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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第三章 次期皇太子妃として

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44.リエルの新しい味方

 シュバルツ家低宅。

 ナユタは、皇室騎士団の騎士数名に24時間体制で見張られていた。

 彼女が屋敷の中を移動するだけでも、護衛がついてくる。


 ーー紋章が表れてから、リリィとしてもう一週間も皇子様の元へ行けてない。これでは夜に一時間抜けるのが精一杯かなぁ。今日は決行してみよう。



 ※ ※ ※


 ここは、皇室専用の会議室。

 皇室高官数名、シュバルツ家関係者、教会神官達が連日会議を重ねている。

 議題は、当然「次期皇太子妃公表スケジュールについて」。

 このニュースの発表する日時や順序など事務レベルでの協議に入っていた。



 ※ ※ ※

 朝。

 リエルは、自室の窓から空を見上げる。

 様々な小鳥のさえずりから、リリィの姿を探す。


(リリィ、どうしたんだろう。一週間も来てくれない。)


 今や次期皇太子妃は決定した。

 次は、皇太子がへヴァンかリエルかどちらかが焦点。

 しかも、急いで選ばなければならない。 

 リエルが、ナユタと婚約するには、絶対に皇太子(・・・)にならなければならない。


(どうしよう、どうしたら⋯⋯。)


 皇居内は、使用人が毎日会議参加者のための食事や世話に追われている。

 そんな中、キリアンがリエルを訪ねてきた。


「へヴァン殿下が明日話がしたい、とおっしゃっています」

「では、明日夕食を共にしましょう、と伝言してくれ」

「かしこまりました」

「ところで、ナユタ嬢は⋯⋯元気か?」

「はい 、今の状況にとまどってはいますが」


 リエルは、ただただナユタが気がかりだった。

 あまり重荷になってほしくない。


「皇子の専属騎士を続けたかったそうです。ですが、自分の身を守れる次期皇太子妃なら、護衛も安心ですよね」

「⋯⋯キリアン」


 リエルはキリアンの心情を思いやる。


「皇子も急な行程が増えて、お忙しいでしょう 。それでは、明日の夕食の件承りました 。お体に気をつけて下さい。」


 ※ ※ ※


 夜、リエルが自室でバスローブから部屋着に着替えていると、コンコンと窓をつつく音。

 リエルは表情が一変し、嬉しそうに窓辺に駆け寄る。


「リリィっ! 心配したんだよ!」

『きゃアァぁぁーーッ!』


 リリィは叫び声を上げたが、もちろん人間にはピィピィとうるさく鳴いてるだけに聞こえる。


『皇子っっ! 服を着てくださいっ! 服をっ!』


 リエルは沐浴直後でバスローブ姿。かなり前がはだけている。リリィは器用に羽で目元を隠し、ピィピィ鳴いていた。


「なんだ? 着替えを促してるのかな? 相変わらず面白い鳥だなぁ」


 リエルはいそいそと寝着を着る。


「それよりどうしたの? 最近、忙しかった? 無理に来なくてもいいけど⋯⋯すこしだけでも顔を見せに来てほしいな」


 リエルはリリィの大好物のリンゴで、もてなした。


(護衛が一時間に一回定期的に部屋を突然開けるから⋯⋯ここには40分くらいしかいれない)


 リリィは大きくため息をつく。


「リリィ、僕は絶対に皇太子にならなきゃいけなくなった」

『ピィ?』

「はじめは、自分の命やリリィを守るために皇太子になる決意をしたけど⋯⋯ナユタと婚姻するためにも皇太子にならなくちゃ」


(そ、それはつまり……(ナユタ)(つがい)になりたいと? )


 リリィはくちばしに(はさ)んでいたリンゴを落とし、動きが固まった。


「リリィ?」


 リリィは思わず窓をつついて、リエルに開けるよう指示する。


「リリィ、もう帰るの?」


 何回も首を縦に振り、うなずいたような仕草を見せた。

 窓を開けると、勢いよく飛び出す。

 リエルがリリィの遠くなった後ろ姿を見つめながら、つぶやく。


「……リリィも忙しいのかな」



 ※ ※ ※


 リリィは少し開けていた窓から自室に入り、ナユタに戻った。とりあえず羽毛ワンピースから部屋着に着替える。


(よく考えると、私はもう⋯⋯本体が人間になったから、人間と(つがい)なれる。雛を産むことも許される)


 ナユタは、今やリエルとの恋愛を夢見る16歳の少女となった。

 皇子の皇太子になりたい理由を思い出しては、顔に熱が集まる。

 とりあえず、ベッドにもぐり読書していたふりをする。


「ナユタ嬢、お茶をお持ちしました」

「どうぞ」


 メイドがワゴンを押して入室。


(はあ……本当に一時間おきに誰かしら様子を見に来る……ハンナにも会いたいのに。今度、朝一ハンナに会おう。護衛も朝4時とか油断してるだろう)



 ※ ※ ※

 翌日、会議後。


 ナッツ大公クレオは、後輩のレオンと二人でお茶を飲んでいた。建国以来の神事に直面し身震いする。


 ーー エストリニア神に次期皇太子妃と認められた令嬢が現れるとは⋯⋯


「侯爵も驚かれたことだろう」

「もう毎日目まぐるしく感傷に浸ってる暇もありません 。当人が一番とまどっていると思います」

「こういうことが起こると、二匹目のドジョウをすくおうと、貴族や小金持ちの商人⋯⋯はたまた平民までが孤児院の女児をこぞって養女にしだす 。 ナユタ嬢のように、女騎士に育成し、奇跡を起こそうとするだろう。公表する前に、法整備を急がねば」

「それが終われば、エストリニア神の神託を(おおやけ)にするのですか?」

「そうだな⋯⋯喜ばしいニュースではある。ナユタ嬢は負担だろうが」

「本人は専属騎士のままでいたかったみたいです」


 クレオはそれを聞いて高らかに笑った。


「ハハハ! やっぱりナユタ嬢は最高だ」


 ひとしきり笑った後、クレオはレオンにたずねた。


「真面目な話⋯⋯どうなんだ?」

「はぁ? 何がですか?」

「ナユタ嬢は、へヴァン殿下とリエル殿下どっちに嫁ぎたいんだ?」

「嫁ぐ⋯⋯ナユタはもうずっとリエル殿下に好意をよせています。たぶんリエル殿下も⋯⋯両想いだと」

「そうか、じゃあ現状は厳しいな。 皇后陛下はへヴァン殿下をもちろん皇太子に推しているし、あの御方は、ほとんどの貴族連中を手中に納めているじゃないか」

「そうですね」 


 レオンもこればかりは口を挟みようがなかった。

 娘の意向を尊重してやりたいが、ただでさえリエル殿下は側妃の子。

 クレオは少し間を置いて、口を開いた。


「うちも他人事ではないからな」

「どういうことでしょう」

「私が皇位継承権第三位であることはご存知かな?」


 レオンは、飲みかけのお茶を吹き出しそうになった。

 

最後までお読みいただきありがとうございます


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