↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
〜外伝〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/81

外伝 第二話 僕のオレンジ

「こんな大きな鳥が近くにいて怖くないの?」

「全然怖くないよ、かわいいでしょ? 調べたら、タカの幼鳥だって。名前はジョルジェだよ」


 今日、リエルはへヴァンと一緒に庭で遊んでいたところ、ジョルジェが降り立った。

 ジョルジェは、この一週間毎日リエルを訪ねている。

 そして、いつもへヴァン(・・・・)がリエルの側にいることが、面白くなかった。


(いいなぁ。へヴァンとかいう人間は、いつもリエルと一緒にいる。リエルのお兄さんだって)


 ジョルジェは、へヴァンを睨みつけ羽を広げて鳴いて威嚇した。


「なんか僕、嫌われてる? 怒ってない?」

「こら、ジョルジェ。へヴァンは僕の大事なお兄様だよ。良い子だから、大人しくしてて」


 リエルは、ジョルジェの羽をなでて諌(いさ)めた。


「ほら、かわいいでしょ?」


 リエルがへヴァンの方に振り向くと、へヴァンは屋敷の方に逃げてしまっていた。

 少し距離をおいて、護衛とメイドのアリサがリエルを見守る。

 二人は、タカがリエルになついている様子を見ながら感嘆する。


「本当にリエル殿下は、タカを操れるのではないのですか?」

「すごいことですね。その才能がありそうです」


 一方、リエルは、

「あ~あ……お兄様、逃げちゃった」

 と、残念がる。


 その時、ジョルジェはリエルと二人きりになっている事実に気づいた。


(邪魔者がいなくなった! )


 とたんにドキマギして、挙動不審な動きをするジョルジェ。

 タカの幼鳥は心臓を跳ねさせながら、夕焼けをスケッチブックに描いているリエルの横顔を見つめる。


 ーーオレンジのお日様に溶けてこんでるみたい。こんなかわいい人間がこの世に存在したなんて。ただ、僕はタカだしリエルと話せない。でも、僕は人間に変わることができるじゃないか⋯⋯。


 ジョルジェは、そんなことを考えるまでにリエルへの想いは膨らんでいた。


 ※ ※ ※


 それから三週間が過ぎ、へヴァンとリエルが首都の皇居に帰る時がやってきた。


「リエル、早く~~」


 へヴァンが、馬車の前でリエルを呼んでいる。リエルは、いつもジョルジェと遊んだ場所で、空を見上げ探していた。


(ちゃんとジョルジェとお別れできなかった。また会えるかなぁ……)


 リエルは後ろ髪を引かれながらも、馬車にベヴァンと共に乗り込む。



 ジョルジェは、木の上から隠れるように馬車を見下ろしていた。


 (僕はタカなんだ、タカとして生きなくちゃ)


 タカの幼鳥は、視界で小さくなる馬車を眺めながら、そう自分に言い聞かせた。




 ※ ※ ※

 一年後、鳥類に恋の季節がやってきた。

 しかし、ジョルジェは求愛行動をする気になれない。


 ーー自分はタカとして、もう生きていけないかもしれない。リエルのことばかり考えてしまって。いっそのこと人間として生きた方がいいのだろうか。


 そして、ついにジョルジェは、リエルが生活している首都の皇居に向かうことを決意。


 ーー とりあえず、あのリエルという人間に会ってみたら答えが出るかもしれない!


 ジョルジェは皇居を目指して大空へ飛び立った。


 ※ ※ ※


 皇居近くの森に着いた。

 ジョルジェは、木に止まり休憩を取る。


 ーーこの森を抜ければ、後少しでリエルに会える。 人間は成長が遅いけど……背は伸びたかな? 髪も伸びると聞いた。また遊んでくれるだろうか?


 いろいろ思い巡らせながら、ジョルジェは空に舞い上がった。



 その時、油断していたのだ。



 ーーしまったっっ! 



 左の翼に激痛が走る。

 そのまま、地面に叩きつけられた。


 ーー痛い痛い痛いっっ! カリ(・・)だ!  人間にやられた!  こんなところで死ぬのか? リエルにも会えず? 


 ジョルジェは痛みに耐えながら、ある考えがよぎる。この一年ずっと考えていた計画。


 ーー人間に化けるのは? 化けて助けてもらうのは? 


 だんだんと、カリ(・・)をしていた人間の声が近づいてくる。


「タカだったよな? 仕留めたのは」

「この辺りに落ちたと思うのだが」


 ーー迷っている時間はない!! 




 ※ ※ ※

 ジョルジェは病院に運ばれ、ケガの手当てを受けた。

 腕の骨折と全身打撲という診断で、包帯で固定されている。

 ついに、ジョルジェは初めて人間の姿に化け、治療をされベッドで横たわっている。


 ーー人間はすごいな……ケガに効く薬も開発してるのか。空を飛べない代わりに頭脳が優れている。しかし、空を捨てる(・・・・・)ことは僕にはできないな。


 そんなことをぼんやり考えていると、ジョルジェの両親という人達が現れた。


(両親? 人間の? )


 ジョルジェは、父と母という人達と面会した。

 母親は涙を流していたが、黒い影のようなものが全身から出ていた。


 ーーあれは……タカの仲間達の噂で聞いたことがある。「黒魔術」かもしれない。まあ、僕には関係ないけど。


 当たり前だが、ジョルジェは二人にはなんの感情もわかない。

 ジョルジェの人間の姿を見た人は、皆口々に「へヴァンデンカ」と呼んだ。


 ーー「へヴァン」……どこかで聞いた名前だな。それに皆、頭を下げてくる。よくわからない。治療が終わったら、ここを出よう。リエルに会いにいかないと。


 しばらくすると、扉が開いて下僕(しもべ)の人間が、小さな人間と一緒に病室に入ってきた。


「へヴァン殿下、リエル殿下が来られましたよ」

「リエル……?」


 へヴァンは耳を疑った。


 この一年その名を何度唱えただろう。


 そして、記憶より少し背が伸びた「リエル」が、ジョルジェの目の前に現れたのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。