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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第七章 デビュタント当日

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68.果てしないクズと超絶美少女

 ハンナは一羽の鳥を探していた。

 すると、その鳥の気配を前方の大木から感じ取った。


『ケンタ! あんたケンタでしょう!?』


 もちろん鳥なのでピィピィとしか、人間には聞こえない。

 しかし、ケンタは人間の姿をしたモモイロノトリなので、会話は可能だった。


「あ、あいつ⋯⋯あいつ、いなくなったか? 」


 ケンタは、なぜかガタガタ震え、顔面蒼白だった。


『なんの話? それより、あんたナユタ(リリィ)に何したの? ナユタ(リリィ)が血を吐いて倒れてるんだけど!!』


 ケンタは、それを聞いて表情が変わった。


「なんだって? お、俺はただリエルオウジサマを殺したい人間どもと組んで、計画を練っただけだ! 弓矢を訓練して、毒矢をリエルオウジサマに命中するように! そして、さっき毒矢を当てたはずだ!」

『なんだかわからないけど、ナユタ(リリィ)が苦しんでるんだから、ナユタ(リリィ)に当たったんでしょ?』

「そ、そんな⋯⋯お、おれはただリリィと(つがい)になりたかっただけだ、どうして⋯⋯」


 ケンタは動揺して、木の枝に力なくへたりこむ。


ナユタ(リリィ)はリエルオウジサマのためなら、命を差し出すわよ! あんた、どうせ矢を放っただけで命中した、と判断したんでしょう? ナユタ(リリィ)はきっとリエルオウジサマをかばったんだわ! あんたは真のクズね!』

「そんな、どうしよう⋯⋯」


 ハンナはケンタを問い詰める。


『何か方法はないの? あんた知ってんじゃないの?』

ゲドクザイ(・・・・・)とやらを渡されてたんだ。間違って俺が毒が体内に入った時に打ち消す薬。でも、さっきあいつに奪われた」

『あいつ?』

「だから、薬はもう持ってない。ただ、薬には使い方があるんだ! 飲む量と飲む間隔を間違えたら、すぐ死んでしまう!」

『なんですって!?』


 ハンナは、あわててケンタに薬の用法を詳しく聞く。

 そして、メインホールの方向に飛び立った。

 ケンタは、あの人間がまた戻ってくることを恐れた。

 小鳥の姿にに戻り、(せわ)しなく空高く舞い上がった。

 大木には、着用していた服が無造作に散らばり、弓矢の筒も地面に落ちて、矢が散らばった。


 ※ ※ ※


 へヴァン皇子は、メインホールの入り口近くで身を隠していた。

 騎士や使用人がバタバタと走り回っている。

 それを木の陰から観察していた。

 そして、解毒剤の小瓶を握りしめ、思い巡らせる。


 ーーこれがあればナユタ嬢は助かり、リエルは皇太子に選ばれ、幸せになるだろう……。しかし、僕は? 僕はリエルの前から消えなくてはならない。僕は所詮身代わりだから。


 へヴァンは、切なげにため息をついた。


 ーーしかし、あの毒は国内に存在しないが、西帝国に遅延性毒薬の製造を成功させたと聞いたことがある。黒魔術といい刺客といい、ろくな国じゃないな。皇帝は病んでるのか? ーー


 へヴァンは空を見上げて、自嘲気味に笑った。


(僕も似たようなもんだな⋯⋯。)


 このまま小瓶を差し出さず、ナユタが死ねば、どんな未来が待っているのだろうか。

 そんなことを想像する。

 その時。

 へヴァンの耳には、メインホール正門の護衛二人の声が聞こえた。


「なんだ? こいつ、モモイロノトリだっけ? まとわりついて、うるさいんだけど! あっち行け!」


 メインホールの入口の護衛二人が、一羽のモモイロノトリに絡まれていた。

 ホール内では、ナユタが生死の境を彷徨(さまよ)っている。

 兄キリアンが抱きかかえ、皇医と助手ができる限りの処置をしていた。

 モモイロノトリのハンナは、ナユタ(リリィ)を助けるべく解毒剤の処方を人間に伝えたい。

 しかし、小鳥のためピィピィとしか声が出ず、護衛二人にとっては、うるさい小鳥でしかない。


(しょうがない、出直すか⋯⋯早くしなきゃ! )


 ハンナは、メインホール近くの大木の陰に隠れる。

 そして、初めて人間の姿に変身した。

 ピンクの羽毛のドレスに、ピンク色の瞳。まっすぐ絹のようなストレートの長いピンク色の髪ーーどこから見ても人間の美少女になった。


「急がなきゃ!」


 ハンナはメインホールの護衛を突破すべく走り出す。


(しかし、地面に足をつけるしか移動手段がないなんて、本当に不便だわ)


 ハンナは走りながら、そんなことを考えていた。


  ※


「しかし、さっきの鳥はなんだったんだ?」

「めっちゃ鳴いてたぞ、なんか食い物でも持ってたのか?」

「いや、そんなもん持ってない。なんか今日は厄日だな。ナユタ嬢は大丈夫だろうか」


 護衛二人が会話していると、背中越しに女性に声をかけられた。


「こんにちは、お兄様方。ナユタ嬢の解毒剤のことでお話があるの。急ぐのよ、通して下さらない?」


 護衛はその女性の姿を見たとたん、顔を赤らめ動揺が隠せなくなった。


「あ、あなた様は⋯⋯どこのご令嬢ですか?」


 滑らかな白い肌に愛らしいピンクの髪がなびいて、ピンク色の瞳をしている。色気のある厚い唇はピンク色で、東帝国でも(まれ)なタイプの美しさだ。


「ハンナだけど⋯⋯こんなことしてる場合じゃないのよ! ナユタ嬢の解毒剤のことでっ!」


 護衛達は、この全身ピンク色のレディと話がしたいばかりで、ホール内に通してくれない。

 決して、怪しい人物だから、中に入れてもらえないのではない。美少女と話がしたいだけなのだ。


「何をしている」


 低く威厳ある声が護衛二人の行動を制した。

 二人は一気に震え上がり、声の主に向き直る。

 へヴァン第一皇子が、護衛二人と美少女一人の前に現れた。


 

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