イベントシナリオ『悲哀は誰が為』6
重く響く重低音のメロディが戦場にこだまする。
猛々しい旋律と、どこか悲壮な雰囲気を思わせる音色がプレイヤーたちにデバフとして伸し掛かる。
受けたデバフは『魔力攻撃低下』、『防御脆弱』、『毒』、『呪詛』、『物理攻撃低下』のてんこ盛り。
『呪詛』は、継続ダメージのデバフで、15秒に一回0.6%の防御貫通ダメージを与えるってやつね。
調整ミスってんじゃないか、と言うレベルでデバフが降り注ぐ。
威勢の良かったプレイヤーたちもデバフによって攻撃の威力も低下する。
さっきのバフが台無しだよ、まったく。
右手を振り上げて叫んだ。
「歌え!『音響魔術:浄化の音色』!」
突如として笛の音が響き渡り、音の届く範囲のデバフを解除する。
流石にこの戦場は広すぎるので、解除できないエリアもあった。仕方ないよね。
活気が徐々に戻ってきたプレイヤーたちが攻め立てる。
私もライフルを構えて狙いを定めた。
「《弾丸強化》!《貫通射撃》!《銃撃》!」
ダァンと放たれた弾丸は、乙姫の首を狙って飛翔する。
「キェェエエエ!!」
直撃寸前で、乙姫の貼った防御壁に弾丸は阻まれて当たらなかった。
音で構成された障壁は、魔術も無効化して後衛が攻撃できないようになってしまう。
頭良すぎじゃない?スキル使うタイミングがめっちゃ良いんだけど。
《銃撃》も後2分は使えないし、遠距離手段も『時間魔術』と、【幻水の精霊剣】の『水系統魔術』じゃ相性が悪すぎる。ほぼ効かないと言っても過言ではないね。
「『パワーシュート』!『乱れ撃ち』!『障壁破壊』!」
「『集中』!『貫通』!『狙い撃ち』!『会心撃』!『一点突破』!」
「押せ押せ!障壁を叩き割れ!そうすれば活路が見えるぞ!」
ムッツリきなこの号令で、自己バフを掛けた障壁破壊攻撃が放たれる。
『障壁破壊』のスキルは破壊できない場合もあるが、確実に耐久値を半減させる効果を持っているし、『一点突破』のスキルは、一撃の威力を2.1倍まで高める強スキルだ。みんなよく取得できるよね、こういうスキルって取得ポイントめっちゃ高いのに。
《銃撃》無しの射撃はどんくらいの威力かな?
「いい加減倒れてくんない?」
引き金を引いて弾丸を射出する。《銃撃》の性能無しのせいか、威力が低く見えて仕方がない。
案の定、ヒットしても堅牢な鱗に弾かれてどこかに弾丸が跳弾していった。
カスダメですよね、知ってます。
バフ掛けて貰おう。
「サポーター部隊!状態異常耐性系のバフと、遠距離強化系のバフをお願い!」
「わかりました!力尽きるな、永久の枝、世界樹の恩寵によりその身を悪しき者共から隔て給え!【万緑心法:隔ての枝】!」
「俺もかけるぜ!『プロテクト』!『キープアシスト』!『アンチポイズン』!『浄化』!」
固有術で形成された枝が装備に模様として刻まれる。ステータス画面を開くと、見えた文字は『状態異常耐性(1000秒)』、『状態異常継続解除(2000秒)』の文字。バフとして強すぎない?
耐性貫通しても継続解除で即回復っていうコンボがめちゃくちゃ強いね。PVPで会ったら負けそうだよ。
戦場全域に響く乙姫のデバフと、それを回復せんとするプレイヤーたちの声が交差する。
宴の大詰めも、もうすぐ終わる。




