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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第七章 デビュタント当日

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75.猛禽類が邪魔をする

「ナユタ、来てくれたの? ただ、今は兄上のことで、 しばらく皆総出で捜索するからバタバタしてて⋯⋯」


 リエルは、部屋を訪ねてきたナユタに声をかけた。


「……ナユタ?」


 ナユタは、部屋に入るなり動きが止まった。何故か固まっている。


 リリィ用の止まり木に、大きな鳥が佇んでいた。


「で、殿下、この鳥は⋯⋯?」


 震えながら、その鳥を指差すナユタ。


「ああ⋯⋯知ってる? タカという猛禽類(もうきんるい)の鳥だよ。かっこいいでしょ?」


 ナユタはその鳥から目が離せない。冷や汗が背中を伝う。


「これから、平民に扮して兄上を捜索してくる。せっかく来てくれたのにごめんね」

「い、いえ、護衛を3人はつけて下さいね」

「ありがとう」


 リエルはにっこり笑って、ナユタを抱き締める。

 そして、慌てて部屋をあとにした。

 部屋には、ナユタとその猛禽類のタカ。

 一人と一羽きり。


 ナユタは相手がタカなので、本能的に震えてしまう。

 しかし、疑問をぶつけるしかない。


「へヴァン皇子⋯⋯殿下ですか?」


 ナユタを睨み付けるタカ。

 彼女は、思わず悲鳴を短く上げてしゃがむ。


『僕の名はジョルジェ。リエルの親友。いや、生ぬるいな。リエルは、僕の太陽、お日様だ!』


 ーーへヴァン殿下じゃん! 彼もリエル殿下のことを「太陽」とか言ってたし! 


 ナユタはタカといえば、市中で助けられたことを思い出した。


「あーー! あなた、あの時のタカ?」

『やっと思い出したか。まだまだリエルを守る王妃としては未熟だな』


 ーーじゃあ、へヴァン殿下には私がリリィってことは最初からばれてたってこと? 何故タカがへヴァン殿下になってるの?


「聞きたいことは山ほどあるけど、とりあえずへヴァン殿下に戻ってください! 国中が混乱してしまいます!」

『もう、いろんな問題が解決したしね。リエルが成人するまでの話だったし。君もわかるはずだ。最近、リエルを狙う殺気は消えただろう?』


 ナユタは指摘されて気づく。

 確かに、リエルを取り巻く違和感はなくなった。


「そういえば⋯⋯何故でしょう? へヴァン皇子が処理されたのですか?」

『私の力ではないな。両陛下が苦労された結果だ。私に言えるのはここまでだ』

「でも、いつからへヴァン殿下の身代わりに?」

『これからはジョルジェ(・・・・・)として生きていくつもりだから、ジョルジェ(・・・・・)と呼ぶように』


 ナユタは慌てて、ジョルジェ、と言い直した。


『リエルが幼い頃、僕は命を救われたんだ。その時、名前もつけてもらった。その一年後、リエルに会いに行く途中ケガをして人間に化けた。病院に連れていってもらったら、僕がへヴァンそっくりだったらしい。』


 ナユタは、父レオンから9年前の『へヴァン第一皇子失踪事件』の内容を聞いていた。


「じ、じゃあ、あの9年前にへヴァン皇子とジョルジェは入れ替わったってこと? 何故?」

『さあ⋯⋯? とにかく、僕はへヴァン皇子にそっくりだったらしい。第一皇子が行方不明になったら騒ぎになるため、身代わりをさせられたんだ』

「本物のへヴァン殿下は見つかってないのですか?」

『そうだな。もうたぶん永遠に見つからないだろう』


 ナユタは混乱したが、とにかく皆を安心させたい。


「お願いですから、へヴァン殿下に戻ってください。」

『嫌だ。僕はジョルジェ(・・・・・)として生きる!』

「何故ですか? リエル殿下も両陛下も、みんなが心配して」

『君は!』


 ジョルジェは、ナユタの言葉を遮った。


『君は鳥の(せい)を望んで捨てただろう? 僕は鳥の(せい)を望んで選んだだけだ。僕にだって、自分の道を選択する権利を持っている。』


 ナユタは言葉につまった。確かに、誰がどんなに望もうが、本人の人生の選択を否定はできない。


『僕は大空を飛び回って、自分の(ひな)を育て、自由になりたい。そして、リエルとも一緒にいたい。それだけだ』

「リエル殿下とも?」

『自分の中で賭けてたんだ。僕は9年以上もジョルジェの姿でリエルに会ってなかった。それでも、彼が僕の名前を呼んでくれたら、一生一緒にいる。わからなかったら、完全に姿を消すって』

「タカに戻るのに、リエル皇子様の側にいるの?」

『要するに、気まぐれに部屋を訪れて、一緒に寝て遊ぶ。お前がやってることだな。そして、繁殖期には育てタカとして満喫する』

贅沢(ぜいたく)な!」


 ナユタは思わずうらやましくて叫んだ。


『お前はリエルの(ひな)を産む立場だろう? 悪くないじゃないか』

「はあ? もう人間のしがらみがない世界に戻るということでしょう?」

『手助けはしてやるよ。僕が皇家では一番優秀だっただろう? 必要があれば、ちょっとだけなら人間になってやるよ』

「あーー、本当にうざいーー!!」

『お前、僕が猛禽類なこと忘れてるだろう?』



 その時、侍女がジョルジェのエサを持ってきた。


「あら、ナユタ嬢、いらっしゃったのですね。失礼いたしました」

「いえ、今日は皆さん大変でしょう。私もシュバルツ家に帰りますね」


 その時、ジョルジェがナユタに勝ち誇ったような笑みを向けた。

 ナユタは内心ムカムカしたが、次期皇太子妃としての体面をなんとか保つ。

 しばらく、ジョルジェはリエルの部屋に居すわりそうな予感がした。

最後までお読みいただきありがとうございます


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