『影』魔法と収納袋モドキ
『影』魔法の存在を知ったあと、考えている振りをしてアタシは部屋に戻った。
カリンさんからすれば、影魔術のイメージを考えているように写ったと思うが、実験したくてしかたがなかっただけだ。
格子窓から入る日は部屋を明るくしているのでアタシの影が床にあるが、多分『影』魔法と言っても実際に影が必要となることはないと考える。
これは転移魔道具の一種で転移先が亜空間に繋がっていると思われる。
転移魔道具は対になっていることで、イメージとすれば分かりやすい。
ここからそこに移動しろとイメージすれば、途中経過は無視出来るからだ。
それで魔道具となれば、距離は関係無くなる。
魔法が勝手に実現してくれているからだ。
後は必要な場所に置けば良い。
そんなびっくりな転移魔道具は作れるのに収納袋の魔道具が作れないのは。
転移先の亜空間が想像できないからだと思う。
アタシも厳密には想像できないが妄想で補完することは可能だ。
猫○ロボットもゲームが指している内容もどちらも知っているからだ。
妄想を爆発させて影魔法を使ってみる。
アタシの魔法はもう諦めているので、お尻の下に対象である木のカップを置いてしゃがんだ。
この体勢は言い訳出来ない。
そう、和式トイレでシテいる体勢である。
そのまま、魔法を使った。
木のカップはその場から消えた。
そして頭の中で『持ち物』と念じると木のカップが頭の中に浮かんだ。
それを選択して取り出すと念じると、木のカップがお尻から出てきた。
実験は成功した。
先程は諦めていると言ったが、やっぱりお尻から出てきたカップを見て、やりきれない思いに囚われた。
その後、気を取り直して、複数個の収納と取り出しが出来ることを確認した。
残念ながら自動まとめはされないようで、銅貨十枚をバラに入れると頭の中のリストに銅貨が十枚並んだ。
袋に入れて収納すれば銅貨十枚入りの袋となったので使い方としては理解した。
次に『影』の魔道具である。アタシの影魔法を目立たせないようにするには、『影』魔道具の復活が重要である。
誰にでもイメージがしやすくて、作成可能とすれば良いのだ。
亜空間とかゲームなんて説明が難しいことなんてしなければ良い。
同じ機能を持つ魔道具である必要も無いだろう。
答えは既に使われている物。
さっそく実験しようとしたが魔石が足りない。
カリンさんにお願いしてゴブリンの合成魔石を三個売ってもらい、雑貨屋で売っている小さな袋を二つ購入した。
力の文字は『影イ袋入ロ袋出影選択ロ袋影イ袋出生物不可』と『イ袋』と『ロ袋』の三つである。
『イロハニホヘト』を記号として使い。
メインの魔石の文章が長いからもしかしたらダメかなぁと心配したけど。
実験はあっさり成功したから良しとする。
要するに、転移魔道具の改良型である。
『イ』袋に入れた物を『ロ』袋に転移。
『ロ』袋の中の物の選択して『イ』袋に転移。
骨組みとすれば、それだけの事である。
元の影魔道具の図柄である
『影入亜空間影選択影出生物不可』
を踏襲しているから問題は少ないだろう。
と思っていたら別の疑問が浮かび上がった。
亜空間の『亜』や選択『択』は中学生で習う漢字である。
アタシの小学二年生以下説が崩れてしまった。
例え小学二年生以下であったとしても、中学生で勉強するはずの漢字を知っているのに『氷』を書けないことなんかある訳がない。
どちらかと言うと、どうでも良い話しであるが、何となく魔術の由来が見えたような気もしていた持論が崩れてしまい残念である。
その日の夜は解説用の書類作成をして過ごした。
アタシ的には、疲れている夜に書いた書類は朝に内容を見直す方が効率的だと思っているので。
一晩寝かせ、翌朝にミスが無いか確認してからカリンさんに見せることにした。
もしかしたら朝見直した時に不味いところが見付かって、見せるのを止める事になるかもしれないしね。
アタシは何時ものように蜘蛛糸警報装置の上で眠りについた。




