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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第ニ章 騎士として

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39.ナユタとリリィが似ている件

「リエル皇子殿下に御挨拶申し上げます。うちのナユタがお世話になっております」

「いや、私の方がナユタには負担をかけっぱなしで、立派に務めを果たしてくれている」

「ありがたいお言葉でございます」


 リエルは、レオンと形式的な挨拶の後、ナユタに話しかけた。


「……ナユタ、きれいだ 本当に」


(き、きれい……)


 ナユタは一気に顔が赤くなり心臓が跳ねた。


「あ、ありがとうございますっっ!」


 ナユタは片手で顔を覆い、そのまま顔だけ後ろを向き、もう一方の手で皇子を叩くような仕草をした。


「これ、よしなさい!」

 レオンに注意され、ナユタは我にかえる。


「東帝国一の美女が台無しだ」

 レオンは呆れて、娘を叱責しっせきした。


「実際、殿下を叩こうとしたわけではありません。叩くマネをしたのです」

「距離が近かったら、絶対叩いていただろう」


 レオンは、ナユタに言い返す。

 そして、二人はリエルに向き直り一礼。


「リエル殿下、これで失礼いたします 」

「ありがとう、この後も楽しんでいってくれ」


 レオンはまだ顔を赤くしているナユタを促しながら、挨拶の列から立ち去った。

 リエルは、ナユタが照れた時の仕草を思い出していた。


 ーー なんだろう⋯⋯この既視感。照れながら顔を隠して後ろを向き、反対の手で僕をバンバン叩く⋯⋯。


 そして、彼は完全に一致した場面を思い出す。


 ーーあ、そうだ! リリィの照れ方と一緒だ!  なんだかリリィとナユタってたまに反応が似てるんだよな。


 リエルはナユタにリリィを会わせる計画を立てなければ、と再考し始めた。


 ※ ※ ※


 一通り挨拶を終え、ダンスや食事を楽しんでいる貴族達。

 そんな中、執事が皇族にパーティーの進行状況を報告していた。


「皇子の誕生パーティーはこれまで予定通り進んでおります 。急遽、欠席されたのは⋯⋯」


「⋯⋯誕生日パーティー?」


 突然、アリシア皇后が低い声でつぶやいた。そして、執事にたずねる。


「誰の?」


 皇后は口角を上げて怪しく微笑む。テオ皇帝、へヴァン皇子、リエル皇子他使用人達も、ただならぬ空気を感じ取った。

 そして、皇后はへヴァン皇子の顔を凝視して口を開く。


「あなた⋯⋯誰⋯⋯?」


 


 ※ ※ ※

 パーティーは無事幕を閉じた。

 シュバルツ家の面々も馬車で帰路についていた。


「ナユタ、踊ってしまったな」


 キリアンが疲れた様子で、ナユタに話しかける。


「どうでしたか? おかしくなかったですか?」

「まあ、初めてにしては上出来だ 。さすが私の娘だな」


 一通り、ナユタの初めてのダンスの話に花が咲いた後。

 キリアンがレオンに違う話題を切り出す。


「父上、パーティー途中で皇后陛下が退席されましたね」

「ああ、あれはどうしたんだ?」

「僕の聞き間違いかもしれないのですが、へヴァン殿下のことが、わからないようでした」

「どういうことだ?」

「殿下に対して、素性を訊ねたのです。あなた、誰? 、と」


 理解不能。

 誰も言葉を発しない。


(なんだろう? 記憶が混乱されたのかな? )

 ナユタはそう解釈した。


「一時的に記憶が曖昧あいまいになったのかなぁ。そうだと良いのだが」

 レオンは、ナユタと同じような見解だった。


「その時、皇帝陛下も退席されましたね。 皇后陛下に付き添われて」

「また皇帝陛下だけだが席に戻られたし、皇后陛下も落ち着かれたのだろう」


 語り合っている内に、馬車はシュバルツ家の邸宅に到着した。



 ※ ※ ※


 皇后アリシアは睡眠薬を服用し、よく眠っていた

 使用人を下がらせ、皇帝とへヴァン皇子がベッドに付き添う。


「リエルのあの宣言から、この調子ですね」


 へヴァンはベッドのサイドチェアに座る皇帝に話しかけた。


「ああ⋯⋯覚醒ももうすぐかな⋯⋯長かった」

 皇帝テオは皇后アリシアの寝顔を眺めながら、つぶやいた。


「このまま何事も起こらなければ良いが」

 しばらく、沈黙が流れる。



「君は⋯⋯どうするのかね?」


 テオはへヴァンに問う。

 へヴァンは皇帝の鋭い眼をじっと見つめた。


「⋯⋯僕はやっと自由になるだけですよ」

「本当に良くやってくれている 。 一生安泰に暮らせるくらいの報酬は用意しよう」

「⋯⋯俺は報酬のために、第一皇子という存在になったのではありません」


 テオは答えは分かっているが、あえてへヴァンに問う。


「⋯⋯()()()()()()か?」



 ※ ※ ※

 リリィは、人間になってどんなに忙しく活動した日でも、夜はリエルのの部屋を訪れた。

 ただ、今日はさすがのリリィも眠気に負けそうだ。


「眠い? 今日はここで泊まったら?」


 リリィは眠気眼ねむけまなこで、リエルの声に反応し彼の指に止まった。

 その時。


『ピィッ?』


「どうした?」


(なんか背中がむずむずする。なんだろう最近、痛みが走ったり、違和感があったり⋯⋯。)


 心配そうな皇子の顔を見て、リリィは慌てて平静を装う。


(まだ違和感があるけど、明日もあるから⋯⋯少しだけここで休んでから帰ろう。)


 リリィは一時の休息のため、静かに目をつむった。

 リエルは、眠るリリィを見つめながら、今日の皇后アリシアの言葉を思い出す。


 ーー『あなた⋯⋯誰なの?』ーー


 あんなに溺愛しているへヴァンに問いかけた言葉。


(耳を疑った。何か心の病だろうか。)


 パーティーの後、皇后陛下を見舞おうと足を運んでも、また皇家でリエルだけ入室できなかった。


(何が起こっているんだろうか?)


 リエルは、目を(つむ)るリリィの寝顔に癒されながら眠りについた。

 

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