霊感
階段を降りながら、俺は隣を歩く水天宮先輩に尋ねた
「霞が関先輩の話って、何ですか?」
水天宮先輩は一瞬言葉に詰まったような感じで、視線を前に向けたまま、小さく呟いた
「昨日、阿部くん…
安倍晴明と話してたよね」
え…
心臓が跳ね、思わず足を止めた
水天宮先輩も同時に足を止め、視線を逸らした後、俺を見た
「俺、霊感があるから…
気配を追えば、霊がどこにいるか…わかるんだ」
「水天宮先輩も…霊感があるんですね」
水天宮先輩は苦笑いを浮かべる
「まあ
人にはあまり言ってないんだけど…
でも昨日のあれは、どうしても無視できなかった
それで、その…安倍晴明のことを霞が関部長に話したら
再現実験したいって言われて…」
水天宮先輩は申し訳なさそうに眉を下げた
「嫌だったら、断っていいから
俺が勝手に言っちゃっただけで…」
首を振る
「いいですよ、別に」
「え…」
水天宮先輩が驚いたように目を見開く
「むしろ…聞きたい」
再現実験をして…
もし、安倍晴明とまた会えたら…
「なんで俺が…安倍晴明の結界術なんて使えるのか
なんで…俺なのか」
それを、聞きたい
水天宮先輩の表情が変わった
真剣で、どこか怯えたような、そんな顔
そして震える声で言った
「阿部くん…
君、安倍晴明の末裔なんだよ」
「え…?」
末裔?
俺が…?
水天宮先輩は、階段の踊り場で立ち止まり、俺を見つめた
「阿部くん…清明と会話してたよね
それだけじゃない
清明は、阿部くんに触れてた」
心臓が脈打つ
「俺の見間違えだと思いたかった
でも…霊が人に触れるなんて、普通じゃない
だから…」
水天宮先輩は、息を吞むように言葉を絞り出した
「阿部くんは…
清明の血を引いてるんじゃないかって」
いや…そんな…
俺が末裔なんて…そんな事…
今まで生きて来て、家がそう言う家系だ、とか言われたことないし
聞いた事もないし…
…いやまあ、聞いた事がないから…結局、わからないんだけどさ
でも仮にもし、俺が末裔なら…
清明と会話して、清明の力だとか言う結界術が使えて、謎の影が消えた理由や原因の説明も付く…
そして、清明と出会った理由も…
水天宮先輩が俺の肩に軽く触れた
「阿部くんが信じられない気持ちや、怖い気持ちもわかる
でも、俺達科学部がいるから」
真っ直ぐ俺をみる水天宮先輩から目を伏せた
「ありがとうございます」
水天宮先輩は小さく頷き、階段を降り始めながら振り返る
「行こ
霞が関部長が待ってる」
「はい」
深く息を吸い、その背中を追った




