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第19話 救出のアリス、そして目覚めるハルカ愛

「え……アリス……!? おい、大丈夫かアリスーっ!?」


 瓦礫の隙間から、泥まみれになったアリスの小さな手が力なく覗いている。


 ハルカは慌てて巨大な膝をつき、瓦礫の山へと手を伸ばした――!


「あ, アリスちゃん――っ!?」

瓦礫をどかし、 隙間から掘り出されたアリスは, 泥と油にまみれ, 白目をむいてピクピクと足を震えていた。 


「くっ……バカな……。私の精密AI計算では……この工事資材の崩落角は……完璧に回避できるはず……」


「お前の言い分は後でちゃんと聞いてやる……だから今は喋るな!」


 しかし、そんな伸一の静止も虚しく, 天井から残りの巨大なコンクリート塊がガラガラとアリスの頭上へ崩れ落ちてくる!


「あぶないっ!」

【ドズゥゥゥン!!】


 ハルカがとっさに覆いかぶさり, その10メートルの背中で巨大なコンクリート塊を完全にブロックした。


 衝撃でハルカの口から「うぐっ……」と小さな苦悶の声が漏れる。


「ハ, ハルカ……!? なぜだ……! 私と貴様は, 伸一を巡るライバル……いや、貴様にとって私は敗北した敵のはず……!」


 しかし……泥だらけのアリスを見下ろし、 ハルカは痛みを耐えながら、どこまでも優しく暖かな笑顔を浮かべた。


「敵なんて思ってないよ……! だってアリスちゃん、私と一緒に伸一くんのこと大すきな、大事なお友達だもん……っ!」


「あ……っ……」

10mの巨体から放たれる圧倒的な慈愛。


 自分を犠牲にしてまで小さな自分を護り抜く、神々しいまでの武力と包容力――!


 その瞬間、アリスの脳内で「ドッキュン!!」と全宇宙を揺るがすような雷が落ちた。


(な、なんという包容力……! なんという神々しさ……! 伸一ごときを巡って争っていた自分が恥ずかしい……! このお方こそ……このお方こそが、私の探していた真の『絶対的司令官(女神)』だ……っ!!)


 アリスの目から伸一への執着が一瞬で消え去り、ハルカへの熱狂的な崇拝へと書き換わった!


「は, ハルカ様ぁぁぁぁ……っ!!」

ハルカの巨大な指に抱きつき、感涙を流しながら頬をスリスリとすり寄せるアリス。


 さらにハルカは、泥まみれになったアリスの顔や服の汚れを優しく拭うため、胸元から特大のハンカチを取り出し、そっとアリスに手渡した。

「ほら、アリスちゃん。これ使って綺麗にしてね♡」


「――はっ……!? こ, これは……ハルカ様の聖別なる汗と涙と微粒子が付着した……極上の聖遺物(ハンカチ)……!!」


「あ、アリスちゃん……あのね? 『様』とか敬語とかじゃなくて、普通に『ハルカ』って呼んで、もっと仲良くお話ししてほしいな♡」

10メートルのハルカが膝をつき、うるうるとした大きな瞳で優しく微笑みかける。


「ひ……っ! ハ、ハルカ……!?……は、はうあぁぁぁぁッ……!!」


 あまりの破壊力にアリスは顔を真っ赤にして卒倒しかけ、そのままハルカの指にすがりついた。


「……は?? アリスお前、さっきまで俺を巡って争ってたよな……? なんで急にハルカの信者になってんだよ!?」


「黙れ下等生物(伸一)!!」

アリスは一瞬で冷酷な顔になり伸一を睨みつけた。


「お前みたいな凡夫がハルカの隣に立つなんて100年早い!ハルカの爪の垢でも煎じて100杯飲んで出直してこい、このカス!」


「お前が言うなーッ!! 変わり身早すぎて節操なさすぎるだろ!!」


 こうしてアリスは「ハルカ教の狂信者」へと劇的な(節操のない)覚醒を遂げたのだった。


 ――そして、いつもの学園生活。


「このハルカ様から賜った巨大ハンカチ(聖遺物)……! 我が防衛省の技術を結集してゲノム解析を行い、クローンハルカを100体量産する!さっそく発注したぞ。クローンハルカが届いたあかつきには……あんなことやそしてこんなことを、ぐへへへッ!!」


「さらっと恐ろしい犯罪を予告すんじゃねぇよ!! ……それに……」


 伸一は少し間を開けると、可哀想なものを哀れむような目で続けた。


「あのさ……発注した後に言うのもあれだが……そもそもハルカはロボットだからDNA採取、できなくね? ホントに大丈夫なのか?」


「……はっ!?」

防衛省の極秘予算でクローン量産を発注した後に自分の致命的なミスに気づき、盛大に白目をむいて硬直するアリス。


「組織を巻き込んで、間抜けに自爆してんじゃねぇよ!!」


 伸一の容赦ないツッコミが, 今日も平和な学校の空に響き渡るのだった――。

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