第21話 侵略者は品川ナンバー!? 10mヒロイン無傷の余裕と30日間のタイムリミット!
沖縄旅行から戻り、いつもの平和な日常に帰ってきたはずの関東上空。
その夕空を割って現れた漆黒の巨大金属球体から、無数の光線兵器が地表へ展開され……、無機質で重厚な電子音声が、首都の空を揺らした。
『――ターゲット・ユニット、排除モードに移行。……「プロトタイプ・ゼロ」の消去を開始』
「伸一くん、アリスちゃん、危ない……っ!」
直前までほんわかしていたハルカの目が、鋭く見開かれる。
10メートル・2000トンの巨体が思考より早く動き、両腕を交差させて屋上の2人をかばうように全攻撃を背中で受け止めた。
【―――ゴォォォォォォォォンッ!!!!!!】
地響きとともに焦熱の光線が襲いかかる。
ハルカの巨大な影の中で衝撃に耐えていた伸一は、光が収まったあとの光景に息をのんだ。
「ハルカ……っ! 大丈夫か!?」
煙が晴れたそこには――直撃を浴びたはずのハルカが、擦り傷一つない完全無傷のままで、ポカンと立っていた。
「うん? ……あ、今なんか背中にハエが止まった?」
「ハエレベルのダメージかよッ!! どんな頑丈さしてんだお前!!」
安堵と脱力で膝をつく伸一。
ハルカは何事もなかったかのようにニコニコしながら、自分の10メートルの体をさすっている。
胸を撫でおろした伸一が空を見上げた、その時――。
【パカッ!】
巨大な金属球体の頂点にあるハッチが開き、中からギシギシと音を立てて何かが押し出されてきた。
「……ん? なんだあの重厚な質感の隙間から見えてるベニヤ板とガムテープは……って、これ中身スカスカのハリボテじゃねーかッ!! 外側だけ球体っぽく見せてるハリボテ舞台装置かよ!!」
ハリボテの隙間から滑り出てきたのは、バイキン宇宙人の乗るメカのような、どこか間抜けた四角い超小型宇宙船風自動車『テトラ型』。
だが、そのツヤツヤしたボディには、スタイリッシュなアメリカンロゴがバチッと刻まれていた。
伸一がさらに目を凝らすと、宇宙船(?)の側面には英語と手書きの日本語が併記されていた。
『SpaceMix Inc. USA / わナンバー / 品川宇宙レンタカー・東京本店』
「スペースミックス社製テトラ(わナンバー)じゃねえかッ!! ……なんで宇宙人がアメリカの宇宙企業製を品川で借りてんだよ!!」
伸一の絶叫が響く中、操縦席を覆う透明なドームがパカッと開き、中に乗っていた宇宙人が姿を現す。
それは巨大なタコに触角を生やしたような、絵に描いたほどショボい、体長30センチほどの青い異星人だった。
宇宙人は首から「地球侵略担当:スカウト隊長」という名札を下げ、マイクを握りしめて甲高い声で威張り散らす。
『フハハハ! 恐れおののくが良いノラ! 我ら銀河帝国スカウト隊の圧倒的科学力――ぶはっ!? ゲホゲホッノラ!』
マイクに息を吹き込みすぎて盛大にむせる宇宙人。
「語尾にノラってつけんな!! 威厳ゼロだなオイ!!」
『うるさいノラ! 我一人地球に放りだされたから、アメリカの有名メーカー・スペースミックス社製の高級テトラ機を、品川本店で「事故歴あり・格安ニコニコパック」として借りてきたノラ! 輸入レンタカーは保険料が高いノラ!』
「無駄な見栄はって輸入車借りてんじゃねーよ!!」
『えーい、こうなったらオプションの超兵器ボタンを押して一気に片付けるノラ~! ……って、あれ? どれが発射ボタンだノラ?』
あわてた宇宙人がショボい操作パネルの上で短足をジタバタさせ、適当に赤と緑のボタンを連打した。
【ピコーン! 警告:銀河系破壊級プラズマキャノン『ギガ・デス・バスター』起動】
【ガコンガコンガコンッ!!】
テトラ型の機体から超巨大な大砲が展開。銃口が怪しい紫色の光を放ちながら、ハルカを正確にロックオンする。
『――エネルギーチャージシークエンス開始。発射まで……あと2592000秒!』
『あ、あれ!? 待つノラ!? チャージが長すぎるノラ! 英語のマニュアルが読めなくて最長チャージモードにしちゃったノラ! レンタカーの返却期限に間に合わないノラ~!!』
パネルの前で頭を抱えてパニックになるショボい宇宙人。
「30日(一ヶ月)かよ!! 長すぎるだろッ!! 緊張感が台無しなんだよ!!」
気絶したアリスを抱えながら、遠い目をしてツッコむ伸一。
こうして、地球の危機(とショボい宇宙人の財布の危機)は、アメリカ製レンタカー……レンタル宇宙船型自動車の扱いに焦るショボい宇宙人の操作ミスによって、一ヶ月後まで続く超ロングカウントダウンへと突入したのだった――!




