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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第三章 次期皇太子妃として

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48.次女カーチャナはリエル皇子の側妃なりたい

 視察団訪問を歓迎した(うたげ)の後。

 ハースト伯爵家6人全員で家族会議を開いていた。

 当主カヤンは、それぞれに指示を出す。


「ひとまず明日、リエル殿下とクレオ閣下は領地視察をされる。 皆、失礼のないように」

「はい、 父上」

「それから⋯⋯アイシスとカーチャナ、わかっているな?」


 長女アイシスは父カヤンにこやかに返答する。


「はい。なんてリエル殿下は、美しい方なのでしょう。『不吉第ニ皇子』と言われてますけど、皇族には変わりありませんわ 。 必ず見初められてみせます」


 次女カーチャナは、しどろもどろに応える。


「わ、私はアイシスお姉さまと違って、まだ子供ですし⋯⋯」


 父カヤンは冷静にカーチャナに話しかける。


「リエル殿下の嗜好(しこう)がわからんからな。うちはアイシスは(つや)があるし、カーチャナは愛らしさがある 。 どちらかが殿下に気に入れられれば、側妃に希望がもてる 。 頼んだぞ。」

「安心なさって下さい。 きっとリエル殿下の心を動かしてみせます」

「頼りにしてるぞ 、アイシス」



 ※ ※ ※


 南部の夜はあたたかい。

 豊かな木の葉たちが風ですれ、ざわざわと音を立てていた。

 リエルは窓辺から外をぼんやり眺める。

 リリィを窓辺で待つ夜。

 これがもう7年もルーティンになっていた。


(リリィは元気だろうか。)


 その時。

 扉前で待機しているカノ卿の声が響く。


「リエル殿下、お客様がお見えです」

「誰?」

「カーチャナ嬢でございます」


(カーチャナ⋯⋯? ああ、確かハースト家の次女。無下(むげ)に帰すわけにもいかないな。)


「わかった、通して」


 リエルは、護身用に短剣を寝着に忍ばす。

 カーチャナ嬢が部屋に入ってきた。


「夜分に失礼いたします。 リエル殿下に御挨拶いたします。 カーチャナ・ハーストと申します。殿下の貴重な時間をいただき光栄でございます」

「いえ 、まだ寝るには早いから大丈夫 。 どんな用件かな?」


 カーチャナ令嬢は顔が真っ赤だ 。

  唇も青白く震えているように見える。


「せ、せっかく遠くからお越しなので、お茶でもご一緒にと思い⋯⋯」


 メイドがお茶の用意をした後、部屋を出ていった。


「とても一緒にお茶を飲みたいように見えないが」

「い、いえ⋯⋯」


 震えている令嬢を哀れに思い、とりあえず座るように促す。

 カーチャナは、ティーカップにまともにお茶を注げそうもないほど、身震いしている。


「そんなに緊張しないで」


 リエルは見ていられないので、お茶を代わりに注いだ。


「さて」


 少し、リエルは間を置いた。


「伯爵の命令かな?」

「は、はい⋯⋯い、いいえっ! 私の独断でここに伺いました」

「そう 、令嬢はいくつになった?」

「14でございます」


 リエルはにっこり笑ってストールを2枚渡す。


「これを肩とひざにかけて」


 カーチャナ令嬢の服装は肌の露出が多い。


(かわいそうに⋯⋯。)


 リエルは幼い令嬢を思いやった。


「今日、孤児院を訪問したのだが」

「は、はい? 孤児院ですか?」

「あなたは似てるね」

「誰に?」

「子供達に」


 カーチャナは、どういう意味か理解できず、きょとんとした表情をしている。


「悪い意味ではない、子供は皆そうだよ。大人に褒められたいんだ。僕もそうだよ。」


 リエルはクスクス笑った。


「カーチャナ嬢は将来何をしたい?」

「はい、ハースト家の繁栄の(いしずえ)となるような婚姻をすることです 。そのために、素敵なレディになりたいです」

「それは良い夢だね。 」


 カーチャナ嬢は、リエルが威圧的な人物ではないとわかり、少し緊張が解けた。


「何か得意なこととか趣味は?」

「私は読書が好きです。 絵画鑑賞も」

「文学や芸術に興味があるんだね 。 自ら執筆したり、絵を描いたりはしないの?」


 カーチャナ嬢はそこで少し黙り込んだ。


「どうしたの?」

「いえ、今は淑女(しゅくじょ)になるための勉学やマナー習得を優先しています」

「⋯⋯そう」


 カーチャナは三十分ほど会話をして、リエルの客間を退出。その様子を、通りがかった大公クレオは偶然目にする。


 ーー殿下も大変だな。おちおち寝てられない 。しかし、カーチャナ嬢は幼すぎる。伯爵も必死だな、まだ長女もいるし、リエル殿下はどう切り抜けるんだろうか。ーー


 リエル殿下のお手並み拝見とばかりに、大公はこの問題は静観を決め込んだ。



  ※


 翌日。

 リエルとクレオは、領地の復興が遅延している地域を中心に視察。

 カヤン伯爵の政治は、市民に寄り添っていると感じる。

 公共施設も徐々に復興し、伯爵の評判も悪くない。

 被災地もそんなに悲壮感はなかった。


(悪い領主ではないな。)


 リエルのハースト家のカヤン伯爵の印象は、むしろ良い方だ。

 それでも、幼い娘を献上するような真似をすることに辟易(へきえき)としていた。

 良い政治をする領主でさえ娘を差し出す。

 それが貴族の常識(・・)なのだろう、とリエルは半ば諦めていた。


  ※


 それから数日後。

 就寝前、いつものようにリエルが客間の窓辺にたたずむ。

 そして、部屋の前で護衛しているカノ卿から、また声がかかる。


「伯爵の長女アイシス嬢がいらっしゃいました」


 リエルはため息をついて、部屋に通すようにカノ騎士に指示をした。

 

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