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2-12 とっておき

 結局アイカは細っこいくせに3杯食べて、4杯目行こうかどうか迷ってやっぱり食べようと手を出したところで止めた。ちょっと俺の事を睨みやがったが、笑って言ってやった。


「今日はデザートのいいのを出してやる予定なんだが、カレーを食いすぎるとそっちの御代わりができないぞ。それは食いすぎるとすぐ腹を壊すから」


 しばし葛藤して、葛藤して悩んでいたが、カレーの皿はテーブルに置いた。俺も先に食った奴がリュウの面倒を見てくれたので交代で食べたが御代わりは一杯だけだ。運転するから眠くなりそうだしな。王都まではあと100kmくらいなんだけど。


 リュウの奴はちっこいくせにペロっと四杯平らげた。まあ、これからどんどん大きくなるわけだが。こいつの食費の事を考えると頭が痛くなるので、異世界(日本)飯に依存する事になるな。


「さて、諸君。本日カレーパーティの〆はこいつだ」

 俺が取り出したのは、アイスクリームの大カップだ。


 みんなの注目が凄い。今、夏だもんな。アイスが解けないようにカップを魔法剣に見立てて冷却しながらの作業だ。なんて無駄なスキルの使い方だろう。


 リュウが近寄ってきて、ふんふんとカップを嗅ぎ回る。今日は初めてだから、オーソドックスにバニラアイスにしたのだ。


「こらこらリュウ、まだだよ。今出してやるから」

 そう言って平たい皿にリュウの分を、アイスクリームサーバーですくって出してやる。さっそく匂いをふんふん嗅ぎながら検分してペロっと舐めてから吼えた。


「ウオルーー!」

 そして、凄い勢いで齧りついて、冷たいのでそれからはペロペロと舐め始めた。他の連中にも回してやったが、大好評だ。


「凄い。冷たくて甘いのねー」

 我が愛しのハニーも幸せそうだった。リュウとアイカが同時に御代わりの皿を突きつけた。さすがにアイカもリュウには大人しく順番を譲ったようだったが。


「シャル。こんないい物があるんなら、さっさと出しなさいよね」

 ジェンカもモンクを言いながら皿を突き出した。


「みんな、今日は2杯までにしておけ。この食い物は調子こくとすぐお腹を壊すので有名だ。特に子供は1日1個って言われているんだからな」

 だが、一番子供の奴が凄い催促のすりすり攻撃を始めてきた。アイカも一歩も引かない構えだ。


「カレーは3杯で我慢しました」

 そう来たか。


「お腹壊しても知らないからな? ジーン、リュウはどうかな?」

「うーん、これを食べてお腹壊すかどうかはよくわからないわ~」


「カレーは3杯で我慢しました~」

 何かアピールを繰り返している奴がいる。


「まあ、そうだろうなー。しょうがない。お前ら、あと一回だけだからな」

 リュウとアイカに御代わりをくれてやった。ドラゴンは案外と大丈夫なのかもしれないが、アイカはどうなんだ?


「なあ、レミー。アイカって胃腸は丈夫なのか?」

「まあ、これくらいは大丈夫だと思うわ。この子昔からよく食べるのよね。あんまり育たないんだけど」


 みんなお腹一杯になったのでのんびり休憩していた。リュウはお腹いっぱい食べてアイスもしっかりせしめたので、もうバンの荷台によじ登って丸くなっている。アイカも一緒だ。


「さて、そろそろ撤収する?」

 時計を見たが、もう14時だった。10:30から始めたから、ちょっとのんびりしすぎたかな。


「そうね、みんなはいい?」

「ほーい」

「じゃ、片づけだな」


 クラウスはテーブルなどをどんどん回収していく。俺も調理器具や食器などを収納袋に入れていった。

 帰りは順調そのものだ。石畳の上をそれなりのスピードで走っているが、後ろで丸くなっている奴らはビクともせずに幸せそうに眠り込んでいる。


 助手席にはジェンカを置いてある。ダンジョンで戦闘なわけじゃないから、それで充分だ。今は盾魔法もあるんで少しは気も楽だ。


 最初の1時間半で80kmを稼いでしまった。ちょっと休憩だ。まだ日は高い。それに、王都まではもう歩いても5時間のところまでいる。10km単位くらいに設置されている休憩所には他の馬車もいた。


「もし、そちらにおられるのは聖女様のご一行なのではありませんか?」

「え、ええまあ」


 何かこう、俺達は冒険者パーティではなく聖女様ご一行として世間から認知されている気がする。ま、そのうち商人様ご一行になる予定ではあるのだが。


「私どもは王都に店を構えております、オリバー商会と申します。よろしくお見知りおきを」

 もう老人といって差し支えないような歳に差し掛かってはいるが、背筋は伸び矍鑠とした雰囲気の人だ。


 おそらくは一廉の男なのだろう。オリバー商会、名前を聞いてもさっぱりわからないや。今度、商業ギルドに色々勉強にしにいくか。あそこに品物を卸すのなら、宰相にお伺いを立てた方がいいかとも思うしね。


「こちらこそ、よろしくお願いいたします。私はシャル・フリード。このパーティのリーダーでBランクの冒険者です」


 俺は丁重に受け答えしておいた。普通なら、多分俺達みたいな新人冒険者がほいほいとお近づきになれる人ではないはずだ。


 何か、本当に挨拶をしにきただけのようだ。よく見ると同じような立派な紋章をつけた大きな馬車が何台も立ち並んでいた。


「さあ、いくか。もう16時になっちまった」

 ここでは2時間置きに一刻をあらわすようだが、うちでは時計があるので地球式に使っている。


 ここも1日は24時間だった。この世界は多元宇宙の平行世界のようなものなんだろうか。俺はまだ、この世界のまともな世界地図を見た事がない。村にはそんな物は無いしな。


 それから、王都に近づくに連れ街道が混んできたので、20kmの道のりを行くのに1時間半もかかってしまった。今度から日暮れが近づいたら、これを計算に入れないといけないな。


 このバスのどてっ腹には、素人仕事でこう書いてある。

『聖女ジーン様御車』


 こう書いておくと、周りもなんとなく気を使ってくれるのだ。いちいち咎められないのが最高だ。その代わり油断するとバスが囲まれてしまうが。


 俺達は門番に挨拶して、そのまま王都の門をくぐった。それから大通りを進んで俺達の家へと無事に到着した。時刻は18時30分で、この季節ならまだ明るい。


「どうする? もうすぐ日が暮れる。みんなも疲れているだろうし、ギルドに行くのは明日にしないか?」


 みんなも頷いた。結構道中で色々あったしな。向こうではあまりやる事もなかったのだが。俺は疲れていた。


 今回は相手が盗賊とはいえ、俺は何人も人を殺した。俺達は立場上そうせざるを得なかったのだが。襲われてる方の女子供を見殺しにもできない。あの子達を無事救えて良かったと思っているし後悔はない。


 クラウスは特段気にしていないようだ。この世界の住人にとっては、やらなければならない事なのだ。今、このシャルは総一郎のパーソナリティを表に出してはいるが、その記憶などは実質シャルの物がメインになっている。ここでは盗賊とは戦う物、災害などと同じように立ち向かわねばならないものなのだ。


 だから躊躇わなかった。ここはもう日本ではないし、俺ももう日本人ではないのだ。だが、疲れた。思い出しただけでも疲れる。今夜はもう休もう。晩御飯はもうカップ麺にしてしまった。


 あと問題なのが、こいつのトイレだ。子供のうちはいいが、大きくなったらどうするかな。外飼いしないといけないかもしれない。だが、まだ子供で寂しいだろうし、今夜はこの部屋に置かないといけない。大型犬用のペットトイレを購入して部屋に設置した。


「いいか、リュウ。お前のトイレはここだぞ」

 わかっているかなあ。このドラゴンはかなり知能高いらしいんだけど、まだチビだからな。まあ、粗相があるのは仕方がない。


 片づけに関してはアイデアがあるのだ。装置のような物も準備してある。違う事のために考えたのだが、それが役に立ちそうだ。

 とりあえず寝よう。


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