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人工物の真っ青な空。
そこをゆっくり横切るのは、赤青緑の光で造り出されたフワフワな白い雲。
ただっ広い草原。 周りを囲む森林。
そよそよと微かに流れる風は木々を小さく揺らす。
周りを囲う森からは、相変わらず生き物の気配はない。
以前と変わらない景色。
けれど、一つだけ違うこと。
温度の無い太陽がエリア全体を照らす。
ならば、ポツンと建つ丸太小屋に影ができるのは当たり前。
その影の僅かな薄暗い闇の中で、一人の少女が小さく丸まって身を隠していた。
明るく眩しい光に怯えるように。
以前の平穏を怖がるように。
彼女は踞り、瞳を閉じて思考を止める。
余計なことを考えないように。
嫌なことを思い出さないように。
――あれから。
このゲームの世界に閉じこめられ、現実では目を覚ますことなく眠り続けていた人達。
新種の病だと思われるが原因・治療法共に不明である彼らが、一斉に目を覚まし始めた。
但し、彼らにゲーム世界の記憶はない。
彼女が彼らを殺すのに用いた凶器の包丁。もちろん普通の包丁ではない。
“ゲームの世界で死んだら、現実世界でも死ぬ”
但し、運営側から渡された特注品であるその包丁を使い、ゲーム世界の肉体を消滅させれば“現実世界の体に魂は戻る”という不思議仕様。
ついでに“ゲーム世界での記憶を封印する”という効果付き。これは斬り付ければ斬り付けるだけ、より記憶の封印が強固になる。
でも殺人は殺人。自分は人を殺した。
“本物”じゃない。
けれど、ゲーム世界のアバターを殺した。彼らの未来を奪った。
楽しい時間を壊し、楽しい記憶を消した。
だから、殺人。
その事が、彼女を闇へと閉じ込める。
彼女以外に誰も、何モノも無い世界。
自分以外の人一人いないゲーム世界。
気を紛らわすモノすらなくて、あったとしても彼女は拒絶する。
どんどん気は滅入って悪循環。
それでも彼女はずっと、ただそこにいた。
――――自らを呪い、蔑み、恨みながら。
だって、ここが彼女の唯一の居場所だから。
活気のある広場。眺めているだけでそれなりに楽しかったりする。
でも、それを壊したのは誰でもない自分自身。
頼まれたから。
でも、やると決めたのは自分自身。自分の意志で殺ったのだ。
だからもうこの世界は終わり。
みんな、お家に帰る時間。
それでも自分は、生身の世界には戻れない。戻りたくない。
あそこには、弱い自分しかいないから。
生身の世界で虚勢なんか張れない。ビクビク怯える事しかできない。
あそこに居場所なんて無い。邪魔な自分は居るべきじゃない。
自分がいなくても、代わりなんていくらでもいるんだから。
代わりになるものを見つけたら、さっさと乗り換えていくんだから。
帰れない。帰りたくない。
現実世界に目を背け仮想世界に留まり続ける彼女は、薄暗い闇の中でうずくまり続ける。
― 終 ―




