魔王様からは逃げられない?
うわっバレてる。
なんでだ と思ったら、姿が現れてしまっているではないか。
どうやら先程の魔王のノータイム攻撃に驚いてしまい集中が途切れたところで、
爆発により身動ぎしてしまったようだ。
それで潜伏が解除されたと。
「白い同胞よ。お前は上手く隠れていたさ。相手が僕でなかったら気がつかなかったと思うよ」
いくら誉められても、みつかってしまったら意味が無い。
「さっきまで視線が有ったのにさ、気配も姿も見えない。
その視線さえ途中で消えたから、初めは何かの監視魔術かと思って復活が何者かにバレたと思っていたよ。
バレたついでだからここはお約束通り派手な魔法を飛ばすべきだろうと何となく思って、実行してみれば、僅かな気配を感じたのさ」
潜伏スキルは魔王にも有効だったのか。
それなのにみつかってしまうなんてアタシのバカ。
「この気配、雰囲気、何となく懐かしさを感じることが出来た。この感じはこの世界の存在ではないのだろう?
だから『キリ』と『レイ』が気がつく前に行かせたのさ」
懐かしさ?そう言えば『同胞』とも言っていたよね。どういうことなのかな。
「そんな同胞に優しい僕でも一人で喋るのは飽きてきた。そろそろ返事をするか、姿を現しても良いのじゃないのかな」
流石に限界か。やっぱり魔王からは逃げられないのかしら?
ここはファンタジーの世界だから、目を合わせたり、返事でもしようならきっと魅了されて魔王の下僕にされてしまうに違いない。
あと少し。
何かで気を引ければ。
その時、月が光を取り戻した。この星の影から月がようやく抜け出したのである。
「白い同胞よ。皆既月食が終わったようだ。僕の復活とは関係はほとんどないのだが、こんなタイミングて起こるなんて分からないものだな。これも世界の神秘と言うことなのかな?」
やった貴重な時間を稼ぐことが出来た。
短い時間だけど精一杯の準備が出来た。
後は世界の神秘が味方をしてくれれば。
「おや?魔力を高めているのかい。抵抗しようとしているのか。でも無駄だよ。その程度の魔力では僕に通じる事はない。」
魔王と話してはいけないのだから、心の中だけで叫ぶ。
『台風!』『閃光!』
瞬間最大風速秒速百メートルの風を起こすと同時に目眩ましの閃光を魔道具で起こす。
飛んだアタシの姿を見ようとした瞬間に目を焼く光。
一瞬でも躊躇すれば、時速三百六十キロで飛ぶアタシに追い付ける訳がない。
と思っていたら、魔王ってば追い抜いている。
慌てて更に二つの魔道具を発動させて、そして土魔法を使う。
最後に潜伏スキルを使った。
これだけやって捕まったのら諦めるしかない。
その時は土下座して謝って大人しく話しをしよう。気になる話しばかりだったしね。
魔王こと、ヨミは皆既月食と言っていた。
その一点だけで『同胞』すなわち元日本人である可能性が高い。
もしかしたら本当に懐かしくて話しをしたかっただけかもしれない。
そう考えると悪いことをした気になる。
気になるが、だからと言ってリスクを背負う積もりはない。
アタシがしたことは、潜伏スキルを使う為だけに魔王の意識を逸らす事をしただけだ。
アタシの分身と言って良いほど大事にしてきたマントに丈夫な蜘蛛糸で補強して中身があるように見せ掛けて。
土魔法で魔石に『丸文字』で『台風』と書き。
もう一つ『丸文字』で『閃光』と書き。
更にもう一つ『丸文字』で『土』と書いた。
ベタベタ糸を出して、石をくっ付けてハリボテも作った。
時間が掛かっていたのは、蜘蛛糸を使って作っていた等身大アタシ人形。
質感を出す為にも大量に蜘蛛糸が必要となり関節が動くようにギミックに拘った逸品。
手持ちの最大サイズの魔石に『丸文字』で『心接続自立行動』と書いて埋め込んだ。
『自立行動』は読んで時のごとく動き回れるように。
『心接続』はアタシの意思を伝えるため。
勝手に動くのは良いけど、いきなりそこで座りだしたり、朝の体操をされたら囮にならないからだ。
実際どう作用するか分からないけど、思いついた文字がそれだからしかたがない。
もしかしたらまったく動かないかもしれないが、その時は諦めるしかない。
ここまで書いたすべての魔石の表面は傷だらけにしてある。誰にも書いた内容を読み取らせない為だ。
すべての準備を終えてアタシは順番に起動した。
アタシと一緒に冒険の旅に着ていたマントを飛ばし。
『閃光』による目眩まし。
『土』魔道具で湖に向けて石つぶてを飛ばし。
等身大アタシ人形に魔力を通し。
『逃げて』と指示を出した。
アタシ自信は『土魔法』で地面に縦穴を開けて、そこに落ちてアタシと繋いでおいたハリボテが引っ張られて蓋をした。
最後に潜伏スキルを使い今に至る。
酸素を確保するためにかなり深く穴を開けたから暫くは窒息することはないだろう。
本物の蜘蛛のように深い穴の中間より高い位置でお尻を上に向けてぶら下がっている状態だ。
アタシはしたことない筈なのに、何故だかこの体勢、シチュエーションにデジャブを感じる。
アタシはあの瞬間に大量に消費した力を回復させる為に眠りについた。
目覚めた時もアタシはアタシでいられますようにと願いながら。




