表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第七章 デビュタント当日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/72

64.ファーストダンスは踊れない

 キリアンは自分の客室に戻り、桶に入った水で顔を洗う。

 何度洗っても、義妹への想いは消えるはずもない。

 東帝国内で身分関係なく、皆、ナユタが次期皇太子妃になることを喜んでいる。

 まるで、それを望まない自分だけが罪人のようだ。


「キリアン様、そろそろ会場に向かうお時間です」


 執事が、タオルで顔を拭いているキリアンに告げる。


「そうだな。すぐ準備する」


(それでも、今日は無事に大役を果たさなくては⋯⋯)


 キリアンは黒い感情をもつ自分に言い聞かせた。


  ※


 父のレオンが皇居のメインホールに着いた。

 今日は娘のデビュタント。

 そして、息子のキリアンがエスコートする。

 なんとも感慨深い一日だと痛感する。


(ナーシャ、私と君の子供達の晴れ舞台だよ)


 心の中で、永遠の妻に語りかけた。


「よお! レオン閣下! 今日は父親冥利につきる日だな」


 レオンに背後から声をかける人物。

 大公クレオだ。


「クレオ閣下、私は肉親なので会場内に入りますが、閣下はどうされるのですか?」

「私も会場内に入るが、うちの護衛騎士の統率にあたる。皇室騎士団は副団長が指揮をとるのだろう?」

「今日ばかりは私も父として、パーティーに参加しないとならないので。副団長にお願いしました」

「そうだな。ナユタ嬢が主役だが、キリアン卿もパートナー役だろ? 私も盗み見しながら、業務にあたるよ」


 今やナユタのデビュタントが、東帝国の一大行事となった。護衛騎士もかなりの数だ。


「主に都市部に近い貴族の騎士が召集されたのですか?」


 レオンは、クレオにたずねた。


「西のハバイシュ家だけ辺境伯としては、騎士を多数送り出してるね。まだあまり信用できないが。イアン家とももめた後なのに」

「ハバイシュ家が?」

「ああ。かなりの日数かけて登城したみたいだから、陛下も送り返すこともできなかったみたいだ。そのかわりホールより最も離れた東門に配置した」

「それなら、良いですね」



 ※ ※ ※


 華やかなデビュタント会場。

 成人となる貴族令嬢が続々と白いドレスで入場する。

 扉の外で、キリアンと腕を組み、ナユタは入場するため待機していた。

 いよいよ入場曲が流れる中、入場する扉が開いた。

 そして、キリアンのエスコートで入場するナユタ。

 一斉に会場がどよめいた。 


「美しい⋯⋯さすが次期皇太子妃だ」

「もうすでに皇族の気品があるわ」

「ますますナーシャ夫人そっくりになられて」

「キリアン卿も堂々とされているわね」


 ナユタとキリアンに目が釘付けになる貴族達。

 二人は、そのまま父レオンの元に近寄る。


「お父様、いかがですか? 私もレディの仲間入りですよ」


 レオンは、娘の姿をただ見つめる以外何も語らない。


「父上、お気持ちはわかりますが、何かおっしゃって下さい」


 キリアンは口を開こうとしない父に、言葉を促した。


「あ、ああ、すまない。きれいだよ、ナユタ。私にとっては世界一美しいレディだよ」

「お父様⋯⋯」


 少しレオンの目が潤んだように見える。

 今日はナユタもそこは追及しなかった。

 今日一日ぐらいは、自分に愛するお母様を重ねてもいいんじゃないか。

 ナユタはそう思った。


 トランペットの音が響き皇族が入場。

 テオ皇帝陛下に続き、アリシア皇后陛下、へヴァン第一皇子、リエル第二皇子⋯⋯そして、護衛騎士が各々一名ずつ帯同している。

 デビュタントを迎えたレディに祝辞を述べる皇帝テオ。

 いよいよデビュタントボール(舞踏会)が始まった。


 壇上の皇族席に座っているリエルを目に焼き付けるナユタ。


 ーー皇族の正装なのね⋯⋯本当、イケメンは人を幸せにするわ。


 ナユタは扇子(せんす)でニヤニヤする口元を隠す。

 リエルを穴があくほど見つめていた。

 その様子を兄キリアンは、横から見つめていた。

 彼はわかっている。

 にやつく妹につける薬はないのだーー。


 しばらくすると、音楽が流れた。


 リエルはへヴァンに向かって予告する。


「へヴァン兄上、今日は先に僕がナユタ嬢にダンスを申し込みます」

「お好きにどうぞ」


 へヴァンは、興味がないのか(うわ)の空だった。

 リエルは皇室席からゆっくり階段を降り、ナユタの元に向かった。

 貴族達は、その行動をじっと固唾(かたず)を飲んで見守る。


「ナユタ嬢、私にあなたのファーストダンスを一緒に踊る栄光を与えてくれませんか?」


 会場はしんと静まり返っている。


 その時。

 へヴァンは右上の天窓に目を向ける。


 突然、遠くの空が灰色に染まった。


 

最後までお読みいただきありがとうございます


感想や評価、リアクションいただけると、とても嬉しいです(.❛ᴗ❛.)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ