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「フミフミ。はい、どーぞぉ。」
作業に飽きた彼女は、ジッとしたままの彼にお椀と箸を強制的に押し付け、自分はもう一つ椅子を出して彼の隣に座る。
彼に手渡されたお椀の中には、湯気の立つ暖かいお汁粉。
お椀越しの熱が、冷たい雨に濡れて冷えきった彼の手を少し暖める。
しかし彼は眉をひそめたまま、好物のそれを食べようとはしない。
お椀の中の小豆色のドロッとした液体が、目の前に広がる赤黒い池に酷似していた。
微かに頭を出した餅は、元は白かったはずだが今では所々が赤く染まってしまった広場の装飾品のよう。
暖かいお汁粉が、目の前のグロテクスな広場と重なり、彼はお汁粉をお椀ごと地面に叩きつけた。
「こんなもん食えるかよ!」
バシャっと水滴が飛び、冷たい水が服にシミを作る事にも構わず、史谷は彼女の胸ぐらを掴み立ち上がらせ、真正面から睨み付ける。
そんな彼にハクはフワッと微笑んだ。
「あ゛ん?何にニヤついてるんだ、てめぇ。正気か?」
「ふにゅ。楽しいぉ?」
「…………いい加減にしろ。」
「エヘヘ。フミフミ可愛ぃ……。」
「チッ!!変な呼び方止めろよ、気持ち悪い。」
「え~?じゃぁ、フミりん?」
「却下。」
「むー。フミフミゎフミフミなんだぉー?」
ギンッ!!っと史谷はハクを睨むが、彼女はニコニコしたまま動じない。
「チッ。狂ってやがる。」
完全に壊れているハクを、彼は投げ捨てた。
バシャンと音を立てて水しぶきが上がり、彼の体も冷たく濡らす。
そして、赤黒い湖に体を半分以上浸からせた彼女は『むー』と膨れて史谷を見上げた。
「フミフミぃ~、優しく降ろしてよー。痛いじゃん。」
「はぁ?」
「ビショビショなっちったぬ……。」
「…………わ、悪ぃ。」
シュンとした彼女に、なぜか史谷は自然と謝っていた。




