イベントシナリオ『悲哀は誰が為』7
プレイヤーたちの猛攻によって、乙姫の防壁に亀裂が入り始める。
これを好機と思った者たちも一斉に行動を起こす。ある者はバフを、ある者はデバフを行い、周囲の状況をより良くしようと動き始めた。
え?私?私は今、脳内にインフォが鳴りまくってるよ。
『進化が可能です、進化先を選択してください。』
という文字の羅列と電子音声が永遠に鳴り続けている。ストレスすぎて禿げそう。
そうこうしているうちにも乙姫の防壁にまた一つと亀裂が入る。
同時に、プレイヤーたちの絶叫も響き渡り始めた。
こんなタイミングで進化なんてふざけんなと思うよ。今戦闘中だぜ?全く。
取り敢えず今はこいつは無視しておこう。
空気の読めないインフォに少しのイラつきを抑えつつ、プレイヤーに指示を出す。
「障壁はもうすぐ割れるぞ!攻撃を止めるな!打ち続けろ!」
「サー!イエッサー!!」
「私は女だからイエスマムだ、殺すぞ!!」
「イエスマム!!」
少しコントみたいなことをしてから私も攻撃に入る。
周囲の魔力を操作して、弾丸に絡みつくような魔力を練り上げておく。すると、徐々に銃身が白色から黒に染まり、悍ましい音を響かせながら魔力を収束させ始めていた。
こいつぁ、強いのが打てるぞ。詠唱もして、威力を高めておこう。
まだ一回も使ってない技を使いましょう。
「銀の刃よ、集い、狂いて、魔を喰らい尽くせ。天より注ぐ流星のごとく、愚かな者共を天上の世界より罰を与え給え。《断罪弾》!!」
狙いを定め、詠唱を行い、引き金を引く。ズドンッと今までよりも遥かに重い反動が私の身体にかかる。
黒く染まった弾丸が、発射された直後に急加速を始めて、乙姫の障壁に衝突する。
障壁にあたった瞬間に、障壁が砕け散り、乙姫の体を貫いた。
大ダメージによるダウンも入り、乙姫の巨体が倒れる。
別ゲーだったらクリティカルだったね、今のは。
勇猛果敢にプレイヤーが攻撃を再開する。タンクは下げて回復を指示しておく。
「ムッツリきなこさーん!!!一回私抜けるわ!ちょっとの間持ちこたえて!」
大声でムッツリきなこに届くように叫ぶ。
ムッツリきなこさんは乙姫に日本刀を突き刺しながら返事をしてきた。
「構わん!何か策があるなら今のうちに準備していてくれ!40分くらいは稼げると思うぞ!」
「サンキュー!!」
翼を広げて、私は戦場の奥地に向かって飛翔する。
瞬く間に景色が流れ、一瞬で私は奥地にたどり着いた。珊瑚が溢れかえっている場所で、私はステータス画面を開く。
久しぶりだ、ステータス画面開くの。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
ステータス
名 《エルゼ》
称号《流浪の旅人》《魔族の友人》《魔族の友人》《従魔を持ちし者》《精霊の契約者》《魔族の友人》《術の開発者》《絆を繋げし者》
HP 1000/1000
MP 1600/1600
力 380
敏捷 425
防御 250
信仰 15
運 300
SP 30
種族 狂殺之吸血鬼
種族スキル 『吸血』『血液操作』『吸血嗜好』『狂化』『血液魔術』
スキル 『日光克服』『錬金術』『剣術』『鑑定』『時間魔術』『超感覚』『音響魔術』『荒野の音色』
『魔力制御』
模倣スキル『回避』
進化先
吸血女王
暗殺鬼
鬼
妖精騎士
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
WOW、進化先が4つもある。びっくりだね。それぞれのフレーバーテキストはどんなのだろうね?
取り敢えずは吸血女王からかな。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
吸血女王【魔族】
見詰めよ、畏れよ。我は女王。
何人も我より上に頭を上げることは叶わず、愚かな罪人として名を連ねるのみ。
【説明】吸血鬼の上位種。指揮系統の力を持ち、軍としての戦闘が得意。ただし、それは単体としての戦闘力が弱いわけではないと心得たほうがいい。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
はいはい、なるほどね。絶対強いじゃん。
系統は指揮。サポートもできる優秀な種族ってことね。理解した。
次、行ってみようか。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
暗殺鬼【魔族】
影に入りて光を断つ。それこそが我が力、我が理性。
万物に存在せし闇の化身が我である。
【説明】吸血鬼の上位種。闇と影に関する力を持ち、不意打ちが得意。
ただその分、光属性に弱く日光の耐性も低くなる。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
不意打ち特化の種族。これは無しかな、使いにくそうだし。
あと日光への耐性が下がるのが更にマイナスポイント。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
鬼【魔族】
震えよ、恐れよ。我は鬼。大いなる魔の原点にして頂点の一角なり。
【説明】全ての鬼系魔族の上位種。力が上昇し、魔力や物理攻撃への耐性が上昇する。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
クッソシンプルに強くなる感じかな?いいね、候補の1つにしよう。
じゃあラスト。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
妖精騎士【魔族】
妖精の守り手。精霊の力を受けし、光の番人。何人も私の後ろを通れると思うな。
命が惜しければ立ち去るが良い。
【説明】防御や守護の力に特化した種族。攻撃を反射、吸収する力を持つ。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
タンク型の種族ね。悪くはないけど、微妙かな。
少し悩み、私はステータス画面に手を伸ばす。
私は、ある種族の文字を押す。
同時にインフォが鳴り響く。
『種族『吸血女王』が選択されました。進化を開始します。』
刹那、名状し難き熱が私の体を蝕み始める。HPに変化はなく、ただ肉体が書き換わる激痛を耐えなければならない。
「zwdrtfyぎjhんlkmpkjh!!!!」
私の喉から出たとは思えない声が発せられる。
――――――――痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
喉が、腹が、目が、足が、全てが焼けそうなほど熱い!!
私は自然と自分の喉に手を伸ばし、首を絞め始める。
私の意思とは関係なく、何者かが私の体を支配し、操作する。
意識が遠くなり、『私』という存在が曖昧になり、蝕まれ、魂が汚されていく。
地面を転がり、のたうち回り、地面に赤の花を描く。
私の存在が揺らぎ、気を抜けば消え去ってしまいそうになる。これが『キャラロスト』、誓約書の意味か。
もうすぐ私も消えそうだ。
―――――――――あまり私を舐めるなよ。
私を蝕む熱を、逆に食らい、奪い、蝕んでいく。熱が逃げようと、私の体を駆け巡る。
逃がすわけ無いだろ?これは私の体だ。奪おうとした報いのを受けろ。
巨大だったはずの熱が、徐々にしぼんで、勢いを失っていく。
最初は天を焦がすほどの猛火だった熱が、今では小さな種火ほどに消えていく。
その種火さえも、私は食らい、己の力へと変質させる。
私の体に無数の鱗が出現し、やがて消え去る。額から肉を突き破って猛々しい一本の角が生える。
無数の魔法陣が私の体を覆い、天にその光を伸ばす。
私の進化に介入したやつに反逆の意思を込めて、より高く、その光の柱を上げる。
かかってこいよ、介入者。私はお前が思うほど弱くはないぞ。
熱が完全に消え、ステータス画面が変化する。
更にシステムウィンドウが開かれ、新たな種族を表示する。
『ユニーク種族『龍血呪帝』に進化しました。称号《神に反する者》、《龍喰らい》、《呪詛の女王》を取得しました。ユニークスキル『生命神樹』を取得しました。固有術上位【呪滅の晩餐会】を新たに取得しました。進化により、模倣スキル『回避』が消失しました。』
私は新たな力を手にし、戦場に飛び立つ。
イカれやがり進化です。介入したのは一体誰なんでしょう?




