イベントシナリオ『悲哀は誰が為』5
「キエエエァァァァ!!!!」
右腕を貫く大ダメージで、乙姫がノックバック&ダウン状態になった。
同時に襲いかかるプレイヤーたちに乙姫はひたすらボコられ続けている。
いやぁ、壮観だねぇ。これからは夏の風物詩にしていても良いかも。
あ、ムッツリきなこが斬り掛かって弾かれてる、ダッサ。
周囲にもう一度指示を飛ばして下がらせる。
「全員下がれ!ダウンから回復するぞ!逃げ遅れた人のためにタンクは前に出て!」
「了解!」
「次!サポーターはバフを!後衛は全力で攻撃しろ!多少プレイヤーを巻き込んでも構うな!」
威勢よく返事をした彼らは、タンクが前に出て起き上がりの一撃をカバーして耐える。
起き上がった乙姫に対し、無数の矢と魔術で応戦して再びノックバックを与えた。
私もクールタイムが終わるね。
ライフルを生成して構える。目標をセンターに入れてスイッチってね。
「撃つぞ!当たらないでね!貫け!《銃撃》!《弾丸強化》!《貫通射撃》!」
サポーターのバフを受けて、更に弾丸専用のバフを掛けて引き金を引く。
肩に重く衝撃が響き、私はノックバックされる。銃ってなれないよね、反動がデカくて。
まっすぐ放たれた弾丸は、瞬時に加速して再生した右腕を貫く。
バランスを崩した乙姫が地面を揺らしながらダウン。今度はムッツリきなこの号令で一斉に攻撃を始める。
「『花鳥風月』!」
「『アシストエッジ』!『パワースラッシュ』!」
「『パワーシュート』!『弱点破壊』!『乱れ撃ち』!」
斬撃、矢、魔術が織り混ざった無数の攻撃が乙姫に向けられた。
肉を抉り、矢が突き刺さり、確実に乙姫のHPを減らす。
このゲームでは、ダウン中に受けた攻撃は全てクリティカルになるという補正がある。
その仕様は今のような団体攻撃では特にその真価を発揮する。
さっきの『弱点破壊』というスキルは、攻撃した部位を強制的にダメージ1.5倍の『弱点』として生成する強スキルだ。そこに無数の攻撃がヒットすると、
「キエエエエ!!!」
ダウン中に次のダウンで永遠ハメループができるようになってしまう。
このチャンスを逃すほど私達も馬鹿じゃない。再び私は全体に指示をかける。
「アタッカーは使える攻撃をすべて使え!魔術部隊は温存しろ!タンクは後衛のカバーだ!」
「アイアイマム!」
全員が慣れてきたのか瞬時に陣形が組まれる。サポーターの無数のバフエフェクトが私達に降りかかる。
溢れんばかりの熱気と、色とりどりのエフェクトの混ざった光景は以外にも幻想的な景色になっていた。
何度目かの起き上がりの乙姫は何かの音楽をかけ始める。
同時に消し飛ばされるアタッカー達。
爛々と輝く龍の瞳は、私達の攻防を嘲笑うかのように揺らめいていた。
こいつマジかよ、私達の攻撃を全て出し切りさせた後に反撃しやがった。出せるアタック技がもう無い。
不味い!指示を再構築しないと!
「アタッカー達!全員下がれ!魔術は出し惜しみするな!打ち続けろ!トラップを作れるやつは作って!」
号令に従って、敏捷値の高いプレイヤーたちが前に飛び出て罠を設置し始める。
筋力重視の純物理アタッカー達はタンクの後ろに隠れる。タンクも消し飛ばされないか不安だな。
スキルを乗せないライフルを前衛だったプレイヤーに配る。これでなんとかなるでしょ。
「『戦場の高揚』!『魔女の口づけ』!『ポジティブエリア!』」
「『カバーエリア』!《城塞》!《鉄壁》!《挑発》!」
「水は流れ、槍となる!『水系統魔術:水霊槍』!《詠唱簡略》!『風系統魔術:烈風刃』!」
一人のプレイヤーによる全ステータスアップの『戦場の高揚』、次の魔術系スキルの威力を一度だけ2倍にする『魔女の口づけ』、継続回復のエリアを作る『ポジティブエリア』の並列発動によって戦場はなんとか持ち直した。ありがとう。
乙姫はまだ倒れない。




