世界の王からの使者
背後から感じる振動は二つ。
この世界で三番目に会ってはいけない存在だ。
一番目は言わずと知れている巨大ドラゴン。
二番目は魔王ことヨミさん。
ヨミさんの仲間のキリさんとレイさんはよく分からないから省いているけど。
三番目は今背後に居る大地の王ことミーヤと大空の王ことピィコである。
この二人は世界の王の部下だ。そんな存在に関わってしまったらどんな事になるか予想もつかない。
だから逃げたいのだが、逃げる場所がない。
眠っていたおかげで少し気が回復しているが走り続ければすぐに底につく。
魔力はあるから空を飛ぶことは出来るが魔力だけの飛行は遅い。ピィコが居るからには話しにならないだろう。
潜伏スキルは視線が合ったら使えない。アタシが更地にしたから付近には身を隠すところもない。
戦う?万全な状態でも二人同時になんて無謀だと言うのに、どうしろって。
完全に詰みだ。
平和的に話し合いで解決するしかない。
でもミーヤのあの口調は完全に臨戦状態だ。
上手く出来るかな。
アタシはゆっくり振り返って余裕があるように見せ掛けながら。
「アタシはマッキーって言うのよ。蜘蛛女だと正体を教えたのは大地の王に敬意を現したかったから。名乗らなかったのは、ごめんなさい。ほんとに忘れていただけなの。出来ればこれからはマッキーと呼んでください」
少なくとも問答無用で殺されることは無いだろう。その気なら声なんて掛けずにバッサリだろうから。
「ふむ。蜘蛛女はマッキーだな覚えたぞ。それでは聞きたいことがある。返答によっては容赦しないから覚悟しておくのだな」
なんだか以前とは立場が逆転しているような。
でもアタシの事をマッキーと覚えてくれると言うなら返答を間違えなければ未来があるような気がする。
「以前にも聞いたがお前は世界を破壊しようと企む者か?」
そんな気は毛頭ないので躊躇なく答える。
「世界が壊れたら困るのはアタシも同じだから。そんな事は思ってもいないです」
「では次に、魔王は知っているか?」
知っているかと聞かれれば、知っているけど、基本逃げ回っていただけだからよく知らない。
アタシは魔王との先日の出現から対決、逃走の概要を話した。
少し話しを盛ったり秘密は削ったりしたが基本は実話だから問題なし。
「魔王カラ逃ゲ切ル実力。先程ノチカラ。大地ノ王、馬鹿ニシテスマナカッタ。オ前ハ弱クナイ」
ずっと黙っていたピィコが話し始めたと思ったら、アタシに以前捕らわれた事をずっと馬鹿にしていたらしい。ミーヤごめんなさい。
「ゴホン」
ミーヤが咳払いをしてる。
「と言うことは、魔王に味方する気はないのだな」
基本的に味方はしないが敵にもしない。
それはミーヤ達相手にでも言える。
友達なら良いが仲間にはならない、都合の良い事を言っている自覚はあるが、この世界に産まれて一年も経っていないのである。元の世界とは違いインターネットやテレビなどで情報を得る事が出来ない世界だ。
それで選ぶことは出来ないだろう。
もし、選ぶことを強要されたらアタシは第三勢力として立つと宣言しておいた。
これには二人とも苦笑いをしていた。
正直この世界の覇を称えるのは誰でも良いし、どちらにも着かないなら、その後冷遇が待っていると言っても引きこもるだけだから問題なし。
「マッキーはそういう種族なんだにゃ。よく分かったにゃ」
ミーヤは臨戦体勢を解除したみたい。
語尾に『にゃ』が着いている。
ほっとしたところで爆弾が落とされた。
「マッキーは世界を破壊する気がにゃい、魔王の味方にもならにゃいのは分かったにゃ。
だけどウチらがここに来た目的の一つはだにゃ。マッキーを世界の王の下に連れて行くことだにゃ」
この場での戦闘は回避できたが、無罪放免とはならないみたいだ。
「そもそも魔王復活の確認、無理なら証拠探し。魔王達の行動把握。新生物の捕獲。この三つが目的だったにゃ。
今朝封印の地に着き、森の動物に話しを聞いたにゃ。そこで魔王らしい者の封印が解けたと聞いたにゃ。更に魔王の倦属が飛び立ち、魔王は何者かと戦闘後飛んでいったと聞いたにゃ。
さっきのマッキーの説明と大筋で同じだから話しの信頼は高いにゃ。
それと幸運だったにゃ。あちこち駆けずり回らないといけにゃいし面倒だと思っていたにゃが。それがマッキーを連れていけば全て終わると言うのだからにゃ。楽チンだにゃ」
ミーヤは王と言っても猫科のようだ、やっぱり面倒なことは嫌いのようだ。
魔王に続いて次は世界の王か展開が早すぎないかい。
アタシは何も抵抗出来ずにピィコの背中に乗せられてしまった。




