1-19 本日の分け前
「じゃあ、次。お前はシーフか。シャル、こいつの能力はお前から見てどうだ」
「はい。充分にEランクに相応しいかと。ダンジョンにおける索敵においてはギルマスのお墨付きのあるジェンカを遥かに上回ります。
ただし直接戦闘能力が弱いために遊撃には向きません。弓は優秀なので、後衛に回れば有用です。
このパーティでは3本指に数えてもおかしくない実力の持ち主ですが、戦闘力は4番目から5番目でしょう。その代わり、チームの生存率の向上に大変貢献していますので、今一番抜けられると困る人材です」
俺としては過小評価もしていなければ過大評価もしていないつもりだ。アイカは驚いた表情をしているが、レミーは少し誇らしげだ。
「ふむ。それなら後は弓の腕次第だな。何の弓を使う?」
「とりあえず汎用の弓でいいですか? 自分で携行できる弓で見ていただいたほうがいいですから」
俺は少し考えて提案した。俺もアイカの実力は見ておきたい。
「ギルマス、金貨50枚の収納袋はまだあります?」
「ああ、あるぞ。それが試験に関係があるのか?」
「ええ、色んな弓が使えるようなら持たせてみたいので。それなら、色んな弓を使って試験してもらったほうが公平な結果になります」
「なるほど、1個でいか?」
「いえ、2個お願いします。全員にサバイバルキットとして持たせたいですし、身軽にした方が生存率も高まります」
「よかろう」
2人は驚いたようだったが、リーダーとして言っておく。
「うちはメンバーの生存率を最大限に重視する。元々田舎の仲良し4人組なんだから当然だ。今日の上がりを分けて君達の取り分から引くつもりだ。
金額が少なくて不満なようだったら、収納袋代は俺が持ってもいい。強制的に持たせるんだからな。装備なんかは基本、自腹で頼む」
「ありがとう、そんな風に言ってもらえるなんて思わなかったです。なるべく自分達で払うようにはしたいですね。じゃあアイカ、色々やってみて」
アイカも少し考えていたが、用意してくれた中からロングボウを手にした。
「ちょっと力がいりますが、大物狩りにはこれを使いました。家族の中では私が一番の射手でした。弦が重いので引く時には手伝ってもらったりしましたけど」
「あ、クラウス。弦を引くのを手伝ってやってくれ。それで速射での命中率を見たい」
「わかった」
クラウスがアイカに覆い被さるようにようにして次々と弓を引かせたが、素晴らしい速度で試験用の的のど真ん中に矢が突き立たせていった。
「ほう、なかなかやるじゃないか。次は汎用タイプの普通サイズでやってみろ」
アイカは俺から見たら嘘だろうというような速度で矢継ぎ早に打ち込んでいき、すでに的はハリネズミ状態だった。
「ショートボウなら更に早く撃ち込めます」
「ははは。これなら上等だ。Eランクで充分過ぎるほどお釣りがくる。2人とも直にDランクに上がれるだろう。
シャルもそのうちにCランクなら上がれそうだな。実績を積む事だ。それではアリシア、今日の成果を計算してやれ。それを見て収納袋の代金を差し引こう」
俺達は今日の獲物を引っ張り出した。ラッシュの獲物に、平原での魔物の嵐、そしてCランク。Cランクが大きかったのか、それなりの値段となった。
金貨257枚。初心者パーティには分不相応なほどの金額となった。やはり、均等割にすると収納袋代には足りない。
「クラウス、ジェンカ。ジーンも。悪いんだけど、収納袋代は均等割する前に別で出させてくれ」
「ああ、構わないぜ」
この中から収納袋代として100枚を充てて、残りを人数割りにした。1人26枚で余りは新入りにやった。レミーが恐縮していた。
「いいんですか、今日は殆ど活躍していないのに。袋をもらった上にこんなにしてもらって」
「いや、こいつは支度金だと思ってくれ。君らは装備が劣っている。最低の装備はしてもらわないといけないしな。住むところもいるし。あ、ギルマス。俺達の家で空き部屋が一つあったよね。あそこは駄目かな」
「ん? 別にかまわないぞ。もう空いたのは確認できたからな。アリシア、手続きしてやってくれ」
「はあい、じゃあハーレムメンバーちゃん、こっちおいで~」
「えー、なんですかそれ。違いますよ~」
こうして、新加入のメンバーを交えて、俺達の初めての遠征らしき日は終わった。遠征の成功と皆の無事を祝い、新メンバーの歓迎会を兼ねて食事会を開いた。
「こうしてみるとよ、毎回無事には済んでいないな」
「本当にね。でも最初よりはマシよ。まったく稼げない上にシャルが死に掛けてたから」
「うるさい。後は無事に切り抜けただろう。しばらく6階層で地味に行こう。パーティの連携を確率しつつ、2人の装備を上げよう。当座は、アイカの弓とレミーのスタッフが欲しいな」
「じゃあ、ちょっと待って」
ジーンが前に使っていた自分のスタッフを取り出した。
「これとレミーの杖とどっちがいいかしら」
「見せてください」
レミーはしばらく検分していたが、予想外の事を言い出した。
「これの方が一つ上等な物です。これお借りしてもいいですか? 実は私スタッフは魔法も打撃も二刀流なので」
「マジかよ!」
「そんな話聞いた事もないわあ」
「ううん、そういう人もいるって収納袋を寄進してくれた冒険者さんが言っていましたね」
「一気に後衛の防衛力と攻撃力が上がったな、おい」
俺達は食い物に集中しつつ、そんな感じで盛り上がっていた。
「アイカ、近接の自衛武器は持ってる?」
ジェンカが聞いたが、アイカは腰からナイフを抜いて言った。
「えーと、これだけです」
それは、ただの小さな狩猟ナイフだった。
「じゃあ、とりあえずこれを持っていてちょうだい」
そう言って、ジェンカはアイカにミスリルのナイフを渡した。
「うわ、ミスリル? 本当にこんな物を借りちゃっていいんですか?」
「うん、あたしメインはショートソードだしね。ナイフはシャルからもらったいいのがあるから」
ジェンカには、切れ味鋭い昔の短刀を渡しておいたのだ。
「予備武器とかを交換していくだけで、パーティの戦力が上がっていくなあ」
俺はお気に入りの果実水を飲みながら、昔やっていたRPGのゲームを思い出していった。
「あとはアイカのメインウエポンである弓のいいのが欲しいわよね。あと弓のバリエーションも。その次にレミーのスタッフか」
俺達は、わいわいとやりながら装備談義に花を咲かせていった。




