通貨と違和感
「赤いのがウヌ・ステーロ、黄色いのがデク・ステーロ、銀色がツェント・ステーロだよ。金色の大きいのは…たぶんミル・ステーロかな。初めて見た。」
それぞれの硬貨を指しながら、カナデは硬貨を説明してくれる。
ステーロが通貨単位のようだ。ウヌやデクが数を表していそうな気がする。
「じゃあ次は、数を教えて」
律は赤銅色の小さな硬貨を2枚、3枚と次々に増やして並べた。
「いいよ!1《ウヌ》、2《ドゥ》、3《トゥリ》、4《クヴァール》、5《クヴィン》、6《セス》、7《セプ》、8《オク》、9《ナウ》、10《デク》、11《デク・ウヌ》、12《デク・ドゥ》…」
カナデが硬貨を使って一生懸命教えてくれる。
……なるほど。赤銅硬貨10枚分で黄銅硬貨1枚、黄銅硬貨10枚分で銀貨1枚と同等なのか。だとしたら、1番大きい金貨は銀貨10枚分だろうか。
とりあえず元の世界と同じ十進法のようでホッとした。
通貨単位も数字の名称も、一度説明されると簡単に頭に入っていく。
あまりに簡単に覚えられることに違和感を抱く。
まるで、聞いた内容を学ぶのではなく……
——“インストール”されているかのようだ。
「おねえちゃん?」
「あー…ごめんね。ちょっとボーッとしてたかも。」
カナデは、ハッと何かに気づき青ざめる。
「おねえちゃんもお腹減ってたよね?僕だけでお肉食べちゃった……」
カナデはごめんなさいと呟き泣きそうに項垂れた。耳が下がってシュンとした様子はとても可愛い。
「ふふっ、大丈夫だよ。でも確かに、お腹は空いたかな。」
金貨は靴の中や下着の中に分散させ、銀貨はズボンのポケットへ。他の細かい硬貨はまとめて金銭袋に片付ける。
「カナデはどう?もう少し食べられる?」
「え!?いいの?」
弾かれたように顔を上げた。目が期待でキラキラしている。
「もちろん。何を食べようか?」
カナデは嬉しそうに顔を綻ばせ、自分から手を繋いできた。
……何一つ疑わず、全幅の信頼を寄せてくるカナデ。律を気遣う出来すぎるほどの可愛さに、少しだけ戸惑う。
『手ぇ繋ぎたくないー!友達に見られたら恥ずかしいし…』
可愛いけど生意気、そして恥ずかしがり屋だった奏。
その幻影を振り切るように、律はカナデの手を引いて歩き出した。




