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KのーとinS  作者: 炯斗
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0/閑話

転移実験で事故って異世界へ辿り着き、召喚のカミサマにご加護を貰って、オージサマを助けた。

そんなこんなでお城に厄介になる事になった。




「うん。とってもファンタジー」

ここ数日は図書室に入り浸って映像資料を漁っている。喋る聞くは問題ないが、どうやら文字は読めないらしい。おかげで本は読めないので、映像資料なんてものがあって助かった。とはいえ貴重なものらしく、数はない。なので大体見尽くしてしまった。因みにビデオや光学ディスクのようなモノではない。魔法的なもののようだ。

この世界は、ファンタジーと聞いて想像するような、剣士が居て竜も居て魔法があって自然豊かで…という世界観で凡そ間違いなさそうだ。城内の灯りは炎だし、街並みも現代的ではない。けれど。とてもラッキーな事に、この国は上下水道が整っている。城も街も清潔。変な匂いもしない。素晴らしい! それにガラス技術も発展している。グラスもあるし、窓にはちゃんとガラスが填まっている。それからそれから、お風呂…というかシャワーだが、とにかく身体をお湯で洗う習慣もある。取り敢えず最低限現代っ子が求める下地は整っている。当面生活していけそうだ。

生活に安心出来たら、次に求めるものは娯楽である。映像資料を見尽くした今、早急に次の娯楽を見付けたい。aはというと城の軍用施設でイキイキ訓練に精を出している。顔を見せに行って巻き添えを食うのは勘弁願いたい。となれば、さてどうしよう。Kと同じく暇そうな、雇い主を誘ってみよう。


「お、シール居た」

「暇そうだな」

「暇ですとも!!」

人の顔を見るなり状態を看破してきたオージサマは、Kの返事にひとつ頷いた。

「残念ながらこっちも暇を持て余してる。与えられる仕事は無いぞ」

「あ、じゃあ丁度いいじゃん。構って」

「何する?」

意外と乗り気だ。

「うう~む、じゃあ城内散歩でもしようよ。城案内だと思ってさ」

「じゃあ行こうか。覚悟できたな?」

「え? さ、散歩だよね…? 普通そこに覚悟ってのは要らないような気がしてますけれども」


そんなこんなでただいま宰務室にお邪魔している。

「音立てんなよ」

「………」

正しくは、忍び込んじゃった、なのだが。

「………多分この辺に…」

ぶつくさ言いながら机回りを漁り始める。

「ち。鍵掛けてやがる」

「なんだかよく解んないけど…」

とりあえず針金を差し出してみる。

「使えるなおまえ。ありがたい」

「何か知らないがさっさとやっちゃえ」

針金で鍵を開けるのはそれなりに技術が要ると思う。だというのにこのオージサマときたら

「開いた!!」

開けてしまった。ピッキングスキル持ちのオージサマというのはどうなのだろう。

「よし、行くぞ」

中から何か取り出すと、迅速にその場を立ち去った。


「で、それ何」

「………」

あからさまに目を逸らすシールの手には、小さな包みに入った数粒の珠。

「見た通り、ただの飴玉だ」

「ただの飴玉没収した上にわざわざ鍵まで掛けてしまって置くのか、ここの宰相さん」

「そのようだな」

「例えば宰相さんが甘い物好きで高級菓子を仕舞い込んでいた。で、いたずらっ子なシールちゃんが盗みに行った」

「………」

「とかなら『わお意外!』で済んだかもだけどね! シールが普通に飴持ち歩いてて没収されたってのは意味解んないよ~? 頷いちゃったもんねぇ、没収されたんだって。持ち歩いてるのも盗みに行くのもシールにとっては恥ずかしい事だと思うから、とっさに恥凌ぎの嘘吐いちゃった、なんて風には思えないしね」

一気に捲し立てる。だめ押しにもうひとつ。

「針金役に立ったよね!」

「………チ」

うわ。このオージサマ舌打ちした。

「『エイルニルスの実』」

「はえ?」

「そう呼ばれるものだ。水や酒に溶かして希釈して使用する」

「効能は」

「体内の魔力を変調させて恍惚状態を得る」

「え~と…合法?」

「西の方ではまだ」

「まあ効果とか知らないから何とも言い難いけど。常習性があるようなものはやめといた方がいいよ?」

「別に俺はやっちゃいないが」

「え、そうなの」

「俺そういうの効かねぇし」

「へぇ」

という事は一応何度か試した事があるのだろう。

「ならそれは?」

「これは正規の実じゃなくてな」

「と言うと」

「俺が作った」

「へ?」

「俺の領地に生えてた木の実から、外見上そっくりなこの『実』が作れた。効能は多少異なるが、本物に比べ些か不安定だ」

「へ、へぇえ。凄いねシール」

麻薬の自家製清とか素人が手を出してはいけない。

「で、効能は?」

「試した処一時的な魔力上昇と極度の昂揚感が得られるようだな」

「あれ、試したって、効かないって言ったじゃん」

「宰相の茶に混ぜた」

「で、バレて没収かい…」

「何故かバレたな」

何故も何もない。普通にバレるだろうそれは。

「おまえさん意外にやんちゃ坊だね…。で、取り返したって事は?」

「ちょっと調べたい事もあるからな。まあ付き合せて悪かった」

「んにゃ。暇潰し願い出たのはこっちだからね」

オージサマの意外な一面と危険な趣味も知れてしまった。それはともかく。

「Kそういうの超好きなんだよね! 絶対役に立つって! 手伝わせて!」

「そうだな、共犯者が一人くらい居た方がいい」

「やったー!! 楽しみー♪」

Kの持つ科学知識がどれほど通用するかまだ解らないが、今の処凡そ通用するだろうと見ている。

さて、まだまだ時間がある。

「そうだ、折角だから街案内もしてよ。どっか綺麗な場所か美味しい場所か…」

そう振ると、シールは難しい顔で黙りこんだ。

「………………」

瞳が一定感覚でキョロキョロと彷徨う。脳内検索に何も引っ掛からない、そんな様子だ。

「解った、じゃあそれを探しに行こうね」


「あ、おい。そっちは駄目だ」

城下を探索中、シールに行く手を阻まれる。

「ほえ? あの丘気持ち良さそうなのに」

城下からは出てしまうが、先には広々とした丘が見えている。折れた白い石柱が乱立している。遺跡か何かかも知れない。

「あの丘は玄獣たちの棲処《すみか》だ。立ち入りは制限されている」

「へえ。そうなんだ、了解。…でさ、結局玄獣って何?」

ちらちら聞く単語だが、明確に意味を知らないままきてしまった。

「玄獣は玄獣。おまえたちが使役するような奴らの総称だ。召喚獣とでもいうのか」

「なるほど。フェニックス君とか青龍ちゃんの事ね。そういえばさ、シール青龍ちゃんの事なんて呼んでた? あれ種族名でしょ?」

「あいつの使う青い龍ならコルードだ。おまえの朱い鳥はファイアードレイク。各属性の上位に位置する召喚獣だと聞く」

「へぇえ、そうなんだ。凄いんじゃん?」

「そうだ。だから雇った」

しれっと言われて反応に迷う。

「ご期待に添えますかどうか」


探索から戻ってシールと別れた。部屋に戻る途中、中庭で走っているaを見付けたので声を掛ける。

「…何してるの?」

「気晴らしに体動かしてた。あんまりじっとしてると鈍りそうだし」

「動かないとって…aさん、第二師団入ったよね? …訓練あるんじゃない?」

aはガックリと肩を落とす。

「それがねー。遊びに来てたこどもと試合させられてさ。無茶苦茶強かったんだけど、勝ったの。そしたら誰も訓練相手してくれなくなっちゃって。スピアさんにまで訓練参加免除されちゃったんだよね」

「こども?」

「アタシたちよりちょっと下くらいの。こっちに来てから初めて見るような真黒髪でさ。結構可愛いんだけど、かなり強かった」

「ふ~ん」

aが満足したんならそりゃ強かったんだろう。だが、こども…?

「で、スピアさんて誰」

「ほら、王様と会った時隣に居た人」

「あー、あの黄色いの」

シールに連れられて王に会った時、傍らに控えていた近衛兵だ。そういえば、あの時シールは王の事を代理だとか言っていたような気がする。まぁ今はそれはいい。

「それよりどうせなら訓練付き合わない? 訓練所の使用権は名実共にモノになってるから」

「うわあ、aさん楽しんでるね。お断りします!」

それが嫌で声をかけなかったんだった!


「K。居場所を見つけたのか」

「うん、一応ね。ちゃんと働いてるよ」

部屋に戻るとカミサマが居た。吃驚したが、フツーに話しかけてきたのでフツーに返す。

「帰る術も探さなくちゃいけないから、拠点は持っといた方がいいと思ってさ」

「そうか」

何処か遠くを見るような顔でこちらを見ている。

「タクリタン? どうかした?」

「なんでもないよ」

ふ、と。風に揺れた灯のように

「………消えちゃった」



そうして徒《いたずら》に日は過ぎて。

遂に、シールがその話を持ってきた。


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