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穴の中に居た謎の生物は

目が覚めた。


今回は寝ていて朝になった訳では無い。


ファンタジーに出てくる生き物のなかで語尾に『にゃ』と付ける生き物はアレしかいないと思っていた。


だが、すべてはまやかしであったのだ。


そんな生き物なぞこの世界には居なかったのだ。



夢、そうすべてはアタシが勝手に見た夢の産物であった。そんな夢から覚めて、今は現実を直視している。



アタシが付けた条件は簡単だ。

アタシの事を詮索しない事、誰にも話さない事の二点である。


それが守れるなら助けると伝えた。


この条件は穴の中の生き物からすれば条件など無いも同然であるから、すぐに承知した。




アタシはお尻から長い丈夫な太い糸を出して片方を木に縛って、もう片方を穴の中に垂らした。


良く考えると元の世界に似たような話があったような気もするが、アタシの糸はそうそう切れないでしょう。


「ヒモ見たいのが来たにゃ。細いけど切れないかにゃ」

と言っている相手に、見た目と違って丈夫だから安心してと伝えて暫く待つ。


手が現れた。指があり黒い毛に覆われている。

頭が現れた。黒い毛に覆われている。こちらに後頭部を向けているが猫の耳だ。

どうやら黒猫さんのようだ。


上半身が現れた、筋骨隆々で鍛えられた赤銅色の肌をしている?


何?この生き物?


アタシは距離を置いて身構えた。



黒猫さんは穴から出られた喜びを全身で表現している。


「やったにゃ。出られたにゃ」


言葉だけ聞いていれば可愛い生き物のような気がするが、見た目はあまりにも生き物としてのバランスに欠けている。


身長二メートル程。


頭は黒豹で肉食動物特有の鋭い牙をはやしている。

目は緑色で白眼が無い。


上半身は裸の人間に見える。腕は黒い毛で覆われているが指がある。

なぜか胸に白い毛がハート型にはえている。


下半身は黒豹のようなしなやかさであり、黒い毛で覆われているが指は無い。獣足である。


どうでも良いが隠しやがれアレが丸見えである。



繰り返すが、この生き物はおかしい。


どう考えても上半身を支える下半身が貧弱すぎる。普通の進化を遂げた生き物には見えない。


イメージ的には牛の魔物の代表であるミノタウルスを黒豹でやってみたって感じである。



謎の生物は喜びを一通り表した後そのまま倒れた。


三日間穴の底で飲まず食わずの上、最後の力を振り絞って脱出したので、体力の限界に来たらしい。


アタシは警戒しつつも中途半端に助けた事になるのが嫌で、介抱することにした。


『土』魔法で木の皿を作り出し『水』の魔道具でそそいで飲ませた。


ピチャピチャと音をたてて飲んでいる姿は猫そのものなのに、この違和感は何?



「丸飲みしないで良く噛んで食べなさい」と背負い袋から干し肉を出して渡す。


この体格だとちっぽけな干し肉では足りないだろうと思い。


謎の生物。インパクトが有りすぎて忘れていたが、そう言えば最初にミーヤと名乗っていた事を思い出して。


「ミーヤ。ウサギかネズミを狩ってくるから待っていなさい」と伝えてから、この場から離れた。



もしかしたら居ないかなと思いながらネズミを三匹とウサギを一羽狩ってくると、はたしてミーヤは居た。


捕り立てのネズミを三匹渡すとそのままかじりついた。


生で良いらしい。


あっという間に食べ尽くしてアタシの持つウサギを見ている。


左右に振ると同じように顔を振らせた。


アタシはウサギも渡した。


アタシはバリバリと食べるミーヤを見ながらマクドの街から出るときに買ったリンゴをかじっていた。


ウサギも骨ごとすべて食べ終えてミーヤは満足そうだ。


アタシもリンゴを食べ終えたので、土魔法を使い原因となった穴を埋めてから。


「それじゃあ、アタシは行くからね。二度と穴に落ちるような失敗をしたらダメよ」と立ち上がり手を振って別れを伝えた。


モフモフ出来るような生き物なら、名残り惜しくもなるが謎生物過ぎて、そんな感傷にもならない。


キョトンとしていたミーヤであったが、そのまま去ろうとしたアタシに慌てて声を掛けてきた。


「ちょちょちょっと待つにゃ。本当に見返りは要らないのかにゃ。ウチは王様だにゃ」


声だけ聞いていれば可愛い生き物なのになと思いつつ、訳の分からない身分を聞いて思わず立ち止まってしまった。


「そうだにゃ。助けてくれた上に食べ物も貰ったのだからにゃ、それ相応の礼をしたいにゃ

ウチは王様だからにゃ何でも言って欲しいにゃ」


猫の王様だかなんだか良く分からないが、そんなこと言われてもピンとこないアタシは、とりあえず猫にも身分階級があるんだと驚きながらも、約束を守ってくれればそれで良いと伝えた。


猫のお礼と言っても思い付くのは、元の世界で野良猫ご飯をあげたら、玄関にスズメとかネズミとかバッタとか置いていかれた事しか思い付かない。


アタシは「お礼はいらないから、元気でいてね」と伝えて再び歩き出した。


「王様が命の恩人に何もしにゃいなゃんて」


尚も言い募っていたが無視することにした。


ギャップ萌え出来ない謎の生物であったのが残念だったが面白い生き物に出会えて、この先でも不思議生物にまた会えるのではないかと旅が楽しくなるマッキーであった。



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