表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第四章 過去編 9年前〜7年前(リリィ登場前)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/73

52.9年前からの戦友


 リエルとクレオが視察から帰城する一週間前。

 皇居では、皇后アリシアが体調を崩したままだった。


「陛下 やはりここにいらっしゃいましたか?」

「あぁ へヴァンか」


 皇帝テオは、寝室で眠っている皇后アリシアに寄り添う。

 彼女は、リエルが次期皇太子に名乗りを上げてから、夜毎(よごと)うなされている。

 今夜も例外ではなかった。


「たすけて⋯⋯へいか⋯⋯うぅ、ご、ごめんなさ⋯⋯」


 うわ言で助けを求め、謝罪をし涙を流す。

 テオは甲斐甲斐(かいがい)しく、布で彼女の涙や汗をふいていた。


「ここでは話しにくいな 。 私の部屋に移動しようか」


 テオはアリシアの世話を侍女にまかせて、第一皇子へヴァンと自室に移動した。

 テオの寝室に入り、メイドがお茶を用意して退出。

 テオとへヴァン二人きりになった。


「徐々に黒魔術が解けてるな」


 陛下が感慨深くつぶやく。


「はい⋯⋯リエルが皇太子継承の決意表明してからですね。心の深層世界にいる母上に力を与えたのでしょう」

「そういえば、南部のノヴァコーストアに向かう途中、一行は刺客に襲われました。ざっと30名ほど。20名くらいは私が始末しましたが」

「⋯⋯20名? なんと⋯⋯また世話になったな。今のリエルが健在なのは、他でもない君のおかげだ。」

「残り10名は視察団を急襲しましたが、ほぼリエルが片付けていました。」

「そうか⋯⋯強くなったな」


 ナユタのおかげでリエル暗殺が未遂に終わった事件は2件ある。

 婚約者選定パーティの毒殺未遂と、市中視察での刺客事件。


 しかし、黒魔術にかかったアリシアにリエル殺害を指示された刺客は、9年間で数えきれなかった。


「あれから9年か」

「はい」


 テオは9年前から、目の前にいる(・・・・・・)へヴァン皇子と何回も密談をし、もはや戦友(・・)のような錯覚に陥っていた




 ※ ※ ※


 9年前、皇居謁見の間。


「へヴァンが池に落ちただと?」


「はい!  今、消えた護衛と共に捜索中です!」


 皇帝テオがシュバルツ侯爵レオンとの謁見中に、その急報が入った。


「私も捜索に加わります!  失礼いたします!」


 レオンは、すぐさま謁見の間を後にする。

 城中が緊迫しパニック寸前だ。

 全員皇居内外でへヴァンの捜索のため、走り回っていた。


(へヴァン、へヴァンが池に……! )


 テオも呼吸が乱れ、足元がおぼつかない。

 護衛に支えられながらも現場に急ぐ。

 混乱する現場。

 レオンが指揮をとる。

 潜水兵を動員し、皇居門や出入口全てを封鎖。

 草の根を分けての捜索で、人が入り乱れている。

 アリシア皇后は、シュバルツ侯爵ナーシャ夫人に支えられていた。

 抱き合いながら怯える幼いリエルとキリアン。

 テオは、クーデターの疑いもあるため、護衛騎士に取り囲まれる。


「陛下、ここは危険です。 部屋で報告を待ちましょう」


 ーー確かに自分がここにいても、騎士達の手間が増えるだけだ⋯⋯。


 テオはふらつくアリシアの肩を抱いて支えていた。


 その時。


 アリシアが大声で笑いだす。


「アハハハハッ!  全部あの子のせいじゃないっ!  まさかへヴァンまでこんな目に遭わすなんて!  ハハッ」


 ーーアリシア? ⋯⋯どうしたんだ? 


 テオは思わず彼女を支えている肩に力が入る。

 狂ったように爆笑し出したアリシア皇后。

 皆の視線が集中する。


「リエルッ! へヴァンをどこにやったの?!」


 アリシアはリエルに向き直り糾弾した。


「え……? ぼ、ぼく……? ぼくは……」

「あなたは存在するだけで、周りを不幸にするのよ! わからないの?!」


 幼いリエルが涙目で彼女の刺すような視線に耐える。


「何をおっしゃるのですかっ?!」


 そんな皇后アリシアに声を荒げた人物がいた。

 ナーシャ夫人だ。


「何があっても、子供にそのような言動は慎んでください!」


 テオは混乱する現場で、別人のようなアリシアを抱きとめた。


 ーーアリシア、こんなアリシアは見たことがない! 息子が行方不明になって、母親が取り乱すのは当然だ。私だけは冷静でいなければ⋯⋯! 


「アリシアはあまりのショックで、自分を見失っているのだ 。リエル、許してほしい」 


 テオは息子リエルに謝罪した。

 そのまま二人は護衛数人と共に皇居内に戻り、報告を待った。


 ※


 二十分後、護衛騎士に扮したスパイの自決の報告が入る。

 これで、へヴァンの捜索が更に困難を極めると思われた。

 しかし、二時間後、部屋の扉が乱暴に開く。


「申し上げます! へヴァン殿下、東の森ビタナ池ほとりにて腕を負傷しながらも発見されました! ただいま、レオン閣下が保護された病院に急行中!」


 へヴァンの無事を知らせる吉報が舞い込んできた。


「良かった!」

「よくご無事で!」


 待機部屋が、わあーーっと人々の歓喜の声に包まれる。


 ーー 発見場所等に疑問も残るが、とにかくへヴァンが生きている!!


 ベッドで横になっていたアリシアは、テオに震える手を伸ばした。


「へヴァンが、へヴァンが見つかったと⋯⋯」


 アリシアは涙を流しうずくまった。

 テオはアリシアの手をきつく握り、彼女の体を支えて起こす。


「神よ⋯⋯エストリ二ア神よ⋯⋯感謝いたします」


 テオは静かに口ずさんだ。

 しかし、この後、彼はへヴァン皇子と再会し絶望するのだった。

 

最後までお読みいただきありがとうございます


感想や評価、リアクションいただけると、とても嬉しいです(.❛ᴗ❛.)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ