪)をなびかせた。
「あ〜、うれしい! ちょうどいいドライヤー! 滋賀の兵隊さん気利く〜!」
「ドライヤー扱いだと……!? 我が隊の最終兵器が……!」
濡れた頭部を熱風で乾かしたハルカは、湖面に映る自分の髪型をチェックすると、うっとりと自衛隊の隊長に向かって両手を合わせた。
「ねえねえ兵隊さん! ついでで良いんだけど、ヘアアイロン(高圧電流で超巨大な)とか持ってない? 前髪の毛先をちょっと内巻きにしたいんだけど!」
【ズコーーーーーッ!!!】
現場の自衛隊員、緊急打電を聞いていた警視総監、そして湖畔で見守っていた伸一、全員が綺麗にズッコケてひっくり返った。
「持ってるわけねぇだろ!! 自衛隊は美容室じゃねえんだよ!!」
伸一の絶叫が、水蒸気立ち込める琵琶湖の空に虚しくこだましたのだった。




