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「ピースちん、ようやく登場だのん♪」
「ぅ……。」
知らない人の嬉しそうな声に、グリンは視界が暗転したときに自然と閉じていた目を見開く。
賑やかだった広場は静まり返り、壁や装飾品は赤黒く染まっている。
そして、目の前にいるのは気味悪いほどに真っ赤な服を着たハク。
「ちゃっちゃと終わらせるぉ!」
嬉しそうに言った彼女は、固まってしまっているグリンの手を取り史谷の方へと連れていく。
「はい、お別れの挨拶どーぞ♪」
ニコニコと微笑むハクに、史谷は拳骨を落とす。
恐怖、困惑、嫌悪、不信感、地味に長い地獄……その他諸々の負の感情に、史谷のストレスはすでに限界を超えていた。
しかし非現実過ぎて半分放心状態夢見心地だっただけであり、硬直したグリンを見た途端彼は我に返りブチギレた。
「痛いぉぅ……。フミフミぃ……。」
ハクは拳骨の落ちた頭を手で痛そうに押さえ、潤んだ瞳で上目づかいに彼を見上げる。
「てめぇは、自分のやってることが分かってるのか?コレ、殺人だぞ?」
「そだね~♪」
「これはゲームだが、死んだら終わりなんだぞ?死んでも元の世界には戻れないんだぞ?分かってるのか?」
「うん、わかってるぉ♪でもぉ~――」
「『でも』じゃねぇ!!」
彼の言葉は無視して、ハクは続きを笑顔で言う。
「でもぉ~、死んだ方が楽だと思うんだぉ♪どうせ、出られないんだからね?」
「クソ。狂ってやがる……。」
「えへへ~♪」
彼が蔑んだ瞳を向けても、ハクは笑顔を崩さず微笑む。
「ハク……さ……ん?」
「んー?ピースちん、なぁに~?」
「こ、これ……、どうなってるんですか?」
ようやく状況が呑みこめてきたらしいグリンは、何故か怒っている史谷を避け、彼女に聞く。
「えっとね~?一言でいえばぁー、大虐殺ぅ~♪」
「ぅええ?!一体誰がそんなこと……。」
「もちろん、私だぉ♪」
「な、なんでそんな……。」
「んー。なんでだろうねぇ~?」
えへへ♪と笑う彼女。
「はぁ?!てめぇ、理由も無しにこんなたくさんの人巻き込んだってのかよ!」
「強いて言えばね……」
史谷の怒鳴りを無視したハクは、グリンを正面から真っ直ぐに見つめながら呟くように言う。
「人間は皆ゴミなの。クズなの。灰になって消えちゃえばいいの。
だって、その人の事は何も知らないのに好き勝手決めつけて、相手の悪口言うの。
自分に関係ないものは、壊したって罪悪感のかけらも無いの。
存在してたって、いなくなればいくらでも代わりを作るの。
見ようとしないの。聞こうとしないの。知ろうとしないの。
……だから、罰くらい与えてもいいと思うの。
でも、私がグチャグチャにしたって関係ない人にとっては痛くも痒くも無いんだよ。
だって他人事だもんね?どうでも良い事なんだ――」
手を上げた史谷により、彼女の言葉は途切れる。
「むぅ。……フミフミぃ、暴力反対ー。」
「てめ――――」
「うにゅ?タイムアップなんだぉ……。」
殴られてもケロッとしているハクに史谷は怒りを膨らませるが、終わりを告げる彼女に言葉を遮られた。
彼女は激怒している史谷から視線を外し、空中に指を動かす。
ピキピキと青年二人の体は分厚い氷に包まれ、逃げるどころか指一本動かすこともできない。
もちろん言葉を発す事も出来ない為、彼女に文句も言えない。。
「最後になんか言うことあるぅ~?なーんて、聞こうかと思ったけどや~めたっ♪
じゃぁね~。バイバイ♪」
満面の笑顏でそう言った彼女は、両手に持った包丁で二人を同時に刺した。
「アハハハ♪」
一人になった広場に、彼女の笑い声が響く。
手に持った包丁は彼女の手から滑り落ちる。
「アハ……ハ……。」
散々彼に殴られて、痛む体を抱きしめた。
「楽しく……なんて、無いよ……。」
水浸しの地面であることに構わず、力尽きたようにその場にペタリと座り込む彼女。
赤黒い水の湖には透明の雫がポトンと落ちた。




