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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第三章 次期皇太子妃として

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49.長女アイシスはリエル皇子の側妃になりたい

「リエル殿下にご挨拶いたします。

 ハースト家長女アイシスと申します」


 彼女の格好を見て唖然(あぜん)とするリエル。

 あからさまに寝着の布が少ない。

 目のやり場に困り、護衛に目配せで合図を送る。


(はぁ⋯⋯カーチェナ嬢の寝着を更に切り刻んだみたいな服だな)


「どうぞ、座って」

「はい 、ありがとうございます。 先にお茶を入れますわ」


 アイシス嬢が紅茶を注いでいる間、使用人が入室。

 リエルにストール数枚を渡し退出した。


「アイシス嬢、肩とひざにこちらを。」


 リエルの方から、アイシス嬢にストールをテーブル越しに手渡す。


「すぐ熱くなりますのに」


 そんなことを言いながら、ストールをかけるアイシス。

 輝く豊かな金髪。透き通るような絹肌。

 目鼻立ちがハッキリした妖艶な美女だ。

 アイシスは、ハースト家自慢の娘であった。


「用件は何かな?」


 リエルはアイシスに問う。


「私、リエル殿下をずっとお慕いしておりました」


 アイシスは顔を赤らませ、もじもじしながら、恥ずかしそうに告白する。


「ずっと? 初対面だと思うのだが。」

「6年前、父に皇宮に連れていってもらいました。そこでお見かけして、恥ずかしながら一目で恋に落ちました。へヴァン殿下と仲良く園庭で遊んでいらして、陰からそっと見ておりました」

「そう⋯⋯僕と兄上が仲良く」


 アイシスはゆっくりとストールを取って立ち上がり、リエルに近づいて話かける。


「殿下は更に聡明で美しくなられました。どうか私の長年の想いを受け止めて下さいませ。」


 リエルの隣に座り、肩を密着させ、豊かな胸元を見せつけるようなポーズを取る。

 リエルを濡れた眼差しで見つめるアイシス。


 するとーー。


「動くなっっ!」


 突然、リエルが叫ぶ。

 その声にアイシスは体を縮める。

 すると、リエルは彼女の胸元近くに、短剣を向けていた、


「な、何をなさいます!」


 彼女は短剣を見つめ、恐怖で声が震えている。


「私は常に刺客に狙われている 。信頼している者以外は警戒心が解けない。悪いが、君のことは全く信用していない。せめて、向かいの席から動くな。」


 短剣をつきつけたまま、低い声で警告するリエル。


「し、失礼いたしました!」


 アイシスは慌てて、ソファの元の位置に座リ直す。


(な、何よ! これじゃあ甘い雰囲気にもっていけない ! どうすれば⋯⋯アルコールを使おうかしら)


 アイシスは、リエルを攻略する方法を模索する。


「君もカーチェナ嬢も同じだね」

「私が妹と一緒?」

「君の方が上手に社交界渡っていけそうだ。しかし、嘘をつくのはよくない 。情報収集が足りないな。」

「嘘?」


(八年前から兄上と遊んだことなど一度もない 。ただ、彼女が幼い初恋(・・・・)というストーリーを付け加えたかっただけだ。)


 リエルは、アイシスにはっきり告げる。


「僕は側妃はとらない」

「はい?」

「ハースト家親子には毅然(きぜん)とした態度を取った方が良いだろう 。君たち姉妹は自分を大切にしなさい 。 私が言えるのはそれだけだ。」

「でも、せっかく遠い南部までいらしたので、ゆっくり私と話を」


 アイシスは、懲りずにテーブルに置いたリエルの手に触れようとした。


 ⋯⋯ガンッッーー!!


 何かがぶつった衝撃音。


「失礼いたします!  どうされましたか?」


 カノ卿が扉を開けて、リエルに駆け寄る。

 すると、テーブルに短剣が突き刺さっている。


「私に触るなと言ったはずだ!」


 さっきまでの優しい表情ではなく、険しい表情のリエルに、アイシスは身の危険を感じた。


「も、申し訳ございません!」


 彼女は真っ青になってうなだれる。


「アイシス嬢のお帰りだ。 部屋まで丁重にお送りするように」

「かしこまりました」


 カノ騎士は、他の護衛に令嬢の付き添いを命令。

 アイシスは、力ない足取りでリエルの部屋を退出した。

 思わず、リエルはカノ卿に愚痴をこぼす。


「カノ卿、僕は疲れたよ」

「視察の度に起こることだと思われます。気が抜けませんね」

「彼女らは悪くないし、カヤン伯爵も悪くない 。やはり女性の経済力が男性に依存するしかないからだろう 。」

「致し方ないのではありませんか?」

「ただ、アイシス嬢にはハッキリした態度を取った方が良いと判断した。」

「この度は殿下もお疲れでしょう。 私は業務に戻ります 。お休みなさいませ。」

「ありがとう。」

 カノ卿が退出し、リエルはまた窓辺で空を見上げた。


 ーー他の令嬢と接した方が、ナユタの存在の大きさを痛感する。夜にリリィにも会えない。ナユタは何をしてるんだろう。リリィにも会いたいーー


 リエルはベッドに潜り込む。

 リリィとナユタに想いを馳せながら、無理やり目を閉じた。


 

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