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中身はナニワの男子ですけど、婚約破棄されたので北国の氷を全部「金」に変えてやりますわ! 〜絶世の美女、商売魂で極寒の地を制す〜  作者: 星島新吾
Around the World in Ice 編

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南国フルーツパラダイス───ナニワの令嬢はエルフの果実を求めるようです

「───ふーん。……材料が安っぽい以外は素晴らしい味だと思いんす」


ニマーヌ様は悪気ない無邪気な笑顔で、私の商品を安物と罵った。


「……さようでございますか。材料はエルフの者から買い揃えた果物を使ったんですが……」


「ほう、エルフ。では妾と同郷のものではなさそうでありんすね」


エルフはエルフやろ───そう言おうとしたところを、彼女の一瞥が制した。


再び視線をフラッペに戻されたニマーヌ様は、フルーツがふんだんに入った高級フラッペをペロリと平らげ、汗ばむ頬の汗を御付きの者に拭わせる。


何か遺恨があるらしい───私はそう判断した。


「それは一体どういう……」


「交易したってなぁ海辺の者でありんしょう。軽々しゅう外部の人間を招くのは、あの者達ぐらいでありんす。悪いことは言いんせん、あのような場所にすむ者達とは話さねえ方がよろしゅうござりんすよ」


ニマーヌ様の口ぶりは、もはや海辺に住むエルフを同族とみなしていない。その証に、彼女の口から、決して海辺のエルフを『エルフ』という呼ぶことはなかった。


「ニマーヌ様の生家は内陸の方でございましたか」


「そうでありんすよ。エルフという種族は深い森の奥、日の当たらぬ静かな森の揺り籠の中でしか生まれんせん。ここよりもずっと、冷たく……静かな場所でありんす」


「私も寒い場所から着ましたが、森の中はまた違った冷たさがあるんでしょうね。そこで育った食べ物もやはり、格別な味がするんでございましょうか」


「比べることすらおこがましいとは、まさにこのこと。妾にこの料理を出すなら、せめてその森から獲れた果実が好ましゅうござりんすね」


「畏まりました。なんとか交渉できへんか、足を運んでみることにいたします」


それから王宮との氷と木材の取引については難航を極めた。なんたって相手は、合理的で老獪なキャスパリーグ王じゃない。気まぐれで、感情を重視するニマーヌ様や。どんなに交渉をしても、嫌いだったら取引せえへんし、好きやったらどんな内容でも交渉してくれる。


そして───これ以上の交渉は、もっと彼女に深く踏み込まへんと難しそうやと思った。こればっかりは時間かけてゆっくりやる必要があるやろうけど、まずはニマーヌ様に有能な女と認めてもらうところから始めんと難しそうや。


さてどこから攻めて行くか……。


「そういえば。果実を探しに行くのであれば、一つ教えておいてあげんしょう。この南の大地(メリディオ)には数多うのエルフが散り散りに住んでやす。集落によって特産となる果実も違いんすから。一カ所で買い集めると痛み目を見んすえ」


なんやその面倒な種族は。他にも色んな種類の獣人も住んでんのに、ぐちゃぐちゃ過ぎるやろ。どうやってキャスパリーグ王は統治しとるんや。


「……畏まりました」


「そうでありんす。妾の所有する果実のいくつかを、幾つか蔵から出しんしょう。物が分からねば、目利きもできんでありんしょう?お友達のよしみで、それぐらいしんしょう」


「あ……ありがとうございます」


ニマーヌ様が目配せすると、控えていたエルフの侍女が、冷気が立ち込める小さな木箱を恭しく捧げ持ってきた。蓋が開けられると、客間の中に凛として清涼な香りが広がる。


「……っ、凄い……宝石みたいや」


箱の中に並んでいたのは、氷のように透き通った青いベリー。一粒手に取ると、指先から僅かに冷気が伝わってくる。


「『銀楼果(ぎんろうか)』……深い森の、さらにその深淵。月明かりと朝露だけで育つ、エルフの馳走でありんす。……どうぞ、召し上がって」


私は促されるまま、その一粒を口に放り込んだ。途端に脳内に流れる新世界───柔らかな上品な甘みと、溢れる果汁。森の超軟水が作り出した神秘か、個体があるのに飲めてしまう。


(確かに、これに比べたら私のフラッペに使われたフルーツはゴミや……。まさか南の大地(メリディオ)がこんな果実の宝庫とは知らんかった……)


喉を通る瞬間に「冷たさの余韻」が長く残る。この味を知ってる田舎のエルフ相手には、安物のフルーツと氷をシェイクしたモノを出しても、見向きもされへんやろうな───素材の味が田舎と都会で違い過ぎるわ。


「ニマーヌ様……おおきに。目利き、勉強させてもらいましたわ」


私は深々と頭を下げ、最大の感謝を込め微笑んだ。氷と木材の取引を前に、彼女の信用を勝ち取る。


そのためにはこの果実や。果実の安定供給とフラッペ化。それさえできれば、私のここでの任務は上手くいく。───フロストもこれから忙しくなるやろうし、少しでも南国から朗報を届けて上げへんとな。





離宮を出ると、そこには柱に寄りかかって眠りコケている褐色エルフの少年、ヴィーダルが待っとった。デコピンしたら、慌てて首を振って周囲を警戒し始めた。


「曲者⁉」


「馬鹿タレ。私や」


寝ボケたヴィーダルは私の顔を見上げて正気に戻ったんか、膝をついて頭を垂れた。


「あ、姉様……! それにミヤハ様も……! お疲れ様でございます。その様子だと、上手く交渉はお済になったご様子! えげつない笑顔なのですぐに分かりました!」


生意気言うヴィーダル坊の頭をグリグリと、ゲンコツで締めあげる。生意気を言うのはこの頭かと。抜けてボケた頭のネジを念入りに締め直した。


「失礼な。商売人の笑顔を『えげつない』とは何事や。それと交渉はまだ進んでへん。……それよりヴィーダル、アンタに聞きたいことがある」


私は胸の下で苦しむヴィーダルに、ニマーヌ様から聞いた「エルフの集落」の話をぶつけた。するとヴィーダルの端正な顔が、一瞬で苦いものに変わった。


「……女王の言う通りです。僕ら海辺の民は、外の連中と交わる『汚れた一族(ダークエルフ)』。内陸の森に住む連中(エルフ)からすれば、身分が違います」


「身分、か。……まぁどこも似たようなもんやな」


私が笑うと、ヴィーダルも合わせて諦念の笑みを浮かべた。


「僕らも昔は内陸に住んでいたらしいのですが、キャスパリーグ王の治世に変わってからは、彼の味方をしたエルフに内陸の土地は支配されてしまい、沈黙を貫いていた僕らは、海辺に追いやられてしまいました」


「なるほど───功労者かそうでないかで、未来が変わったちゅーことか。しかも結構最近のことっぽいな?」


「仰る通り、ここ五年の話です」


五年前というと、私が13歳の時か。


「うん、結構前やな……。けどつまりは、『物流の断絶』があるっちゅーことやな?」


「物流どころか交流がないのが現状でして……」


「……誰も交易できへん相手か───金の匂いがプンプンするわ」


「姉上? どうなさるおつもりで?」


「そんなもん、エルフの弱いところを攻めるに決まっとるやろ」


「エルフの弱いところ? ……それは一体どこなんですか?」


「知らん。私に聞くな。アンタの方がよう知ってるやろ」


「え、えぇ~……!」




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ブックマークして、次のお話も読んで下さい(強欲)!

それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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