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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第五章 デビュタント前

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59.へヴァンの居場所

 アリシア皇后が黒魔術から、ついに解放された。

 その一時間後。

 皇后テオが第一皇子へヴァンの部屋を訪れていた。


「ありがとう。君のおかげで黒魔術が解けた。リエルも明日視察から戻ってくる」


 テオは興奮し、少し早口でへヴァンに報告する。


「⋯⋯おめでとうございます」

「アリシアとは少し話をしたが、黒魔術にかかっている間も、外の景色は見えていたようだ。君のことも本物のへヴァンではないことを見抜いていた」


 皇帝はへヴァンを気にかけて、今後のことを口にする。


「君はこの9年、皇家のために自分を犠牲にして、リエルを守り抜いてくれた。私は君がいなかったら、全てのものを失っていたかもしれない」

「大袈裟です」

「何度も言う。頼むから、ここにとどまってほしい。私は君のことをリエル同様大切な存在だと思っている」


 へヴァンはうつむき、拳を握って、かぶりを振った。


「僕の居場所はここではない。それはわかる。」

「⋯⋯東帝国以外どこに行くんだ?」

「僕はどこでも生きていけますよ」


 へヴァンは、にっこり悲しげに笑った。


 ※


 翌日早朝。

 予定通り、南部ノブァコーストア視察団は帰城した。


「両陛下に御挨拶申し上げます。ただいま、私、クレオはリエル殿下と共に南部視察を無事に終え、戻って参りました」


 大公クレオは両陛下を前に跪き頭を下げる。


「ご苦労であった。 今日はもう疲れたであろう。クレオには客室を用意した。しばらくゆっくりしてくれ。リエルは私と軽く話そう。私の部屋に来なさい。」

「承知いたしました。着替えて早急に参ります。」


 リエルは頭を下げて、謁見の間をクレオと共に退室した。


 ※


「陛下、リエル殿下が来られました」


 護衛騎士がテオの部屋の外から声をかける。


「どうぞ。 ちょうど茶の用意も終わったところだ」

「陛下、失礼いたします」


 リエルは頭を下げ部屋に入ると、緊張が走った。

 そこには、皇后アリシアもいたからだ。


「し、失礼しました。皇后陛下もいらっしゃるとは思わず⋯⋯リエルが御挨拶申し上げます」


 アリシアは、リエルを優しい目で見つめる。


「立派になって⋯⋯さぞ亡きマリアン妃も喜んでいるでしょう」

「アリシア陛下?」


 アリシアはリエルに歩み寄り謝罪する。


「今までの私の行動や言動を許してとは言いません。ただ、あなたを傷つけてしまいました⋯⋯どう償ったらいいか。ごめんなさい、ごめ⋯⋯っ!」


 真っ青な顔で、はらはらと涙を流し続け言葉がつまるアリシア。

 リエルは、アリシアの体を支え言葉をかける。


「お止めください。陛下が私に何をなさったと言うのですか?」

「私はあなたをっ⋯⋯!」

「アリシア、そこまでで良い」


 アリシアの言葉をテオが遮った。


「リエル、お前は幼い頃から、私達と見えない壁を感じていたことだろう。どうかこれからの未来で償わして欲しい。誠心誠意、お前を支え続けるつもりだ。」


 皇帝テオまで頭を下げられ、リエルはとまどった。


「私は幼い頃、確かに愛情に飢えていたと思います。しかし、今は亡きナーシャ夫人によくしていただきました。もちろんレオン閣下、キリアン卿、ナユタ嬢も同様です。」


 そこで、リエルは少し間を開けて言葉を続けた。


「何より、私を支えてくれたのは、モモイロノトリのリリィです。またリリィにも会ってやって下さい」


 リエルはアリシアの背中に手を添えて、ソファに座ることを促した。


「せっかくこうしてお茶を用意していただきました。座って話をしましょう。もう未来のことだけ考えましょう」

「リエル、ありがとう。」


 リエルは初めて皇家で家族(・・)という絆を感じた瞬間だった。


「ところで、へヴァン兄上はどうされたのですか?」


 リエルは兄一人この場所に欠けていることに気づく。両陛下は顔を見合わせた。


「へヴァンは少し体調を崩していてな。お前達は二人とも、これから忙しくなる。今は体調を整えておくように。」

「承りました」


 リエルは、母の優しい眼差しに、瞳が潤み視界がにじんでいた。

 

最後までお読みいただきありがとうございます


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