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鎖につながれた弟
目の前に、鎖で繋がれた獣人の男の子がいた。
狐のような耳と尾が泥で汚れている。
不意にこちらを見たその子の顔に、私は言葉を失った。
懐かしくて愛しくて、会いたいと何度も願ったあの子の顔。
『いいか、律!!チュートリアル前に死ぬんだ!!じゃないと帰れなくなる!!いいか!!絶対に戻ってこい!!!!』
ふと、危険を承知しながらも私に忠告をしてくれた叔父の声を思い出す。
絶叫にも似た声が頭にこだまし警笛を鳴らす。
背中に冷たい汗が流れ、呼吸が乱れる。
見てはいけない。早くここから去らなければ…
理性はそう訴えているのに、足は地面に縫いついたように動かない。
私はもう帰れないかもしれない。
きっとこの子から離れられない。
5年前の事故で両親と共に失った、最愛の弟と同じ顔を見た瞬間…
『おねーちゃん』
——あの子の声が聞こえた気がした。




