視える者
「阿部くんのその力…
私もだけど…
見えることも悪くないって思うんだ」
ふと疑問に思い、築地さんを凝視する
「見えることが、悪くない?」
「うん
見える事で、見えない人の役に立つと思うから」
見えない人の…役に立つ…?
「昨日も少し話したけど
小さい頃から見えてて…でも、誰にも信じてもらえなかった
だから見えても…誰にも言わないようにしようって、決めたんだ」
築地さんは、少しだけ笑った
「でも…
見える事で、困ってる人を助けられた時…
見えてよかったって思えたんだ」
見えて…よかった…
胸がチクリと痛む
俺は…
見えるって言ってた友達を笑ってたのに…
築地さんは、誰かを助けるために…ずっと一人で向き合ってきたんだ
築地さんは、俺の胸ポケット…護符になったお札を見つめた
「阿部くんの力は
きっと、誰かを守れるよ」
誰かを…守る…
「オカ研は、そういう人の、ちょっとした困りごとの相談を受けてたりするんだ
気が向いたら、阿部くんも遊びに来て」
築地さんが微笑んだら、何故か、少しだけ肩の力が抜けた
悩み相談みたいな感じなんだろうか…?
でも、もし…
見える事で、誰かの役に立つことが出来るのならば…
確かにそれは、悪い事だけではないのかもしれない
と言うか、悪い事では…ないのかもしれない
そう思った瞬間だった
ふいに、風が止む
いや、止まったというより、押しつぶされたような圧が空気に満ちる
「築地さん、なんか…」
築地さんの表情が一瞬で強張ったよう
「うん…来てる」
これ…昨日の黒い影と同じような気配…
視線を感じて、目だけをその方向に向ける
屋上の隅、給水塔の影
風もないのに、影だけが波打つように蠢いていた
また…あれか…!
影は相変わらず形を持たず、でも確実にこちらを見ている
築地さんが小さく息を呑んだ
「阿部くん、あの霊…」
その瞬間、影が動き出した
ゆっくりじわじわと、俺達に向かって来る
その瞬間、影が跳ねた
まるで獣のように、こちらへ飛びかかってくる
昨日と変わらず、足がすくむ
でも…
ここで俺が避けたら、築地さんに危険が及ぶかもしれない
そう思ったら足に力が入って、その場に留まる
『阿部くんの力は
きっと、誰かを守れるよ』
俺が築地さんの盾になれば、築地さんは守れるかもしれない
影が迫る
その瞬間、また手が勝手に動いた
昨日と同じ
いや、それ以上に滑らかで、迷いがない
指先が空中に線を描く
円、交差、渦
築地さんが驚いたような声を上げる
「阿部くん…それ…!」
描き終えた瞬間、空中に淡い光が浮かび上がり、透明な壁のようなものが出現する
バチィッ──!
光が弾け、影が弾き飛ばされる
影は屋上の端まで飛び、霧のように消えた
静寂が戻った辺りを見渡し、若干震える手を見つめる
築地さんはゆっくり近づき、俺の手をそっと包んだ
「阿部くん…
“術”が使えるんだね」
その声は震えていた
「術…」
やっぱり…
昨日薄々感じたけど…そう言う系の類なんだ
「今…阿部くんが使ったの…
清明の結界術だよ」
結界術…
「って何?」




