第17話 ハルカVSアリス! 巨大花嫁力八番勝負!
「やめろー! ホテルが沈下するー!?」
沖縄の青い海、白い砂浜。
本来なら甘酸っぱいリゾート風景が広がるはずのビーチは今──。
昨夜の「プロポーズ音声捏造事件」に激怒したハルカの地団駄から、局地的大地震と地盤沈下に見舞われていた!
「……伸一くん……うそつき……浮気者……!」
「ち、違うんだハルカ! あれはアリスが科学の力で俺の声を合成したフェイクニュースで――!」
「言い訳は無用だ、伸一!」
そこへ、ガシャンガシャンと重厚な金属音を響かせて現れたのは、『シルフィード』に身を包んだアリスだった。
「アリス!? お前、学年全員の前で何て音声を流してくれたんだよ!」
「フン、事実を少しだけ『未来予知』として編集したに過ぎん!……そしてハルカ! その巨大すぎるボディーといい、貴様が伸一の妻に相応しくないことは明白だ!……どちらが伸一の妻に相応しいか、私と花嫁力対決で勝負しろ!」
「ええ、いいよ!私負けないもん! 伸一くんのお嫁さんになるのは私だもん!」
ハルカは仁王立ちで受けて立つ!
巻き込まれた伸一の悲鳴を余所に、地獄の勝負が幕を開けた!
一番勝負:料理対決
10メートルのハルカは、どこからともなく取り出した超巨大フライパンを器用に扱い、豪快かつ繊細な手つきで特大オムライスを作り上げた。仕上げにケチャップで描かれたのは『LOVE♥しんいち』の文字。
「伸一くん、召し上がれ♡」
「おお……! サイズが10人前どころか100人前くらいあって大きすぎるのはかなり気になるが……ふわっふわでめちゃくちゃ美味い……!」
一方、シルフィードに載ったアリスは――。
「ふっ、料理など普段しないが……ミリメートル単位の精密制御なら我がシルフィードの得意分野だ!」
シルフィードの超精密マニピュレータがシャカシャカシャカッと凄まじい速度で動き、ドヤ顔のアリスが差し出してきたのは――米粒大の極小オムライス(親指の爪サイズ)だった。
「……これ、プラモデルのミニチュア!? 小さすぎて虫眼鏡でしか見えねぇし、食べた気一切しねぇよ!!」
二番勝負:裁縫対決
「ここからはルール変更だ! アリス、シルフィードの使用は禁止! 手芸は生身で行うこと、いいな?」
「くっ……望むところだ! 私の指先のテクニックを見せてやる!」
ハルカは丸太のような太い指先を繊細に動かし、伸一サイズのエプロンを完璧に縫い上げた。胸元には『SHINICHI♥』の可愛いフリル刺繍まで施されている。
「伸一くん専用だよ♡」
「うわ、なんか照れるけど……10mの指でどうやってこの細かい刺繍縫ったんだハルカ!?」
一方、パワードスーツを脱いで素手で挑むアリスは――。
「私に任せろ、軍仕様の頑丈な迷彩柄エプロンを作ってやる……!」
しかし……。
気合十分で針を持った瞬間、「痛っ!……くっ……痛っ!?」と自分の指を何度も刺して悲鳴を上げた。
そして──最終的に真っ白な布が自身の血で真っ赤に染まった血染めのみるからに不気味でおぞましい恐怖の迷走……迷彩エプロンを差し出してきた。
「ぎゃぁぁぁぁ! 血染めの迷彩エプロン!? グロテスク過ぎて怖いんデスけど……!?」
三番勝負:愛の言葉対決
ハルカは10メートルの巨体をかがめ、頬を染めながら即座に言った。
「伸一くん、大すき!」
「うわぁぁぁぁ!(10mの至近距離で直球ストレート投げられると眩しすぎて直視できねぇ!)」
一方、アリスは──。
顔を茹でダコのように真っ赤にし、モジモジと指をすり合わせながら伏し目がちに――。
「そ、そんな恥ずかしいこと言えるわけないだろう! ……だ、だが勝負なんだろ!?
……す、す……す……好き……かも……」
「お前が一番顔真っ赤になって照れてんじゃねぇか!! ギャップの破壊力が高すぎてこっちの心臓が保たねぇよ!」
四番勝負:家計簿対決
ハルカは巨大なスケッチブックを開き、完璧な収支バランス表を提示した。
「伸一くんのお小遣い管理も、将来の貯金もバッチリだよ!」
「家計簿まで完璧かよ! 本当にお嫁さんとして隙がないな!?」
一方、アリスは、自信満々に胸を張り――。
「家庭の収支か……任せろ、真剣に計算してきたぞ! これが私の理想の家計簿だ!」
胸を張ってアリスが提出したスケッチブックには、『食費:12億円』『光熱費(航空燃料代):45億円』『弾薬・維持費:800億円』と力強い文字で書かれていた。
「……なあアリス。お前、家庭の家計簿を軍の予算調達と勘違いしてないか!? 一般家庭で毎月千億円単位の国家予算動かせるわけねぇだろ!」
五番勝負:掃除対決
ハルカは10mの長いリーチを活かし、ビーチのゴミを一瞬で拾い集めて砂浜をピカピカに磨き上げた。
「きれいになったよ〜!」
一方、アリスは――。
「ふっ……掃除か。私に任せるがいい!」
アリスは目つきを鋭く変えると、近くにあった巨大な竹箒を銃剣のように構えてダッシュ! 勢いよく振り下ろし、伸一の股間にダイレクトヒット!
「ぎゃあああああ!(悶絶沈没)
なんで俺を攻撃すんだよ!……ていうかお前、意味を勘違いして、俺を物理的に掃除しようとしただろ!!」
六番勝負:子守り対決
(※近所の観光客が連れていた赤ちゃんを預かっての挑戦)
ハルカは巨大な手のひらにそっと赤ちゃんを乗せ、優しくあやし始めた。
「よしよし〜、高い高〜い♡」
「キャッキャッ!」
「10mの巨大手すべり台かよ! スリル満点だけど赤ちゃん大喜びだな!?」
一方、アリスは腕組みをして――。
「ふっ、私に任せろ。防衛省特務直伝の『絶対に寝落ちする子守唄』を聞かせてやる」
アリスが真剣な顔で、静かに低音ボイスで歌い始めた。
「ね〜むれ〜♪ ね〜むれ〜♪」
すると、さっきまで泣いていた赤ちゃんがピタリと泣き止んだ。
……が、その赤ちゃんは目を開けたまま白目を剥き、右手で天を、左手で地を指さしながらぶつぶつと謎のお経を呟き始めた。
完全にアレだ。『天上天下唯我独尊』のポーズ……。
「こ、怖っ!! 寝かしつけるどころか怪しい子守唄で洗脳してんだろ!? 赤ん坊が釈迦みたいになっちゃってんじゃねぇか!!」
七番勝負:歌唱対決
ハルカは可憐な歌声で甘いラブソングを熱唱。
「ずっと一緒だよ〜♪」
「天使かよ……透き通るような歌声で心が洗われる……」
一方、アリスは──。
マイクを両手で固く握り締め、朗々と特大の音量で歌い始めた。
「歌などまともに歌ったこともないが……カラオケの十八番ならある! 聴け!
――『敵は幾万ありとも〜♪ 光厳勝どき〜♪』」
「軍歌かよ! カラオケで『抜刀隊』歌う女子高生がどこにいるんだよ! チョイスが渋すぎんだろ!!」
八番勝負:体力対決
生身で挑むこの勝負。10mのハルカは寸分の狂いもない正確なフォームで、巨体腕立て伏せを100回軽々とこなした。
「10mの腕立て伏せ、一回ごとに地面揺れて地響きがヤバい……!」
一方、パワードスーツを脱いだアリスは――。
「体調管理とトレーニング……くっ……! 軍人の意地を見せてやる……!」
アリスは自分の身長ほどもある重さ20kgの対物スナイパーライフルを無理やり肩に担ぎ、プルプルと生まれたての子鹿のように足を激しく震わせながらスクワットを開始。
――が、わずか3回目で「ぴくっ……」と目を開けたまま白目をむいて砂浜に倒れ込んだ。
「アリス……お前、パワードスーツ無かったらマジで一般人以下じゃねぇか! 本当に軍隊出身か……!?」
九番勝負:花嫁スマイル
ハルカは首を少し傾げ、完璧で可愛い笑顔を披露。
「伸一くんっ♡」
「可愛い……(破壊力満点)」
一方、アリスは砂浜からふらふらと立ち上がり――。
「……くっ、わ、笑えばいいのだろう! 笑えば!」
アリスがぎこちなく顔を引きつらせ、限界の照れで真っ赤になりながら笑顔を浮かべた瞬間──。
【バチバチバチッ!!……ボン!!】
突然……、近くの配電設備に激しい漏電が発生! 背後のホテルの電球と街頭がすべて破裂して大停電を引き起こした!
「俺は今……一体何を見せられているんだ……!?」
機械にまで馬鹿にされるアリス。
結局……勝負の結果は、言うまでもなくハルカの圧勝だった。




