狐を探して
美しい木々の間を抜けて、街への坂を下りていく。丘に咲く色とりどりの花はカラフルなのに、やけに統一感があった。
(みんな、色がドミナントトーン…)
鹿やウサギ、野ネズミなどの動物に遭遇するが、警戒心や野生味もなく、どこか可愛らしい。
手を伸ばせば、寄って来て触らせてくれそうだ。
(NPCが動物の可能性もあるから、気をつけよう)
触りたい気持ちをグッと堪え、律は街を目指して歩いた。
しばらく歩くと視界が開け、アーチ型の門と低めの塀に囲まれた街が現れた。
門番には特に止められることもなく、すんなり街へ入ることができた。
パステルカラーの街が、中世ヨーロッパを思わせる。
街に入ると、そこには様々な獣人がいた。
ウサギ、猫、羊、猿などの特徴を持つ人々。
服を着た二足歩行の動物に近い人もいれば、ほぼ人間で長いしっぽだけを揺らしている人もいる。
(狐、いないかなぁ。)
*****
律は狐が好きだ。
きっかけは、尊。
律は小さい頃、尊がとても怖かった。
必要なことしか話さず、律とも最低限しか関わってこない叔父。
そんなある日。
蒼と尊の背格好がそっくりなのが災いし、律は父だと思い込んで尊の膝に座った。
そして後ろを振り返ることなく、絵本を広げてこう言った。
「これよんでね」
「………ある森の中、狐のアルフィンが——」
少しの戸惑いの後、律に落ちてきた声は思ったよりずっと優しくて。
律は間違いに気付いたが顔を上げることができないまま、気づけば最後まで聞き入っていた。
その日、狐の絵本が律の宝物になった。
*****
(……狐を見れたら、帰ろう。)
広場まで行って見つからなければ、諦める。
律は自分の中でリミットを作り、街の中心部に向かって歩き出した。
そして、ちらほらと商品を売る屋台やテントが並ぶエリアにさしかかった頃——
檻の中でうずくまる“カナデ”に
出会ってしまった。
——チュートリアル——
その言葉の意味を理解した時には
もう、遅かった。
アルフィン : Alpha (始点) + Fin (終点)
律と尊の関係の始点であり、
AIが「ついに捕まえた(終わりの始まり)」という意図を込めてます。




