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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第七章 デビュタント当日

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64/73

63.記念日の朝

「いよいよ今日ねーー! 『デブタント』!」

「『デビュタント』ね⋯⋯ハンナ」


 朝5時から早起きの小鳥たちは、おしゃべりに余念がない。

 野生動物達にとっては、なんの変哲もない朝に過ぎなかった。

 皇居の園庭も、まだ空は暗く、朝の澄んだ空気にひっそりと佇んでいる。


「リリィ、あんたの晴れ姿こっそり見に行くよ!」

「忙しかったら、無理しなくていいよ」

「じゃあねーーまた後でね」


 ハンナは、早朝の空を(せわ)しなく飛び立った。


「私も少し二度寝して、準備しなきゃ」


 リリィは、ナユタに戻るため急いで皇居のゲストルームに戻っていった。


  ※


 今日はナユタのデビュタント当日。

 静養していたキリアンも体調が戻り、妹ナユタをエスコートする予定だ。

 次期皇太子妃のデビュタントとあって、中央地域のほとんどの貴族が集結する。

 会場内の護衛は、東帝国騎士団の騎士達がその責務を担う。

 会場外はそれぞれの家門に割り振られた。


  ※


 ナユタは白いドレスに着替え、瞳と同じエメラルドのアクセサリーをつけていた。

 髪はゆるく結い上げ、少し巻き髪をこめかみにおろす。


 ほぼ準備が完了。

 その時、兄キリアンがナユタの様子を確認しにドレス部屋に立ち寄った。


「ナユタ、準備は⋯⋯っ!」


 キリアンは言葉を失くす。


「お兄様、馬子(まご)にも衣装って言わないの?」


 ナユタは立ち尽くす兄をからかう。


 キリアンの脳裏には、初めて出会った瞬間、父の後ろに隠れていた小さなナユタが(よみがえ)る。

 およそ8年前の場面。

 あの時の雷に打たれたような衝撃。 

 心臓の上を手でおさえても、乱れた動きはおさまらない。


 キリアンは、あの日のように走って逃げてしまった。


「ちょっと! お兄様! 迎えに来たんじゃないの?」


 その時、一羽のモモイロノトリが少し離れた木から、ナユタの部屋をのぞいていた。


 ※


 アンナの小さな墓の前。

 リエルは小さな花束をそっと供えた。

 彼はすでに公式行事の正装に着替えている。

 後ろから、いつかの中級騎士パトシュナ家のブライヤと従騎士パーヤルが、木の実を持ってきた。


「リエル殿下にご挨拶いたします」

「ありがとう、ちゃんと足を運んでくれてるんだね」

「殿下もよくここに来られるのですか?」

「私はほぼ毎日来てるよ。ただ、君達は無理をしないように。来たくなったら、来てくれたら良い。今日は忙しいだろう?」

「リエル殿下の方が何倍もお忙しいでしょう。」


 今日はナユタ嬢のデビュタント。

 国中上げての祝福ムードでお祭り騒ぎだ。


「警備はどこに配置されたの?」

「はい、皇居の園庭のパトロールです。会場からは離れてますね。ちょうどこの辺りを回ります」

「そうか、よろしく頼む」

「は、はい!」


 リエルはそのままデビュタント会場に向かった。


  ※


「シュバルツ家ナユタお嬢様、デビュタントおめでとうございます!」

「ご成人おめでとうございます!」

「東帝国ばんざーい!」


 町では、紙吹雪が舞い人々が踊り、祭りが開催されていた。


「シュバルツ家の養女が、まさかエストリニア神に皇太子妃に選ばれるとは」

「素敵な話ねーー」

「シンデレラストーリーだわ!」


 民衆達は、皇族の噂話に花を咲かせた。

 そんな中、次々と貴族達の馬車が、町中に列をなして皇居に向かっていた。

最後までお読みいただきありがとうございます


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