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作戦失敗。捕らわれた生き物の宿命

この作戦が吉と出るか凶と出るか。


アタシはミーヤの攻撃をその後も避け続けていた。


すると、左手から繰り出される攻撃が少し甘く大振りに見えた。


ここだ!と思い一端飛び避けてからすぐに踏み込んだ。


ミーヤは逃げ回っていたアタシの動きに慣れていた。


そのタイミングでの突然の行動の変化に、頭では分かっているのだろう目は着いてきている。

だが身体は着いてこれずに、左手はまだ延びきっていて、右手は次のアタシがいる予測地点に向けて力を貯める準備をしていた。


その為に、無防備の腹をさらけ出していた。


ものすごい大チャンスであるが、アタシはアタシで狙った事と違う状況に慌ててしまい何も出来ずにいた。


せっかくのチャンスを棒に振ってしまうと思いつつもやっぱり何も出来ない。


そしてそのままミーヤの赤銅色した厚い胸板に抱きついてしまった。


お互い動きが止まる。


元の世界から四十年、男の胸板に抱き着いた事など記憶にない。初体験である。


「ごめんなさい」って言って離れれば良いのか?


どうしたら良いのかさっぱり分からない。


アタシ!冷静になれ。この状況をどうにかするために何か考えろ。


そうだ。この状況を使って説得すればいい。それしかない。


アタシは冷静を装い。

「この戦いは引き分けで良いかな?」


ハート型の白い胸毛に顔を埋めたままミーヤにそう問い掛ける。


「アタシは魔法使いでもあるのよ。

このまま発動させればミーヤに大ダメージを与えることが出来るが、魔法を発動している最中にミーヤからの一撃をアタシが受けたらアタシも大ダメージを受ける。

その後はまともな戦いにはならないだろうから、ここで引き分けにしないか?」


まともな戦いにならないと言うのは、戦闘狂としては詰まらないはずだ。


その一点に賭けたのだが、答えは

「殺れるものならやってみろ」


抱きついているアタシにミーヤの腕が更に抱きついてくる。


説得は失敗。


アタシは腕の魔道具に魔力を流した。


ミーヤの腕がアタシを掴もうとした時に、ツルンと言う擬音がしそうな感じでアタシは腕から滑り抜けた。


滑っていくアタシを掴もうと更に手が追い掛けてくるが、その手からも滑り抜ける。

暫くウナギのように滑り抜け続ける事が繰り返された。

最後にミーヤがバランスを崩し転倒した。

その時、偶然にも大きく飛び上がる事が出来た。


アタシは土魔法で一瞬空中停止して、本能に刻まれている能力を全開にして放出した。



白い飛沫が飛び散る、もちろん丈夫なベトベト糸である。


少しでもくっつけば相手に逃げる術なぞない。払った所で意味はなく、暴れれば暴れるほど絡まり相手の動きを封じる。


ミーヤは倒れたままベタベタ糸を払っていた為に、万歳をした格好で蜘蛛糸に捕らわれていた。


アレでは自慢の怪力も発揮できまい。



アタシはミーヤの顔の辺りに口をつけた。


アタシ限定かもしれないが、蜘蛛糸は実は食べられるのである。


蜘蛛は自分の出した糸を食べることにより、再び糸の元を生成出来るのは本当である。


残念ながら味は無いけどね。


ミーヤの顔に付いている糸をギリギリまで食べてから顔を離す。


ミノムシのようになって転がっているミーヤに向かって

「さっきなら引き分けに出来たけど、こうなってしまえばミーヤ。お前の敗けだ。

アタシは出来もしないことは言わない。もう一度言う。着いてきた理由を言え。言わなければ食う」


元から食う気なんてないけど、間違いなく肉食だろうから美味しいとは思えないからね。

偶然にでも得られた勝利を最大限に使って脅しを掛ければ追い払う事がきっと可能だ。


誰でも自分の命は大事だからね。



「あなた様は人間ではないのですかにゃ」


語尾が『にゃ』に戻っている。どうやら戦闘モードは解除されたようだ。


アタシはミーヤに話し掛ける。

「だから詮索しないでって約束したのに。

アタシは怪人蜘蛛女。

獲物を糸でぐるぐる巻きにして身動きを封じてから、消化液をかけてゆっくりすするの。

でも安心して痛みはないから。アタシの消化液は麻痺の効果があるの、だから長く生きていられるわよ。

ご飯も水も与えてあげるわ。ミーヤを食べ尽くすまで何日掛かるかしら。三十日くらい掛かるかしらね。

その間、あなたは死なないわ、だってアタシが殺さないから」



それを聞いてミーヤは観念してしまったらしい。


静かに目を閉じた。


いや、そこで観念しないで理由を話してってば。


目を閉じたミーヤに、もう一度理由を聞く。


そしてミーヤは驚きの理由を話し始めたのであった。




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