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 ダンジョンの洞窟壁の両側から次々と沸いてくる魔物を、俺とクラウスで突きまくる。振りかぶっている暇はない。


 次々と床に零れ落ちる死体を俺達は収納袋に詰めていった。そうしないと足元が魔物でいっぱいになって動けなくなる。


 収納袋があって良かったぜ。実際に能力はあっても、魔物が邪魔で動けなくなってやられてしまうパーティもいるらしい。


 ジェンカが、遊撃で取り溢した魔物をショートソードで抑える。ジーンはバックアップで回復役だ。後でこいつらから魔石を取り出すのだ。


 ダンジョンで魔力がすぐ溜められる事がわかったので不要といえば不要なのだが、非常時には自分の魔力を補充する携帯の緊急充電器みたいな真似もできるので試しておきたい代物だ。


 戦闘時に消耗した魔力が瞬時に回復するわけではないのだ。それに売り物にもなる。低ランクの魔物で一番買取が高価な物がこれだろう。


「ふう、やっと片付いた。何匹出たかな。えーと、こっちは57匹だ」

 クラウスが収納袋の中身を数える。頭に思い浮かべればわかるのだ。


「俺の方は62匹だ。都合119匹か。EランクとFランクばかりとはいえ、『ラッシュ』か。シーフがいなかったり、初心者のパーティだったりしたら全滅だな」


 ラッシュというのが、今のように多数の魔物が、急襲でポップアップしてくる現象の事だ。俺達だって初心者なのだが、装備が強力な上に他のメンバーも割と強力なのだ。


 ジェンカと俺のスキルは非常に強力な物で、回復薬を充分に持てば短期間なら2人でもダンジョンに潜れる。クラウスもなかなかの物だ。こいつはセンスがいいのだ。村にいても、少年だけで狩りに行く時はあいつが指揮を取っていた。


 今はこのパーティでは、攻撃力の要でやや遊撃よりである俺が通常は指揮を取っているが、俺が完全に前に出る時には指揮はジーンにスイッチしてジェンカが護衛に入る。


 元々パーティにとり命綱であるジーンは守るべき王であり、唯一完全な後衛なので指揮を取るには適している。一番冷静で落ち着いているからな。俺が指揮を取って戦闘を進める際もよく見ていて声をかけてくれる。


 初めて戦闘らしい戦闘を行なってパーティの意気は高かったが、俺は油断していなかった。魔物より人間の方が性質は悪いと考え始めている。


 ダンジョン内での冒険者同士のいさかいは禁止されているが、ギルドが監視員を置いているわけではない。広いダンジョンのどこかではいつも何かが起きている。


 不審な未帰還を遂げるパーティも、けして少なくはないのだ。しかもこのダンジョンでは、人も魔物も死ねば皆ダンジョンに吸収されるので証拠は残らない。生きていれば吸収される事はない。ゴミもここで処理されているのだ。


「おい、この辺りで休憩しようぜ」

 クラウスはモンスターハウス跡を指差した。


「いいな、そうするか。さすがにあれだけ相手すると疲れる。突き刺しているだけだものな」

 モンスターハウスも、このあたりはまだ大丈夫だ。下の方に行くと、まだまだ現役だ。


 この場所はセイフティゾーンとなっているが魔物が沸いたらギルドに報告する義務がある。しばらく討伐部隊を常駐させて、1か月沸かなくなるまで徹底的に掃討するのだ。


 そういう場所には魔物もそのうちに沸かなくなる。何度も危険だとわからせると、その場所に寄り付かなくなる鳩みたいな奴らだな。


「よーいしょ」

「何をしているの、シャル」

 ジーンが不思議そうな顔をして見ていた。


「んー? ゴミ処理の実験だよ。やっかいなプラスチックゴミを吸収してくれるのかをさ」

「変な事をやっているんだな」

 クラウスも覗き込んでいる。


「いや、ゴミ問題は重要だぞ。製品は受け入れられてもゴミ問題が浮上すると販売禁止を食らう可能性があるんだ」


「へーえ」

 ジェンカもよくわかっていなそうに首を傾げた。まあ無理もないかな。この世界の人間にわかれって方が無理だわ。


 そうこうするうちにゴミは無事にダンジョンに吸収されていった。

「よっしゃ!」

 俺はガッツポーズを決めた。冒険者はよくゴミの処理を請け負う。


「あ、今からダンジョンかい? このゴミついでにお願いね」

 そんな感じで頼まれてしまうのだ。収納袋を持ってまとめて捨てにいく業者になった人もいるくらいだ。


 業者は人の多い浅い層に捨てるのが禁止されているので、彼らはそれなりの深い層までゴミを捨てにいく。行き帰りに魔物を狩ってくるのだ。


 生活が安定しているので無理をしないから長生きする人も多く、最初からこれを目指す堅実派の人間もいる。実は俺も考えていたのだが、あまりに夢が無いので断念した。他のメンバーがうんというはずがない。


 ここでも有意義に買い物を済ませた。もう、俺のスキルで出来る半ば参照コピーのような能力は全て買い物という事にしてある。どの道ネットで売りに出していないとか、在庫切れの商品は手にいれられないのだからな。


「よし、出発しようか」

 ちなみにトイレは隅っこでするのが決まりだ。全部吸収されてしまうので綺麗なはずなのだが、みんな休憩する時に隅っこは嫌がる。気分的に嫌だよな。誰だ、美少女のならOKとかいうツワモノは!


 俺達は3階を通過して次の階へと向かった。何しろみんな若いので魔物さえ出なければすいすいと行ってしまう。それで、この間は大嵌りしたのだが。


 4階もそう代わり映えはしない。人は少なくなったが魔物も出ない。5階も同じくだった。こういう時もあるらしいが、その時は帰りにわらわらと沸いてくるケースが多いらしい。


 俺は銃や弾薬をずっと買い物しているのだ。自動車が買えないかと思ったが、さすがにまだ無理だった。一応材料は仕入れてきたので、魔力が充分に増えたなら今回試してみるのも悪くは無い考えだ。


 ジーンとドライブに行くのも悪くない。村にも帰ってみたいしな。俺達の村はかなり遠いのだ。仲が良かった弟は元気にしているだろうか。今度は材料を仕入れて持ってこよう。


 6階から少し様子が変わる。通常、初心者が行けるのは5階までだ。ここから格段に手ごわくなる。あの時は割とスイスイ行けてしまって嵌ったのだ。帰りが危ないというパターンなんだろう。俺とジェンカのコンビで調子に乗りまくったのだ。


 まるで、最強の冒険者になったかの如くに舞い上がっていた。まあ、おかげでそこまでに稼いだ魔石や素材なんかで、しばらく食いつなげたので助かったんだがな。村から持ってきた金なんて微々たるものだった。


 ここからは広い平原、しかも格段に広い。一気に直径1kmに広がる。このダンジョンは逆じょうご型に広がっているのだ。


 上級パーティにとっては、ただのお散歩コースだ。収納袋を持ち身軽な高ランクの人達など、武器防具を付けたまま鍛錬代わりに走っていくそうだ。汗一つ掻かずに、低ランク魔物などには見向きもせずに、ただひた走るらしい。どんな奴らだよ。


 生憎な事に、俺達若い者にはそんな趣味はないので、歩いていく。だが、今回は次々と魔物が沸いてくる。この6階層などはのんびり休めるところはない。ここが終わるあたりに休めるポイントがあるのだ。


「おい、いやに魔物が沸いてくるな」

 先頭をいくクラウスが文句を垂れだした。連戦になるとこいつが一番疲れるのだ。


 本格的にダンジョンを攻めるのであれば、もう1人2人メンバーがいてもいいくらいだ。先鋒を務められてシーフの能力を持った人材ってどこかにいないもんだろうか。


「仕方が無い、ここはダンジョンだ。この階の休憩所で休んだら7階を少し覗いて帰ろうぜ。今回の目的は実験だからな。無理する事はない。金は商売で稼ぐぜい」


「ちっ、わかったよ。じゃ、みんな頑張るぜ!」


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