売られる少年の記憶
その日、僕は捕まってから初めて外に出された。
もう何日も外に出ていないせいか……何だか初めて空というものを見たような気もした。
「オラ!さっさと入れ!!」
大柄な体躯に鞭を引っ提げた荒々しい男が、荷馬車から降ろされた僕たちを怒鳴りつける。
ジャラジャラと繋がれた鎖が重たい。
市場に並ぶ錆びた鉄格子の檻に乱暴に入れられ、大きな鍵をかけられる。
あ、そっか。僕は奴隷として売られたんだった。
…誰に?…どこで?
…あ、教会の司教様か。
…両親が…たぶん事故死して…孤児になった僕は…街でゴミを漁りながら暮らしていたんだった。
それで……えーっと……
そうそう、近くの教会のシスターがパンと水をくれて……いや、山リンゴだったかも…
それから教会に連れて行ってくれたんだった。
食べ物と飲み物をくれて…本……聖書…は貸してくれるだけだったかな。
僕の他に…6人…あれ?4人かも?…とにかく孤児がいて、僕は少し強かったからギルドに所属して薬草採取の仕事をしていた。
3年経った頃にシスターが倒れて、代わりに来た司教様が……誰かからお金を受け取っていた。
その後すぐに僕たちは捕まって、この市場に連れてこられた。
ここで誰かに買われるのを待つらしい。
……お腹減ったな。ごはんをくれる人だといいな。
空腹でキューっとなるお腹を抱きしめてしゃがみこむ。
ふと視線を感じ、顔を上げた。
「……カ…ナデ……」
(カナデ?)
不思議な格好をしたおねえちゃんが今にも泣きそうな顔で僕を見ていた。
「…おねえちゃん?」
どうしたんだろう。苦しそうで何だかかわいそう。
初めて見る人なのに懐かしい気がして、おねえちゃんから目が離せなかった。




