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中身はナニワの男子ですけど、婚約破棄されたので北国の氷を全部「金」に変えてやりますわ! 〜絶世の美女、商売魂で極寒の地を制す〜  作者: 星島新吾
アイス・イン・ワンダーランド後編

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火薬なき連射クロスボウ ――ナニワの令嬢はこちらの技術に関心があるようです

プーーーッ!! と、私は砂浜でラッパを吹き鳴らし、水着姿で仁王立ちしとった。


「はい全員注目! スプリング・ブルワリーに負けとるで! このままじゃテッペン獲られっぱなしや! 死ぬ気でハンドル回さんかい!!」


 私はチラリと、視界の端にある特別展望台を盗み見た。

 豪華なテントの下、ジョン王子が私の「焦り」を見て、これ以上ないほど下品に、愉快そうに笑っとる。


(ケケケッ、今はせいぜい笑っとき。あんたが喜べば喜ぶほど、国庫からルカの兄ちゃんに銭が流れる。それがそのまま、うちらの『合併祝い金』になるんやからな……!)


 私は心の中で舌を出し、さらに大袈裟にラッパを吹き鳴らした。


「元気一杯だな、サーシャ。でも、そんなに声を張り上げてると喉を傷めるんじゃないか?」


飲み物を持って来たのは、なんとフロスト。一国の公爵様に給仕させるなんて恐れ多いことこの上ないから、せめてもの感謝として立ち上がり、両手で受け取った。


「ちょ……えっ、あ、ありがとうございます。……しっかり寝れたん?」


フロストは深夜、ほぼ毎日氷の運送をしてくれた。

 貨物列車を自ら運転したり、ロックが休みの日はリーダー代行として洞窟前で指揮を執ったりと、組織の穴を埋める千両役者の働きをしてくれとる。


昼間(いま)は寝ててもおかしくない時間やのに、わざわざ砂浜に来たってことは、相当早くに起きたっちゅーことや。


「一週間経って作業にも慣れてきたのか、荷運びが早く終わるようになってね。いつもより早く仕事を上がれたんだ」


「それならもうちょっと別荘でゆっくり体を休めててもええんやで?」


「おかげさまでのんびりさせてもらっているさ。部下たちも、ほら向こうで」


フロストが指し示す海の方角を見れば、(モリ)で魚を突いている私兵団の姿があった。彼らを目で追うと、どこから持ってきたんかバーベキューセットの上に、魚が(うろこ)付きのまま豪快に乗せとる。


「あれ……そのまま食べるんか?」


「まさか。レモンを持ってきてるさ」


フロストは若干天然なことを言いながら、海の家に向き直った。

ノヴァーリス商会は今日も大繫盛。今日入れて残り二日もこの調子で売り上げをガンガン伸ばしていけるやろう。


「スプリングフェスもあと二日か。ここにいられるのも、あともう少しなんだな」


フロストはまだ終わってもないのに、しみじみしとる。


「別にまだおったらええやん。別荘あるし」


「サーシャは戻るつもりなんだろ?」


「私? 私は……ふぅん……フロストになら話してもええか」


私は今後の予定をフロストに話した。ここで手に入れた資産を使って、次に何を行うのか。食事の席で断片的に話すことはあっても、具体的な戦略まで話すのは初めてやった。


「そうか。この熱気で忘れそうになるけど、夏はこれからなのか」


「今は春やからな。夏は東の地域(オリエント)南の地域(メリディオ)、二つの地域を往来する」


「それはやっぱお兄さんがオリエントにいるって分かったからか?」


行方不明やったのに、突然使者送って来よったからなあの人。

その使者も獣人やし……ビックリしたわ。


「それもある。……けど、一番は向こうの友達が、そろそろ顔見せに来いって手紙でうるさいからやな。……そこで正式に同盟を結んで、フロストを『大公』にする」


「……聞いてないな」


「今言ったからな。しゃあなしや。いつまでも公爵に甘んじる気もないやろ?」


「全然甘んじる気だったけど……」


「あん?」


「いや……何でもない。あっ、それなら俺は正面切ってミズガルズ王国に宣戦布告できるのか。それは……ふふっ、楽しみだなぁ」


ニヤリと口角を吊り上げるフロスト。結局こいつの頭の中には戦争しかないらしい。部下には「故郷へ帰れ」とメンタルケアを欠かさへん男が、自分はこれや。度し難い男やで、ホンマに。


 鉄砲の時代が来たら、アンタみたい狂戦士(バーサーカー)が一番初めに狙われそうやわ。……そういえば、まだこの世界では発明されてへんな。蒸気機関があるなら、明らかにもう開発されてても変やないのに。


「どうしたんだ?」


「フロストは“火薬”って聞いたことある?」


「いやないな。薬なのか?」


「ううん。───ところで、戦場で弓以外に遠距離攻撃できる武器とかってあるん?」


「サーシャが武器の話なんて珍しいな。もちろんあるぞ、“クロスボウ”って武器がある。引き金を引いて、ボルトを打ち出すんだ。最近じゃ改良もされて連射できるヤツもあるんだぞ……って、あんまりこういう話は興味ないか」


「クロスボウを連射……?」


フロストの言葉に引っ掛かった。クロスボウは知っとるが、普通は一発ずつ装填して撃つもんや。連射できるってことは、マガジン(弾倉)機構がすでに実用化されとるってことか。


「……火薬はないのに、マガジン式の連射クロスボウはあるんか。なるほど……」


 私は、喉を鳴らして冷たい水を飲み込んだ。蒸気機関は発展しているのに、銃がない。

 やっぱりこの世界の職人が持つ「ネジと歯車」の技術は、私の知る歴史よりも(いびつ)で、それでいて高度に発達しとるらしい。


「……時代に置いていかれんようにせんとあかんな」


「どういうことだ?」


「別に。───連射式クロスボウばっかりなら、鉄の消費が激しくなるなーって思っただけ」


「ハハッ、その通り。ウチの領地が強いのも鉄がたくさんとれるからだ。相手は鉄不足で、剣かクロスボウの弾か選ぶことになる。うちはその心配はない。バンバン連射するからな。だから負けない」


「あぁ……そゆこと」


圧倒的な装備差と練度で叩き潰す、それがヨトゥンヘイム流のやり方らしい。

その後、フロストはとても楽しそうに、日が暮れるまで自軍の最強っぷりを詳細に語り倒してくれた。私は相槌を打つだけで半分も聞いてへんかったけど、彼が今までにないくらい幸せそうな顔をしてたから、まあよしとしよう。


 ───明日はいよいよ最終日。

 長いようで短かった二週間の戦いも終わる。

 何があっても悔いのないように、今日の内にやれることは全部済ませておこか。






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それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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