不可能の証明
俺は計測器を握りしめたまま、化学室までの道を歩きながら
阿部くんと水天宮の出来事を思い出す
『来た…!』
『あ、阿部くん、あれ!』
『えっ嘘…
やば…こっち来る…!?』
『うわっ…!』
『阿部くん…今の…』
水天宮と阿部くんの動き…
演技…とは言いずらい
それに…ラップ音
どれも偶然では説明できない
しかし…確かに計測器には何も反応がなかった
唇を噛む
証拠がなければ…霊的現象とは言えない…
だが…
もし本当に…霊と対峙していたとすれば…
俺は、霊なんて見えたことは一度もない
でも、未知のものを知るのが楽しかった
小学生の頃は、図書室で怪談本を読み漁って
ノートに「学校の七不思議まとめ」とか
「都市伝説の起源考察」とかを書いていた
友達に話すのも好きだったけど
「ねえ知ってる? このトンネル、昔──」
そう言いかけた瞬間
いつの間にか、返って来るのは笑い声になった
「また始まったよ、霞が関のオカルト話」
「そんなの信じてんの? 子どもかよ」
「霊なんていねーよ、バーカ」
親に話しても同じだった
「またそんなことを…
現実と空想の区別くらいつけなさい」
俺はただ、知識を語りたかっただけなのに
知識を共有したかっただけなのに
…証明してやる
見えないものは全部間違いだって
科学で証明して、俺の方が正しいって…
認めさせてやる
証拠がなければ…霊的現象とは言えない
だがしかし…
証明できないだけで、確かにあるものだとしたら…
俺は…
小さく息を吐いた
証拠がなければ断定はできない
だが
阿部くんの中で何かが起きているのは、確かだ




