はじめての食事と、この世界のこと
遠くから肉を焼く香りがして、二人は誘われるように街の中心へと歩いた。
カナデはぐぅと鳴くお腹を、反対の手でおさえたままだ。
とりあえず、早く何か食べさせてあげよう。
中央の広場までたどり着くと、そこにはいくつかの屋台が並んでいた。
「何か食べたいものはある?」
少し屈んでカナデに目線を合わせ、律は優しく尋ねた。
顔を少し綻ばせ、カナデはキョロキョロと屋台を見回す。
そして、鶏肉を香ばしくローストしながら販売している一軒に目が釘付けとなった。
(奏もお肉が好きだったな)
「鶏だね。」
くすりと笑い、律は金銭の入った袋の中をカナデに見せる。
「私はあれがいくらかくらいかわからないんだけど、自分で買って来れそうかな?」
カナデは屋台の看板を確認し、金銭袋の中をのぞいて大きくうなずいた。
「うん、できる」
「そう、えらいね。じゃあ必要な分のお金を取り出してくれる?」
「うん」
カナデは銅色の硬貨を3つ取り出し、屋台へ駆けて行った。
金を渡し、ソワソワしているカナデに思わず口元が緩んだ。
奴隷として売られてはいたが——
値段を見て、迷わず硬貨を選べる。
文字も読めているのだろう。
(教育は受けている)
律は気づいたらこの世界に来ていて、ごく自然に言葉を理解し、話せている。
それがなぜなのかは、わからない。
——考えようとすると、思考が滑る。
そんな律にとって、カナデは得難い存在だ。
この世界のことを少しでも教えてもらい、今後の方針を立てよう。
肉の串を手に、嬉しそうに小走りで戻ってきたカナデを連れて、律は人目がつきにくい大木の木陰にカナデを座らせた。
「ゆっくり噛んで食べるんだよ?」
「うん!」
言うが早いか、お肉を口に頬張るカナデに苦笑しながら、律は金銭袋の硬貨を数えた。
焼けた肉の匂いにコクリと喉が鳴ったが、手持ちを確認する方が先だ。
硬貨を1種類ずつ地面に並べ、硬い肉と格闘しているカナデに尋ねる。
「食べながらでいいから、このお金のことをちょっと教えてね。」
(まずは、お金の仕様を確認しないと)
カナデは口いっぱいに肉を頬張ったまま、コクコクとうなずいた。




