結界術
築地さんは、俺の問いにすぐ答えず、一度だけ深く息を吸ったよう
風が吹き抜け、屋上の空気が少し冷たくなる
「結界術っていうのはね…」
築地さんは、俺の手元…さっき光を描いた指先を見つめながら続けた
「霊的なものを遮ったり、弱らせたりする術のことだよ」
「霊的なものを…遮る?」
「うん」
築地さんは、俺の動きを思い返すように手を動かした
「阿部くんが空中に描いたあの図形…
あれは“式”って呼ばれるもので、清明が使っていた結界術の基本形なんだよ」
「式…?」
「うん
術者が“意識”で描く魔法陣みたいなもの
本来は修行しないと描けないし、霊感があっても普通は…」
築地さんは、少しだけ声を落とした
「でも…阿部くんは無意識で描いた
それも、清明の式そのままの形で」
俺の背中に冷たい汗が流れる
それって…もしかして…
「恐らく…
清明が阿部くんに触れた時、”術の型”が流れ込んだんだと思う」
「流れ込んだ…」
「恐らくね
清明は、阿部くんの中に“術者としての素質”をきっと見たんだよ
だから…呼び起されて、術が使えるようになったのかもしれない」
胸がドクンと跳ねた
築地さんは、優しく微笑む
「結界術はね、守るための術なんだよ」
「守る…」
「うん
攻撃じゃなくて、悪いものを寄せつけないための力
阿部くんが今使ったのは…自分を守るための結界」
俺は…自分を守るために…あれを…
そう言う事だったのか
と、そこまで話を聞いて、ふと気付く
「築地さんって、やけに詳しいね
陰陽師の漫画とかアニメ、好きなの?」
「それは…」
築地さんが口を開くと同時に、背後の屋上の扉が、ギィ…と小さく軋んだ
振り返ると、そこには、水天宮先輩が立っていた
「阿部くん
霞が関部長が呼んでる
話があるって」
霞が関先輩が…?
築地さんを見ると、こくりと頷いた
「ごめん、また…」
戸惑いながらも歩き出す




