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2-25 お祭囃しな世界

 あのサクランボ、恐ろしい事にちゃんと芽を出したようだ。そんな馬鹿な。だが、芽を吹いてしまったものは仕方が無い。これは……。そのうちに王城の庭でお花見が出来るかもしれない!


 確か、こういうサクランボは日本でお花見するような桜の木とは違うはずだが、それでも桜には違いあるまい。俺はちょっと胸熱だった。一応花見については宰相に説明しておいた。よくわからないようだったが、商売の匂いは嗅ぎつけたようだ。


「それより、夏祭りやりたいな」

「え、シャル。夏に御祭をやるの?」


 ジーンが驚いたような声を出した。そう。この世界では、秋の収穫祭と新年のお祭りはやる。一部では、春の訪れを歓迎する小さな催しをやる地方もある。主に寒い地域だ。


「ああ、なんていうか、異世界でも俺のいた地域では夏といえば祭だな。他にもイベントは集中する。暑くて仕事も勉強も身が入らないから休むんだよ。夏のボーナスも出て懐は暖かい場合が多いし」


「ふうん、よくわからないけど」

「それに夏は恋の季節さ」

 俺は軽くチュっとジーンの唇を盗んだ。


「もうシャルったら」

 少し赤くなって両手で頬を押さえながら、体をくねくねさせる。


「相変わらずねえ」

「でも御祭か。楽しそうだけど金がかかるんじゃないのか」

 クラウスが慎重そうな姿勢を見せる。


「まあ、そこはそれ。冒険者ギルドでお試ししてみてもいいんじゃないかとかさ。商業ギルドに話を持ち込んでも面白いし、運がいいと王家がスポンサーになってくれるかも。ほら、この間も宰相がお花見に興味持っててくれたみたいだし」


「まあ、お試しでやってみてもいいんじゃないかしら。商売のネタになるかもしれないし、色々伝ができるかもよ。どうせ、何かやる時はあの宰相を通さないとマズイんでしょう?」


 現実主義者のレミーは的確に俺の意図を掴んでいるようだ。ある意味こいつが一番俺と息が合うのかもしれない。


「御祭というのは美味しいのですか?」

 ブレないアイカがすかさずシンプルに聞いてくる。


「美味しい?」

 リュウも、美味しいと聞いて大変興味を示したようだ。


「まあな。なんていうか、あの流しソーメンっぽい感じの美味しさかな。そして、何よりも御祭って奴は楽しい」


「やりましょう」

「御祭するの~」

 即答するのはアイカとリュウだ。


「でも準備が大変なんじゃない?」

 ジェンカはそう言うが、俺は軽く手を振った。


「なあに、今回は雰囲気だけさ。それでいけそうなら、来年は準備段階からあちこちと一緒にやってもいいし。まあ楽しいのは保障するぜ」


「じゃあ、やろうぜ。どうせ、あの王様と公爵がやりたがるだろ」

「ああ、宰相も反対しないと思うよ」


 俺は冒険者ギルドに顔を出して、ギルマスを探した。


「あらあらあら、高ランクのAランク冒険者になっても、ちっともダンジョンへ行かないシャル君じゃないの」

 うわ、アリシアさんからえらいツッコミが来たな。


「今、ほとぼりを冷ましているところなんですよ」

 今度はAランクの魔物が終結していたりしていたら嫌だ。


「たまにはダンジョンに行ってらっしゃいよ。ところで、今日は何の御用かしら?」

「ちょっと御祭りがやりたくて」


「はあ?」

 さすがのアリシアさんも少し変な顔をした。この世界じゃ、みんなこうなんだな。


「ええ、会社でやる夏祭りみたいな感じにギルドでやりたいんですよね」

「会社? よくわからないのだけれど、費用とかはどうするの?」


「そのへんは国王様にご相談!」

「ええっ! 大丈夫なの?」


「どっちかというと、こういうのは宰相の方が真剣なんですが」

「そ、そう。ギルマスなら執務室にいるわよ。ついていらっしゃい」

 俺は顔馴染みの冒険者達に会釈などしつつ、アリシアさんについて二階へ上がっていく。


「ギルマス、シャルさんをお連れしました」

「おう、入れ」


「こんちわ」

「なんだ、今日はどうした。また妙な魔物でも出たかと思ったぞ」


「今日は、そんなんじゃないですよ。ちょっとギルドで御祭りとかやれないかなと思って」

「祭? この季節に。しかもギルドでか?」


 ギルマスも相当妙な顔をしている。そんなにおかしな話題だったかしら。とりあえず、俺は御祭り屋台の関係物品を買い物してみた。


 売り台にアルミパネルのイベント用販売台や焼きそば専用台など、それに使う鉄板や網、フライヤーや焼く機械などだ。


 そして綿菓子機やポップコーンの製造装置など。あと、スーパーボールやヨーヨーを釣るための水槽だ。プールでもいいかな。


「こんな感じなんですが、どう?」

 俺は簡単に装置を組み合わせていき、法被を着込んだ。ギルマス執務室が御祭会場になってしまった。


「またこれは変な物を出してきたな。それで?」

「これ持っていって国王に提案したいんだけど。王家に話を通しておかないと、こういう物は出し茶駄目って宰相が」


「国王陛下には様をつけろ、様を。当たり前だ。お前が使う物は普通と違うからな。まあAランク冒険者で聖女ジーンのパーティで、王家とも仲がいいのは知れているから無闇な事は無いと思うが」


「で、やるのなら先にこっちに話を通しておかないと、と思って。ギルマスも一緒に王様のところまで行ってくれない?」


「むう、そんなに暇じゃあないのだがな。まあいい、行くか。お前を野放しにしておくのもなんだ」

 あ、そんな事を言っている。まあいいや。


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