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喜びは仲間と共に

認めたくはないけど、アタシの魔法はお尻からしか出せない事がわかってしまった。


なぜなら、風魔法を使えるようになっても黒い石ころは消費されなかったので、水の魔法も試したからだ。



その結果、イメージと言う名の妄想では空気中の水分を集めて指先から水を出していたのだが、指先からは出ずにお尻から出たのである。


おかげでマントの裾と包帯水着のお尻が濡れてしまった。まるで、お漏らししたようだ。こんな姿を見られたら気まずくなると思い。風魔法で乾かす事にした。



冷静なつもりであったが、どうやら慌てていたらしく魔力量の調整が甘かったらしい。

想定よりも、お尻から出る風が強い。



風に押し出されるように前に進んでしまう。




進まないように踏ん張っていたら、何となく閃いてしまった。


この状態でジャンプしたら空中移動できるのではないだろうか?


もしかしたらと思いつつも軽く真上にジャンプしてみたら。一メートル程先に着地出来た。

これは面白いと思って気を少量使って十メートル程ジャンプ、お尻を右に振ったら左方向に移動できた。


ジャンプ中に姿勢を保つのがたいへんだが、空中移動が出来そうだ。



後は瞬間的に風を起こしたり止めたり出来れば、身一つで空を飛ぶことが出来るかもしれない。



わくわくを胸に抱いていたら、交代の時間を過ぎていたらしい。アランさんとケニーさんが起きていて、アタシを見ていた。


風の魔法は少し前に止まっていたけど、見られたかしら?


何事もなかったように二人に近寄り「問題なしです。後は宜しくです」と伝え、自分の寝場所で横になった。



眠る前にマントの裾を確かめたら、ちゃんと乾いていたので安心した。



翌朝は周囲にウサギが居なかったので、普通に冒険者食である。


その時に、やっぱり飛び跳ねていたことを見られていたらしく、アランさんから注意を受けた。

でも、どうやら風魔法の事は気づかれなかったようで「元気なのは良いが、無駄な体力を使うな」と言うことだった。



今日も順調にゴブリン狩りを続けていたら、オークを一頭見つけた。

アランさんの指示で、今回は戦闘を避ける事になったので、逃げることにしたのだがすでにターゲットにされていたらしく追ってきた。



先日の経験から、オーク一頭なら強化個体でも対応できると考え直し、対決することになった。



火の玉魔術を放ったらアランさんとケニーさんで斬り込み。タイミングを見て火の玉魔術を放つと言う常套手段。

アタシはキャサリンさんとジェニファーさんを守ることになった。


オークがある程度近付いてきたので、はっきりと姿が見えてきた。

片手に大剣を持ち、腹に袈裟斬りの後がある。

もしかしたらとアランさんに伝えたら「あれはジョンの武器だ」と静かに呟いた。



「ジョンの敵だ。気合いを入れて殺るぞ!」



普段見ている冷静沈着なアランさんではなく、怒りに我を忘れて暴れるバーサーカーの様な雰囲気である。


そんな雰囲気に、ケニーさんやキャサリンさん、ジェニファーさんまで感化されて顔が上気している。



アランさんの指示で、火の玉が二つ飛んでいった。戦いの開幕だ。


火の玉は直撃してオークは火に包まれたのに、それを無視して突っ込んでくる。


アランさんとケニーさんも負けじと踏み込み、大剣の一撃を避けながら両脇を抜けるように斬りつけた。


ゴブリン相手なら真っ二つにしていた一撃であったが、分厚い脂肪に阻まれたようで、肉まで通っていない。


その後も何度も斬りつけているが、普通に振るった一撃は脂肪どころか、皮に傷がつく程度のダメージしか与えられない。



でも全身から出血を強いることは出来ているので、じきに動きが悪くなっていくはずだ。


そこまでアランさん達の体力が持てばと言う条件ではあるけれど。



アランさんとケニーさんは、交代でオークの正面と左手側(オークは右手で大剣を持つ)について、ダメージを蓄積している。


そしてオークが剣士に釣られて右手や背後をこちらに見せた時に、火の玉魔術を放つ。

何度かこちらに突っ込んできそうになったが、アタシがホウキで牽制して動きを止め、その隙にアランさんとケニーさんとで斬りつけることにより阻止できていた。


戦闘開始から十分。


常に全力で動き回っていたアランさんとケニーさんであったが、体力の限界が近いのか息が荒くなってきていた。


対するオークは大出血の上、大剣を振り回し続けているのにまだ動きに疲れは見えない。


このままでは、アランさんかケニーさんが致命的な一撃を受けてしまう。



後で怒られようと、今飛び込んで状況を変えるべきだと考え。

全身に気を纏い、ホウキに限界まで気を流し、最速の一歩を踏み出した。


オークは左を向き右手の大剣を振り上げたタイミングだ。


アタシはオークの背後を抜けるように、ホウキで大剣を持つ右手を払った。



アタシは、やはりそのまま五十メートル先まで滑走してしまったが、背後でオークの叫び声がした。


狙った通りオークの右腕を切断することに成功したようだ。


オークの左腕は、何度も斬りつけられているので、武器を持てる状態ではない。


それでも傷たらけの左腕と、手首の先がない右腕を振り回し続けているのは流石は魔物だと思ったが、武器がなくなればアランさんとケニーさんの相手ではない。


振り回す腕にタイミングを合わせて斬りつけ続けているうちに、オークの動きが目に見えて悪くなっていき。アランさんの足元を狙った一撃により、オークは倒れた。


倒れたオークの頭をケニーさんの大上段から降り下ろした一撃で潰した。



二人はすぐに、オークから間合いをとって身構えていたが、ピクリとも動かない事を確認して、勝ちどきを挙げた。


「赤い閃光の敵をとったぞ!」



アタシも振動感知で反応が無いことを確認したので、何となく喜びの輪に加わって祝福した。



ジョンさんの事は名前しか知らないけど空気を読んで喜びを表していたら、本当に嬉しくなった。



知り合いの笑顔は、嬉しいものだと実感出来た戦いである。




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