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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第三章 次期皇太子妃として

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45.リリィとハンナとケンタ

 【クレオ・デ ・ナッツ大公】


 子爵から戦功のみで、大公の地位まで上り詰めた英雄。

 東帝国騎士団の総括リーダー。

 その数7万⋯⋯ここ10年で規模が拡大。

 これは、クレオの求心力に他ならなかった。


 そして、確かに大公家といえば、皇位継承権三位であるのは間違いない。

 レオンはクレオに謝罪する。


「ただただ皇子二人どちらかの問題だと考えていました 。失礼いたしました」

「そりゃそうだ 。 若い皇子が二人いたら、そちらが注目されるだろう。私は既婚者だし。」


 クレオは一息ついて、紅茶カップに口をつける。


「皇子二人が不在になる⋯⋯とは思いたくはない。私は家庭もうまくいっている。万が一継承権が回ってきたら、離婚を強要され、ナユタ嬢と婚姻させられてしまう。」

「寒気がしますね。」

「私が、君の義理の息子になるとか真っ平ごめんだ 。私には、ナユタ嬢と年がかわらない息子もいるのに」

「しかし、このままだと9割方へヴァン皇子が皇太子に選出されるでしょう」


 レオンは、リエル皇子が不利な状況を伝える。

 クレオは、腕組みをして、顔を上に向けて考えを巡らせる。


「あまり皇室の権力争いに加担したくないが、このままではフェアではない。せめて、へヴァン殿下とリエル殿下は同じ条件で争わなくては」


 レオンもその点は同意だ。


「どうされるのですか?」



 ※ ※ ※


『ハンナ、久しぶりーー!』


 友達のハンナに会えて、嬉しそうに羽をバタつかせるリリィ。


『聞いたわよ! 本当に『人間』になっちゃったのね!』

『まあね、私も良く分からないけど』


 モモイロノトリの二羽は仲良くくるみを食べる。

 前日にナユタが侯爵家の庭に、布で隠すようにくるみを置いていたのだ。

 早朝、ナユタはリリィになって、ハンナと雑談しながら一緒にくるみをつついていた。


『最近つまんない。リエル皇子と会う時間が少なくって 。人間の姿では全く会えないし。』

『何それ、 本体が人間になった方が会いにくいとか。』

『なんか、私が次期皇太子妃になるらしいよ。』

『ジキコウタ⋯⋯?』

『う〜〜ん、東帝国で二番目に偉い女性だよ。』

『へーー、なんだかすごそうだね。』


 世間話をしていると、もう一羽モモイロノトリが降り立った。


『あれ、ケンタじゃん!  元気だった?』


 ナユタが懐かしそうに声をかけた。


『あ、うまそー! 俺にもくれよ!』

『はい 、私もういらないから。』


 ナユタはケンタにくるみを譲る。

 ケンタは、それを慌てて口に入れた。

 空腹が多少満たされると、お喋りを始める。


『お前 、とうとう本体が人間(・・・・・)になったんだってな』

『そうだけど、変わり身はできるんだよ 。本体がモモイロノトリ(・・・・・・・・・・)の時と何も変わらないわ』

『変わるよ! もう俺と(つがい)になれないじゃんか!』


 ナユタはケンタを見つめて、真剣な口調で話す。


『それは鳥のままでも無理だったと思う 。 皇子様しか好きじゃないし』

『そんなの関係あるのか?』

『あるよ。私は昔から好きな人じゃないと(つがい)になんてなれないもの』

『⋯⋯お前は最初から人間だったのかもしれないな』


 ケンタがなぜか悔しそうな表情を見せる。


『俺だって、毎年お前とどれだけ(つがい)になりたかったか 。 でも、お前は人間ばかりに夢中で。俺は雛を育てたかったから、他のモモイロノトリと(つがい)になったんだ!』

『ごめんね 。でも、親鳥にはなれてるんでしょ? これからもかわいい雛達育てて。』

『ちょっとっ! 私もいるんだけどっ!』


 ハンナがまるで痴話喧嘩(ちわげんか)をしているような二羽の会話に割ってはいった。


『ごめんごめんっ!』


 ナユタは拗ねたハンナに笑いながら謝罪。


『私もう帰るわ、 監視役がまた部屋をのぞくからさ。』

『大変だね 、またねーー』


 ハンナはナユタに羽を広げて振った。

 その後すぐに、ケンタに向き直る。


『あんたもしつこいねぇ! 嫌われるよ!』

『俺は、ずっとリリィと(つがい)になりたかったんだ ! 今だって諦めるつもりはない』

『リリィは、鳥の(せい)を捨てるほど皇子様を好きなんだよ 。あんたにその覚悟さえないでしょ、諦めな!』

『鳥の(せい)⋯⋯人間か⋯⋯。』


 ケンタはしばらく口を紡いだ。


『⋯⋯じゃあなハンナ。』

『? ⋯⋯またねケンタ。』


 ケンタは(せわ)しなく空へ飛び立った。

 ハンナは、ケンタの後ろ姿を見送り、またくるみをつつく。


(⋯⋯何もしないよね? あいつ気の小さい鳥だし 。野生動物っぽくない! )


 ふと、ハンナは、よくくるみを食べていたアンナを思い出した。


(アンナ⋯⋯ナユタを見守ってあげてね。)


 静かに亡きアンナに心の中で語りかけた。

最後までお読みいただきありがとうございます


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