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魔術師の祖と『影』

その後五日程、ジェンターさん家に宿泊してしまった。


原因は当然カリンさん。

アタシの自筆文字であるが他の文字もレクチャーした。


とは言っても、カリンさんが元々知っていた文字だけである。

アタシの自筆文字なので効力は既存の二倍程度であるが、一つ以外に基本的には意味がないのが実情だ。


『水』二倍出る。少し大きな魔石と同能力。

水は必要な量だけ出れば良い。


『風』二倍強く吹く。元々の風がそよ風。

多少強くなったところで。


『光』二倍明るい。眩しすぎて照明に使えない。

目眩ましには使えるかも。



『火』二倍の威力。これだけは危険なので師匠として使用を禁止とした。



『土』二倍のサイズの石つぶてが出きた。それでも小石を拾って投げた方が効率的。



他の制御文字である『飛』『直』『進』『点』『消』『出』『止』は字体による違いはあまりよく分からなかった。


制御文字には効果が薄いようだが、カリンさんからすれば描画ミスによる失敗が無くなったので生産性は上がると喜んでいた。



そんな師弟関係が逆転することがあった。


『影』魔法の存在である。


光と影、対に考えれば『影』は光ある所に影がさす。と想像できるが、効果は違い。


影の中に物をしまえる様になるらしい。


便利そうな魔法だが伝承されずに存在だけが魔術師の中では知られていると言う。


伝承されなかった理由とはイメージが出来なかったことによると言う。


魔術師の祖と呼ばれる人物のみが作ることが出来たらしい。それは魔道具としてセントラル王国に残っているので実在している事は確実なのだが、以後誰も作成に成功していないらしい。


その魔道具は収納袋と言い、沢山の物をしまうことが出来ると言う。


魔術師の祖本人は魔法で自分の影に武器防具、道具、食料を収納していたので、現存している収納の魔道具はその仲間達に渡された物だけであった。


当時の王国でも、収納袋の有用性を理解して、再現を試みたが、魔術師の祖以外に作り出すことが出来なかった。


描画されている図柄は複雑だが分かっているし、読みも分かる。


だが当時の人々にはイメージが出来なかった。


資料として残されている書物には、こう書かれている。


『GEMUNNARADEKITEATARIMAEDA……』


原文を見せてもらったから脳内で変換すると。

一部伏せ字は大人の判断。


『ゲームなら出来て当たり前だのク○ッカーだ。慌てると駄目な○型ロボットのポケットと同じだ。真っ白の異次元空間に浮かべてリストで選んで取り出す。ゲームしたことないのか?漫画は?アニメは?何もないのか?僕はどうしていれば良い?魔王がいるのか?退治すれば帰れるかな?』



これでイメージは無理だろう。


ほんと何、この中途半端な会話文がイメージ資料だって。


アタシは、この資料を見て熱心に研究していたであろう過去の人達に対して申し訳なく思い頭を抱えた。



そんなアタシを見てカリンさんは『師匠でもイメージできませんか』と呟いている。


資料からイメージは出来ないけど、元の世界でのイメージがあるから再現は可能だろう。


そう言う意味なら、イメージの資料としては良く出来ているとも考えられる。


この魔術と言うか魔法は扱える人物を選ぶ。


今まで再現が出来なかったと言うことなら、魔術師の祖からアタシまで誰もこの世界に来た元の世界の人間は少なくとも、公的には居ないことになる。


魔術師の祖は仲間と力を合わせて魔王と呼ばれる存在を倒した時に、魔王と一緒に消えてしまったそうだ。



数百年前にこの世界に来て、各種魔道具を残した魔術師の祖の名前は『トビー』と言うらしい。



魔王と一緒に消えた時に、元の世界に帰れたなら良いなと思うマッキーであった。



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