再現実験 1
化学室の前に立つと、扉の向こうから機械音が微かに聞こえた
水天宮先輩は扉を開ける
「部長、連れてきたっす」
その瞬間、霞が関先輩が振り返り、白衣の裾を揺らしながら近づいてきた
「来てくれてありがとう、阿部くん」
「いえ…」
霞が関先輩は椅子を引き、俺に座るよう促す
水天宮先輩は部屋の隅に立ち、落ち着かない様子で俺を見守っている雰囲気
俺は椅子に座り、胸の奥のざわつきを押し殺す
化学室の空気が、静かに張りつめていく
「早速だけど、昨日の件…水天宮から聞いたよ
霊と会話していたって
それも…安倍晴明と」
白衣を着た霞が関先輩の目は、確かめたいという強い意志が帯びているのを、ひしひしと感じる
「解明する価値があると、俺は思う
今日の放課後、昨日と同じ条件で再現実験をしたい
協力…してくれるか?」
俺は霞が関先輩を真っ直ぐ見た
「やります」
霞が関先輩の眼鏡の下の目が、わずかに輝く
「ありがとう
では…」
と言うと、黒板前の壇上?に上がって、チョークで字を書く
『安倍晴明顕現・再現実験プロジェクト!』
霞が関先輩が、手のひらを天井に掲げ
眼鏡をフレミングの法則の手でくいっと上げると、レンズが反射した
「阿部くんと安倍晴明の邂逅…開始する!」
もはや、霞が関先輩の謎テンションとポーズに驚かない自分がいる
冷めた目を向けて霞が関先輩を見るけど
水天宮先輩も同じ顔をしていた
「では、放課後
昨日と同じ階段の踊り場で実験を行う
阿部くん、水天宮
二人とも準備しておいてくれ」
「はい」
水天宮先輩が返事をし、俺も小さく頷いた
霞が関先輩は満足げに眼鏡を押し上げる
「科学で証明できない現象はない
必ず何かがあるはずだ
それを突き止めるのが科学部の使命だ」
放課後
夕陽が差し込む踊り場は、昼間よりも静かで、どこか空気が薄いように感じた
霞が関先輩は計測器を床に置き、配線やスマホを確認しながら言った
「よし
時刻はそろそろ
計波も安定している」
水天宮先輩は俺の隣に立ち、落ち着かない様子で周囲を見回している
「…なんか、来そうな気がする」
俺は深く息を吸う
霞が関先輩が静かに言った
「では、阿部くん
昨日と同じように…
その時を思い出してみてくれ」
俺は胸ポケットからお札を出すと、踊り場に置き、目を閉じた
晴明の声…
表情…
感触…
胸の奥が、ズキッと痛む
目を開いて、昨日と同じようにお札を拾ったその瞬間
空気が、ひゅうっと冷えた
水天宮先輩が叫ぶ
「来た…!」




