恐るべしケニーさん
オークから魔石を取り出したら、握りこぶし程の大きさであった為、アランさん達も驚いていた。
先日の二頭も大きめな魔石を持っていたが、こんなに大きくはなかったらしい。
強化個体は魔石が大きいのか、魔石が大きいから強い魔物になったのか、どちらかわからないが外見では判断がつかないのはいやらしい。
戦闘が始まってから、こいつ強いぞとか危なっかしくてしかたがない。
何かしらで識別出来るようにならなくてはいけないと話し合っていたけど、アタシは鑑定で識別可能になった。
鑑定能力も秘密にしているので申し訳ないけど、内緒にさせてもらおう。
アランさんは、オークの持っていた大剣を手に持ち手入れをしながら何か呟いていた。
きっと、ジョンさんの事を思い出しているのであろう。
アタシはオークの肉を少し拝借しておいた。
どう見ても豚肉にしか見えないからだ、しっかり普通の包帯で巻いて背負い袋にしまった。
武器の手入れが終わったところで、オークの死体から離れた。
肉食動物が周囲を取り囲むように現れたからだ、アタシ達が進む方向に居た肉食動物達は、慌てて避けて行ったので狙いはオークのようだ。
ある程度離れてから振り向くと、オークの取り合いをしているのが見えた。
倒れた生物は、生きている生物の糧になるしかない、アタシもいつか倒れたら同じことになるしかないのかと感慨にふけってしまった。
オークから離れたあと、葉の多い木を見つけて日影で休憩。激戦の疲れを癒すためだ。
アタシを除いてみんな座りこんでいたが、ある程度落ち着いたのかアランさんが話し掛けてきた。
アタシは周囲を見渡し安全を確認してから。
アランさんの話しは、きっと勝手に動いたことを怒られると身構えて聞いた。
「マッキーさんがある程度は強い事は、俺達に会うまで一人で旅していたことから解っていたつもりだったけど、正直侮っていた。ごめん。」と真っ直ぐ謝ってきた。
ようするにオーク戦で戦力外にしたことを謝っているようだ。
アタシはてっきり怒られると思っていたから、拍子抜けしてしまったが、慌てて指示無く勝手に動いたことを謝った。
アランさんもアタシに謝られたことに慌てていたが、気を取りなおして「正直助かったよ」と言ってきた。
その後、アタシの戦いのスタイルである、不意打ち、一撃離脱、撹乱、逃走を話し、更に武器であるホウキの性能を話した。
ホウキの攻撃は、ゴブリンレベルの強度なら問題ないが、オークレベルの強度になると広い場所がなければ、攻撃が通らないと考えている。
しかも最速の一歩は、直線的にしか動けないので、警戒している相手には踏み込めない。
アランさんが言うには、あんな速度で接近されたら誰も対応できないから気にしすぎだと言うから実験してみることにした。
アランさんに落ちている木の枝を持って立っていてもらい、アタシは無手で三十メートル先から声を掛けて最速の一歩を踏み出した。
一回目は棒立ちだったアランさんであったが、予想通り対応できるかもしれないと言ってきたので、二回目を行った。
そして見事にアタシの胴に当ててきた。
当てられたのは良い、アタシが無敵では無いと証明しておきたかったからだ。
だが、そのせいでマントの下は素っ裸になった。
すっかり忘れていたけど、回復包帯水着だったのでダメージを受けた瞬間に回復能力が発動して包帯が消えてしまったのである。
裸マント蜘蛛女なんて、どこの恥女だと見られないようにうずくまりながら思っていたら。
動かないアタシを心配したのかアランさんが駆け寄って来てしまった。
このままでは裸を見られてしまうとアタシは最速の一歩を踏み出して少し離れた所にある木の影に隠れた。
よくよく考えると、最速の一歩を踏み出した時にマントが捲れてお尻を見られたかもしれない。
恥ずかしさを押さえながら、回復包帯をお尻から出して、身体に巻き直す。
巻き終えてから、恐る恐る木の影からアランさんを見ると棒立ちになっていた。
アタシは自分よ冷静になれと念じながら、何食わぬ顔を取り付くって合流した。
何かを言いたげなアランさんであったが、出てきた言葉は「大丈夫?」であった。
簡素に「問題無い」と言っておいたが、内心は問題有りまくりだ。
それをなんとか抑えて、
「と、言うことで対応可能だと解ってもらえたかしら?」
みんなを見回した。
実演したことにより納得してもらったけど、一人小枝を持って自分を指差している。
ケニーさんもやってみたいようだ。
また裸になるのは、まっぴらごめんだが、アランさんだけが仮想高速敵を経験した事で差がつくのは嫌らしい。
ゴネるケニーさんを止めきれずに一回だけと念を押して、最速の一歩を踏み出した。
二回外野で見ていただけだと高を括っていたら、見事に当てられてしまった。
アタシは泣く泣くそのまま離れた木にまで行き、隠れて包帯を巻き直した。
ケニーさん恐るべし。




